エジプトーSNS革命とシスコによる投資

ここ最近、エジプトとSNS関係のニュースやら記事やらを複数目にした。具体的には、伊藤洋一のRound Up World Now!(4/29放送分)、山本達也「政府のコントロールを超えたSNS」(THE ARAB, p14-15.)、Rising Africa「シスコ、エジプトに1000万ドルの投資へ」の3つ。以下、面白いと感じた点を書いてみる。

まずはSNSがもたらす情報波及度を示す数値から。

以下が「Facebookで20分毎に起きていること」といわれている。

  • 写真へのコメント:130万件
  • イベント招待の送付件数:150万件
  • ウォールへの投稿:160万件
  • ステータスアップデート:180万件
  • フレンドリクエストの承認件数: 197万件
  • 写真のアップロード:270万件
  • コメント:1020万件
  • メッセージ:460万件

そして、ツイッターの情報波及効果を示す例として以下のことが言われている。

100人にフォローされている人が何かつぶやくとき、それぞれのフォロワーが同様に100人にフォローされていると仮定した場合、それぞれがリツイートしたら、あっという間に1万人に情報が伝達されることになる(100×100=10000)。そこから更に、それぞれが100人にフォローされていたら100万人に情報伝達されることに(100×100×100=1000000)。いわゆる「バイラル(ウイルスのような)効果」と呼ばれている効果だ。

このような、人々のつながりを作り、圧倒的な情報波及効果を持つSNSがチュニジア革命を起こし、エジプトでのデモを引き起こした。

ネットを利用した革命というと、これまではサパティスタ民族解放軍が取り上げられることが多かった。1990年代に発足したサパティスタ民族解放軍はネット通じて情報発信をすることで支援を受けている点が特徴的。今回のチュニジア、エジプトもサパティスタ民族解放軍もどちらもインターネットを利用している点では同じだが、今回のチュニジアやエジプトでは、SNSでの「つながること」が重要だったのに対して、サパティスタでは従前のインターネット利用方法である「情報を発信すること」がポイントであったというように、インターネットの主な使われ方における今昔の変化が反映されているように感じる。

また、Rising Africaにシスコがエジプトにベンチャーキャピタルで1000万ドル投資するというニュースがあった。ふと、今回のエジプトでの一連の騒動が、エジプトのIT普及率やユーザのITリテラシーなどが十分投資するに値するという判断に繋がったのか?と短絡的ながら感じた。政府にとっては痛い騒動だけれども、一方で、諸外国や外資企業に対して、「IT先進国」であることがアピール出来る材料にもなったのかもしれない。もしやチュニジアへの欧米IT企業の投資が拡大するなんてこともありか?

一方、今回のエジプトで暴動鎮圧のためにSNSサイトがアクセス制限されたように、政府によってアクセスそのものが制限されるということは十分考えられる。自分がいたエチオピアでも2005年の選挙時に携帯SMSが利用不可となったことがあった。この点は、欧米IT企業が投資する際の大きなリスクだ。でも、山本氏は、情報のコントロールは出来ていたアラブ諸国でも、SNSの楽しさを知った国民を敵に回してまでアクセス制限することは困難であり、結局、「不都合な情報」はコントロールできても、「つながる」ためのインターネット利用はコントロール出来ていないといっている(山本達也「政府のコントロールを超えたSNS」より)。さらに、SNSが日常の経済活動になくてはならない存在にまでなれば、自国の経済活動を妨げることになるので、政府も簡単にはアクセス制限が出来なくなるだろう。今回のエジプトの騒動から、シスコは「政府によるコントローはそう易々とは起こらない」と睨んでいるのかだろうか。

伊藤氏がコメントで、SNSは既存の体制を破壊するには強烈な威力を発揮するが、新しいものを創り出すには向かないツールなのでは?といったことを言っていた。確かに、ツブヤキで不満を煽り、弱いネットワークで繋がった多くの人が賛同すれば、革命を起こすくらいの大きな現象が起きる(創発(emergence)と呼ばれる現象)。破壊の方が創造よりも簡単なのは良くわかるが、一方で、FOSSのことを考えると、何も破壊だけでなく、創造も弱いネットワークで繋がった多くの人により行われていることがわかる。IT企業による投資が破壊よりも創造に大きく貢献してくれることを願いたい。

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