中東諸国のBlackberry利用制限とICTの公共性

UAEを初めとする中東諸国でスマートフォンのブラックベリーが利用制限される動きがある。これは、ブラックベリーを通じての情報のやり取りがカナダのサーバーを通じ暗号化されてやり取りされているからだ。中東諸国の政府としては、別の国経由で暗号化される通信は、検閲が聞かずテロ組織など反政府組織の活動に利用される恐れがあるため、自国でのブラックベリー利用に懸念を覚えている。とは言え、ブラックベリーはセキュリティの高い通信が可能だからこそ、ビジネスユーザーの要望に応えて利用者数を増やしており、UAEでも約50万人のユーザーがいるといい、自国を金融ビジネス市場として盛り上げていこうする政府の方針に対して、ブラックベリー利用制限が足かせとなる可能性もある。

スカイプについても、暗号化という点では同様のことが言えるだろう。アメリカ政府もスカイプの暗号化された通信内容は検閲出来ないといっているが、もしかしたら、アメリカ政府だけは検閲してたりして・・・なんていう憶測も出来てしまう(←BBCでこんなことを言っていました)。

携帯電話やインターネットといった通信は、営利企業が運営・管理しているものの、その公共性は年々高まっている。今や国家の安全保障に関連するほどだ。

ブラックベリーは携帯通信インフラとしての公共性を有するが、一方、インターネットもインフラとして公共性がグングン高くなっている。そして、そのインフラを牛耳るのはGoogleだ。最近YahooジャパンがGoogleと提携を発表したように、Googleの勢いは止まるところを知らない。日本での検索市場はGoogleとYahooで二分している状況だったが、今後はYahooジャパンで検索しても、検索エンジンはGoogleだ。今や検索にGoogleを使わない人は居ないんじゃないだろうか。いくつかの本などでも指摘されてるが、このままGoogleが突っ走っていくと、ユーザーは「Web上にある情報」を得るのではなく、「Googleが検索結果に表示する」情報を得ることになる。実際、自分のWeb利用方法を振り返ると、Googleで検索して検索結果の最初の1~2ページに表示される情報しかチェックしないことが多い。もはや、Googleは検索結果をどう表示させるかで、情報操作が容易に出来る。しかも一国の情報でなく、対象は世界中だ。

携帯電話でもインターネットでも、その公共性は極めて高いにもかかわらず、普通の企業がその管理・運営を握っている。だからといって公営にするべきとも一概には言えない。Googleが公営だったら、ここまで便利で魅力的なサービスは生まれなかったはずだ。しかしながら、公共性が高まるICTインフラ。セキュリティやら国家の安全保障やら企業による情報操作やら、どうしていくのが一番良い方法なのだろうか?

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コメント

  1. Maki より:

    今日の日経の朝刊でも記事がありました。

    http://www.nikkei.com/tech/news/article/g=96958A9C9381959FE3E2E2E2E18DE3E2E2EAE0E2E3E29494E3E2E2E2;da=96958A88889DE2E0E2E5EAE5E5E2E3E7E3E0E0E2E2EBE2E2E2E2E2E2

    「ドイツ、高機能携帯の使用制限 政府職員対象」
    2010/8/10 20:09
    【ベルリン=赤川省吾】ドイツ政府は国家機密の流出を防止するため、政府職員が安全性の確立されていない高機能携帯電話(スマートフォン)などを使わないように呼びかけ始めた。デメジエール内務相が9日、独紙ハンデルスブラットに「ネットワークに対する攻撃が急増している」と発言。機密性が高いとされるカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)の「ブラックベリー」も安全とは言い切れないとの考えを示唆した。

     メルケル首相は各国首脳や与党幹部と携帯電話を使って連絡を取り、携帯電話のメール機能を頻繁に使うことでも知られている。だが同紙によれば「携帯機器には(情報漏れの)潜在的な危険性がある」との政府内部文書が存在。通信回線を使った「サイバーテロ」への対抗措置を講じる必要があるという。

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