ICT産業振興のために何が必要か?

ICT4Dに関するWorldbankのブログに、興味深いトピックがあった。「The Global Opportunity in IT-Based Services」という本をInfoDevとworldbankがリリースしたという内容。この本では、国の経済発展のためにICT産業を振興させるにはどうしたら良いかということがテーマになっている。具体的には、途上国におけるICT産業振興の重要な条件を、いくつかの指標としてまとめることで、先進国からのIT企業を誘致したり、IT企業のデータセンターやコールセンターを自国に設立するために、途上国政府が、何をしなくてはいけないのかがわかるようになっている。

まず最初に、ICT産業を振興させるメリットが簡単に説明されていた。

  1. ICT産業は女性に高収入の職を提供する
  2. 新しい産業ということで、既存のしがらみが少ないICT業界では、規制緩和や改革を実施し易く、それが他産業界にも好影響を波及させる
  3. 貧しいという国のイメージを改善、払拭することが出来る

ICT4Dの話になると、「医療や水の方がICTより重要なのに何故ICTに投資する必要があるのか?」という疑問が良くあるが、教育にICTを利用するとか、電子政府などに比べると、「ICT産業そのものの発展」については、上記のようにクリアなメリットがある。特に、3の点が個人的にはとても納得できた。というのも、「インド人=ITに強い」というイメージはまさにインドがICT産業振興により生み出したインドに対するポジティブなイメージだと実感出来るから。以前、同じシェアハウスでインド人と英国人と一つ屋根の下に暮らしていたが、英国人はPCの調子が悪くなるとすぐインド人に質問していた。そのインド人曰く、「俺はハードウェアのエンジニアじゃないんだけど、あの英国人のおっさん、何かにつけて俺を頼りにしてきてまいるぜ・・・」的なことをよくぼやいていた。この、インド人は頭が良くてITに強いというイメージは、本当に凄い浸透していると思うし、そのイメージが、まちがいなく、他の産業(工業や貿易など)のインド人ビジネスマンにとってもポジティブに働いているはずだろう。イメージ、馬鹿に出来ないなぁ。
ちなみに、上記3点以外にも、ICT産業に従事する高収入層が増えると、それに付随して他の業界(飲食、服飾、建設など)でも仕事が増えるという効果も。インドやフィリピンではICT産業のワーカーは収入が他産業に比べて1.5~2倍であり、ICT産業で一人分の職が発生すると、他産業で2~3人分の職も発生するとか。

そして次に、インドが成功したようにICT産業が牽引する開発を実施するためにはどういうことが重要なのかが説明されており、主に次の3点があげられている。

  1. ITスキルを持った人材(質&量の確保)
  2. コスト面の強み(人件費の安さ、免税など政府の便宜など)
  3. インフラ(安定した電力供給、複数の国際電話回線、その他暮らしの面のでのインフラも含む)

この条件を見ていくと、3のインフラには、様々なものが含まれている。電力や通信網、国際便のアクセスやビジネスや不動産に関する法律の整備(著作権なども)の仕事に関係するものから、医療面、安全面、衛生面といった生活に関連することも。これらの条件を読んでいると、そもそもこういうインフラが整っていないのが途上国であり、それを開発したいからICT産業復興による経済発展を狙っているんだろうと、「ニワトリが先か、卵が先か?」的な思いが頭をよぎる。おとしどころとしては、インドやフィリピンなどが実践してきたようにそこだけはインフラが整っているITパークみたいな施設を設けることで、先進国のIT企業を誘致するというプランか。

この本によれば、世界規模でのICT産業は5000億USDの市場であると見込まれている。そして今のところ、その約7割は手付かずの状態。この有望な市場にどこまで途上国が入り込めるのか?第二、第三のインドのような国が出てくることを期待したい。

ニュースレターはじめました。テクノロジーと国際開発(ICT4D)に関する新規ブログ記事・海外ニュース・イベント情報などを月1〜2回発信しています。以下フォームからご参加ください。詳細はこちら

フォローする
Uncategorizedビジネス
ICT for Development .JP

コメント

タイトルとURLをコピーしました