オープンエデュケーションの可能性

先日読んだ、梅田望夫氏の「ウェブで学ぶ」に書いてあったオープンエデュケーションと同じような内容が11月22日の朝日新聞別冊GLOBEに載っていたので取り上げてみる。

オープンエデュケーションとは、世界のどこにいてもインターネットで学ぶことができるというコンセプトの教育である。

先駆けとしては、MITが2001年になんと2000もの講義教材をウェブサイト上で無料配布すると発表したことに遡る。その流れは着実に広がっていて、現在無料で視聴可能な講義は世界中で1万を超えるそうである。

それらの活用方法については、大学の「宣伝」として体験レッスンのようなイメージで配布している大学もあれば、それを見てレポートを提出することで単位として認める大学も出てきているとのこと。

ということは、システム的には途上国の貧困層がブロードバンドさえあれば、留学をしなくても大学を格安で卒業できるということになり、可能性はとても大きい。特に小さな島国などで大学進学=留学という国の裕福ではない学生などにとっては本当に大きい教育革命である。

という話を読んで、どうもしっくりこない自分がいる。本当にそれで大学の求めるもの、その先にある企業が求めるものが身につくのかということである。

自分の経験で言うと、私自身の集中力散漫な性格もあり、ビデオ講義の類というのはどうも集中できないことが多く、期待していたほどの成果は得られた試しがない。特に大学の講義ともなると90分くらいはあると思うので、より難しい(まぁこれは私だけの問題かもしれないが)。

そして欧米の大学では大量の予習などを必要とすると聞く中で、刺激しあう学生仲間もいない状況の遠隔地での生徒がそこまでのモチベーション・努力を保てるのか、、といった疑問もある。そして人と接することによって学ぶコミュニケーション力などが学べないことも大きい。

もちろん教育を受けたくても受けられない、努力を惜しまない層がいるのも事実とは思うが、ただ授業を公開しただけで、それが大学教育を受けることととイコールとなるのか、 なんともしっくりこない自分がいる。

とはいえ、大きな教育革命とは思うので、この流れは歓迎し、よりみなにとってメリットのある仕組みになっていって欲しいと思う。決して古くなった教材を公開し、「うちはオープンエデュケーションやってますよ」といった宣伝材料にしかならない流れにはならないことを祈るのみである。

ニュースレターはじめました。テクノロジーと国際開発(ICT4D)に関する新規ブログ記事・海外ニュース・イベント情報などを月1〜2回発信しています。以下フォームからご参加ください。詳細はこちら

Kanot
フォローする
Uncategorized
ICT for Development .JP

コメント

  1. […] This post was mentioned on Twitter by tomohiro, Tsuyoshi Kano 狩野 剛. Tsuyoshi Kano 狩野 剛 said: ブログ更新しました。 オープンエデュケーションの可能性: http://t.co/euWqblF […]

  2. tomonarit より:

    やっぱり、対面での授業の方が良いに決まってますよね。
    でも、先進国の授業を見て、途上国の先生や先生の卵が、各自の授業方法やスタイルを向上させたり、教材を利用したりするような、そんなインパクトには期待したいです。遠隔教育は生徒に直接というよりも、先生のレベルアップに使われる方が、より有益なメリットが得られるんじゃないかと思います。

  3. HEY-HO より:

    はじめまして。大学院で社会情報学を専攻している大学院生です。
    「国際協力」「情報学」といった軸で将来の進路を模索している過程でこのBLOGに巡り会い、それ以来拝見させて頂いております。

    情報教育や遠隔教育は専門ではないのですが、以前手に取った書物がe-learningに対して批判的分析をしてたなぁと思いだしたので、コメントを書き込ませて頂いた次第です。

    Hubert L. Dreyfus 著,石原孝二 訳『インターネット-哲学的考察-』(2002年)

    丁寧な紹介が他BLOGさんにあったので、具体的な内容は自分が説明するよりも、こちらをご覧になるといいと思います。

    雑記帳[Book Report]インターネットについて – 哲学的考察
    http://d.hatena.ne.jp/ced/20080128/1201490309
    (第二章「遠隔学習は教育からどれくらい遠いか?」の部分ですね)

    大学のような高等教育機関は、一方的に知識を提供するだけではなくて、例えば″学び方″″研究の仕方″といった点に関しても、教員や先輩から学習できる場だと思ってます。そういう広義的な「知」や教育機関という場の持つ利点をどうやって提供していくのかということも、遠隔地教育に課せられる課題ではないかなと感じますね。

  4. […] 前回のKanotの投稿が遠隔教育でしたが、今回も遠隔教育についてです。「国際開発ジャーナル」って雑誌に、バングラデシュの田舎で遠隔教育を実施しているグラミングループのプロジェクトが紹介(タイトル:「“インターネット”ד遠隔地”=教育イノベーション」)されていました。 […]

  5. Kanot Kanot より:

    返信遅くなりました。

    >tomonaritさん
    そうですね。教え方を学ぶという使い道もありますね。でもやはりe-learningが対面型を凌駕するかというと、やはり否ですよね。
    ちょっと一度MITのやつでも見てみようかなと思います。

    >HEY-YOさん
    面白そうですね。e-learningの未来を書いた本は多いですが、批判的に書いてわざわざ書籍化する人は少ない気がします(笑)。
    情報ありがとうございます。

タイトルとURLをコピーしました