前回の投稿でも紹介しましたが、携帯電話を利用して、途上国の人達の収入が向上したり、生活が改善したりというサクセスストーリーは雑誌やネットでもよく出てます。前回紹介したEconomist のSpecial Report 「Mobile Marvels」に載っていた数字ですが、携帯電話普及率が10%上昇すると、GDPが0.6%上昇するという調査結果も。具体例としては、携帯電話で農作物の市場価格を知ることで、仲買人に買い叩かれなくなったとか、携帯電話で明日の天気がわかることで、収穫や栽培の効率が上がったとか、携帯メールでHIV予防とか医療保健関係の情報が得られるとか。
で、ふと思うことがあります。上記で述べたメリットって、一昔前にテレセンターで実現しようとしていたことと全くと言っていいくらい同じ。田舎にテレセンターを設立して、そこでインターネットに接続可能なPCを数台設置して、農村部の人達も都市部同様に有益な情報にアクセス出来る様にしようという試み。同じレポート 「Mobile Marvels」によれば、ネット(ダイアルアップ接続)普及率が10%上がれば、GDPは0.8%上昇するとなっており、携帯電話の0.6%よりも経済効果が高い。
しかしながら、テレセンタープロジェクトのブームは多くの失敗事例を作るかたちで終焉を迎えた感が強い。何故テレセンターは失敗で、携帯電話は成功したのか?を考えると、携帯電話の普及率がPCの普及率よりはるかに高いことが考えられるが、それよりも携帯電話の「利用の簡単さ」が大きいと思う。逆に言えば、利用が簡単だったからこそ携帯電話は途上国でもここまで普及したのだろう。この簡単さは2点あり、1つ目は携帯電話の「操作」がPCよりも単純で簡単である点、そして2つ目は、携帯を利用した「サービス」自体が簡単に利用(理解)出来る点。
操作については、携帯電話の機能は高性能なものなら、「こんなん、全部使いこなせるかいっ!」と言いたくなるほど多機能なものもあるけど、途上国で普及しているのはシンプルなものだと思う。だからPCに比べて操作を覚えるのが簡単で、様するに電話だから目的も単純明快。一方PCはどうかというと、電源イキナリ切っちゃ駄目とか(最近のはそうでもないけど)、ダブルクリックに慣れるまで時間がかかったり、ウイルス対策が必要だったりと、なにかと覚えることや備えることが多い。二つ目のサービスの点を考えると、携帯電話を利用した情報提供とか情報取得は非常にシンプル。知ってる人に直接聞くとか、欲しい情報が送られてくるというスタイルですから。一方、テレセンターを考えると、ネットにつなげただけじゃ駄目で、欲しい情報を得るにはテクニックが必要。キーワード入れて検索しても、何十万件ヒットするサイトが出てきて、「なんじゃ、こりゃー!」と言いたくなる。どれが本当に信頼できて欲しい情報なのかを見つけるのは初心者には至難の業。そんな訳で、テレセンターは利用されず失敗に終わり、携帯電話は利用されて成功しているのではないだろうか。
と、そんなことを考えて見ると、将来的に途上国でも携帯電話でネットが出来るようになったときに、本当に期待するインパクトが得られるのかがちょっと疑問になってくる。前述のように、電話よりもネットのほうが経済効果が高いと言われているけれど、実は途上国の田舎の人達にとっては、ネットを使って色々な有益情報を得るのは非常にハードルが高いのではないだろうか?
なんとなく「次は携帯でネットへアクセス」→より大きな経済効果!という図がちらついているのですが、本当にそうなるためには、ネットでどれだけ使いやすくわかり易いサービスを提供出来るかによりけりだと感じるわけです。
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