新しい価値観を伝えること

ビジネス
Vianney

IMG_6565

10月上旬から神戸情報大学院大学(KIC:Kobe Institute of Computing)にて、客員講師という立場でICT4Dについての授業を持たせてもらった。昨日、最後の授業を終え、秋学期が終了。毎週日帰りで神戸まで行くのは正直結構キツかったものの、すごい良い経験をさせてもらえ、今回の機会を与えてくれたKICと、週1回職場を不在にすることを承認してくれた職場の上司に感謝、感謝です。

授業内容では、主に自分がマンチェスター大学のICT4D修士コースで学んだこと(Richard Heeks教授のフレームワークなど)を中心に、JICAでの経験(日本のODAにおけるICT分野の事例など)や、エチオピアでの経験、仕事やこのブログを通じて知り合えた諸先輩から教えて貰ったことなどを、アフガニスタンとルワンダからの留学+日本人学生に伝えてきた。

90分×15コマの1コースに、伝えたいことを盛り込んだので、ほぼ毎回時間をオーバーしてしまい学生さんたちにはご迷惑をかけてしまったかなと思う。不満を言わずに付き合ってくれた学生の皆さんにも感謝です。

そして昨日の最後の授業では学生から最終課題に関するプレゼンをしてもらった。ケニアのM-PESA、アフガニスタンのM-Paisa(Paisaっていうのはアフガニスタンの言葉で「お金」という意味。PESAがスワヒリ語の「お金」なので、同じ理屈のネーミング)、OLPC、e-Government、防災警報システム、といったテーマについて、各自が調べた内容を発表してくれた(上の写真)。

また、スペシャルゲストとしてJICA国際協力専門員、ICT系開発コンサルタント、民間ICT企業の方々などにもご参加いただき、有意義なコメントを頂くことが出来た。ゲストの皆さん、どうもありがとうございました!そして、ゲストの方々にもプレゼンをしてもらったのだが、とりわけ東大の青木さんによるFabLab活動のプレゼンは先進的でとても興味深いものだった(下の写真)。

IMG_6567

学生とゲストのプレゼン&それに関する議論を通じて、「価値観をどう伝えるか(理解してもらうか)」というのが、ICT4D、途上国ビジネス一般にいえる共通課題であると感じた。
アフガニスタンのM-Paisaのプレゼンからは、(アフガニスタンという国の背景もあり)国民のなかにはモバイルバンキングという仕組み自体を信用しない層が少なからず存在するといった課題(=つまりモバイルバンキングという見えない送金の仕組みを理解・信頼してもらうことが出来るか?)や、OLPCのプレゼンからは、Windows製品 vs OSS(オープンソース・ソフトウェア)という議論(=先進国よりもWindows製品が市場を圧巻している途上国でOSSを採用することの是非など)が盛り上がった。また、FabLabについては、このムーブメントが発展しているのは、モノづくりの新しい価値観が先進国・途上国を問わず広く受け入られているからだと感じる。

また、ちょっと前に知人を通じて、See-Dコンテストのメンターをやりませんか?とお声がけいただき、メンバーなるものをやらせてもらった。See-Dコンテストは、日本の技術力と途上国のニーズをつなげ、途上国が抱える課題を解決する製品をより多く生み出すことを目的としたプロダクト&ビジネスコンテスト。以前、このブログで紹介した東ティモールでの格安運送サービス「TranSMS」もSee-Dコンテストから生まれている。そこで色々なチームのビジネスプランを聞かせてもらう機会を得ることができた。担当したチームの方々にどこまで自分が貢献できたかは正直あまり自信がないものの、この経験でも非常に多くを学ばせてもらった。

色々なビジネスアイデアを聞いていると、共通している課題は、やはり「新しい価値観をどう理解してもらうのか」という点。これまでなかったサービスを受入れてもらう(お金を払ってもらう)には、それが必要である。KICの授業でJICAバングラデシュ事務所のKanot(このブログの管理人の一人)に、バングラデシュでJICAが支援したバスカード導入プロジェクトについて紹介してもらった。そのときも、これまで現金でしか運賃を払ったことがない人達(乗客も運転手側も)に、どうやってスイカとかパスモみたいなカード利用のメリットを理解し受入れてもらうかが一つの課題であったという話になった。他の途上国開発プロジェクトを例にすれば、これまで手洗いの習慣がなかった人達に、公衆衛生について理解してもらうとか、蚊帳を使うことがなかった人達に蚊帳の効果・価値を理解してもらうとか。もっと別の例を挙げると、コーラって見た目おいしそうに見えないのに、あれをここまでポピュラーなドリンクにしたコカコーラ社とペプシ社はすごいと思う。飲めば美味しいのはわかるけど、あの黒い液体は、コーラを全く知らない人から見たら、飲みたい意欲はわかないんじゃないだろうか。

ここ最近の経験を通じて、この「価値観をどう理解してもらうのか?」って点に非常に興味が出てきた。特に新しいサービスを提供するICT4Dの分野では、この重要性は高いと感じる。さて、自分がKICで教えた講義では、学生の皆さんにちょっとでも新しい価値観を提供出来ただろうか。今まで知らなかったモノの見方や考え方を少しでも伝えることが出来ていたら良いけど、どうだったかな。

ニュースレターはじめました。テクノロジーと国際開発(ICT4D)に関する新規ブログ記事・海外ニュース・イベント情報などを月1〜2回発信しています。以下フォームからご参加ください。詳細はこちら

フォローする
ビジネス教育・人間開発
ICT for Development .JP

コメント

  1. […] 先日、ガーナのFablabで活躍されている青木翔平さんとお会いしました。色々と面白い話を聞かせてもらったのですが、結構インパクトがあったのがこのリュックサック。 […]

タイトルとURLをコピーしました