以前、このブログでも紹介した世銀のICT4EducationのBlogで、携帯とPCのどっちが途上国の教育改善に役立つツールなのかについて議論が行われている。
Robert B. Kozma氏の投稿「Phones Need to Converge into Computers(携帯電話はコンピュータっぽくなるべし)」で、同感出来る意見があったのでご紹介。
Kozma氏曰く、携帯が教育改善に使われるためには、現在の機能に加えて以下のような機能が必要といっている。
- 1対多で通信する機能・・・教師が沢山の生徒へ向けて情報発信したり、複数の生徒同士で情報交換出来るようになる
- マルチメディアコンテンツを扱う機能・・・ビデオ、音楽、グラフィック等は教育用コンテンツに必要
- シュミレーション等が出来る機能・・・情報へのアクセスだけでなく、生徒自身で考えることを可能とするアプリケーションが重要
- マルチメディアコンテンツ作成機能・・・生徒自身が課題やコンテンツを作成出来れば、教育の質の向上につながる
- 共同作業を可能にする機能・・・他者から学ぶことの方が、教科書から学ぶことより多い。携帯を使った課題作成等をグループワークとして実施すれば他者からも学べる機会が増える
と、以上のような機能面での指摘をした後で、「しかし、こういった機能のついた携帯が20USDで買えるようになれば、本当に教育現場で携帯が使われて、教育の質が向上するのだろうか?」と疑問を投げかけている。
つまり、いくらリーズナブルな値段で高性能な機器が教育現場に導入されようと、結局、今の詰め込み・暗記型の教育スタイルが変わらない限り、教育の質は向上しないのでは?と言っている。カリキュラム、指導方法や教材の使い方、成績の評価方法、そして教師に対する訓練といったものの改善がなければ、携帯やPCが利用されても、本質的な教育の質の改善が出来ないという主張。
なるほど。共感できる意見です。
このブログでも以前、「エチオピアのOLPC」という題名で、教師の教え方がOLPCの使われ方に影響を及ぼしている点に触れたように、ICTを使う使わないの議論と共に、カリキュラムや指導方法の改善といったの根本的な部分もすごい重要と思う。一方、教育の「質」だけでなく、「量(教育へのアクセス)」を考えると、ICTの活用って、もう少しハードルが下がるのかなぁとも感じる。
コメント
約4年ぶりで南部アフリカに。今マラウィで農村電化の人材育成で短い調査をしているのですが、全土で携帯電話の普及がとんでもないことになっているのと、都市部ではWiFiの普及の可能性を感じています。
前者は村落電化のお手伝いをしてきた者の一人として、当初の計画時に全く想定していなかった展開なので、驚いています。これが、将来OLPCのような安価な端末の普及と結びつけば…と考えるのは、安易なのかもしれませんが、ご指摘のように指導法の改善が取り込まれるなら…などとも、考えるのです。
たしかに様々な条件が整わなければ、大きな発展はないのですが、アフリカで(すら)も、毎日発展しているという大きな変化を感じました。それと、例によって、民間セクター開発しか国の経済を動かす力はないなぁと再確認した久々のアフリカ訪問でした。(ま、援助もいいけどね、経済の力で世の中を動かすのが健全な社会だと思うからね…)
携帯電話の普及は本当にすごいようですね。私はエチオピアしか知らないのですが、2003年から2007年の間の携帯普及スピードには驚きました。
また、マラウイだったかどこかはうる覚えですが、携帯端末なしで番号だけを使用できる仕組みもあるようです(メールでいうところのYhaooメールやHotmailのWebメールみたいなもの)。これだと、端末を持ってなくても、誰かに携帯を借りれば、自分の番号とそれに紐づいたクレジットで通話が出来る。
こんな途上国ならではのサービスがある点も興味深いです。