ICTはツール

昨日は第1回オフ会でした。ご参加いただいた方々、どうもありがとうございました。色々なバックグラウンドを持った個性的な方々の参加で、非常に面白い会になったと感謝しています。
さて、オフ会でも話題になったテーマとして、「ICTはツールである」という点があった。

  • ICTはツールであり、教育、医療、農業など様々なセクターでもっと活用されるべき
  • ICTがツールである場合、ICT4D専門家という立場は何をするのか?
  • 教育分野には教育分野の専門家、医療分野には医療分野の専門家など、各セクターの専門家がいれば十分なのでは?それらの専門家がICTをツールとして利用すればこと足りるのではないか?
  • ICTはツールだけれど、これがなくては始まらない分野もある。BOPなどはまさにそうである。 などなど。

「ICTはツールである」という点に関連したトピックがちょうどHeeks教授のICT4Dブログにあったので紹介してみたい。
“Mainstreaming ICTs in Development: The Case Against”というタイトルで、ICTのメインストリーム化について以下のように書かれている。

一昔前は、開発におけるICT分野に注目が集まり、各援助機関にICTタスクフォース的なユニットが儲けられた。いわゆるICT専門家の集まりである。しかし、ICTがツールとして認識されてきた昨今、各援助機関はICTタスクフォース的ユニット
を 解散させ始めた(DFIDは2006年にICTユニットを解散し、Swiss SDCも2008年からICT分野から手を引き始め(ICTは各分野に統合された)、IDRCも2009~10年の組織改変でICTユニットを解散してい る)。言い換えれば、ICTが当たり前のツールになり、各セクターでの目標を実現するためのOne of toolsとして認識されたため、敢えてICT専門集団は不要になったということである。これは開発において、ICTがよそ者扱いから、メインストリーム へ昇格されたということ。

「ICTのメインストリーム化により、今後はICTを活用した開発効果の向上がより一層はかられるだろう。」

ということをHeeksは否定している。
ICT が当たり前のツールとなることは、教育や保健など各領域の専門家や援助機関のスタッフや途上国政府の人達がICTをツールとして活用しだすことであるが、 ちょっと待った!彼らはICTに関して専門的な知識・スキル・経験を必ずしも持っているとはいえない。むしろ、持っていない場合が多いのではないだろう か。そして、そういった人達によるICT4Dプロジェクトが失敗に終わる危険性が高いことは、過去の経験から明白である。特にICTに対する過度の期待に 起因する失敗例は多い。結局、過度な期待持たぬ者による支援、ICT導入や運用に関する落とし穴に落ちないための注意点を経験から熟知している者による支 援が不可欠であり、つまり、ICT4D専門家が必要であるのだ。

と、以上のようなことがHeeks教授の主張である。
実際、自分も大学院でICT4Dを勉強しつつ、ICT4D専門家って何だろ?と感じていた。でも、ICTはツールだけれど、単なるツールとして片付けるわけにはいかない使い勝手が難しく、且つ、強力なツールなんだろうと感じる。「やり方次第で大きなインパクトを途上国開発にもたらせるICTというツールをどう使いこなすのか?」そんな課題に応えられるICT4D専門家が必要なんじゃないかと思う。

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コメント

  1. アベバ より:

    有意義なオフ会になったようねで良かったですね。IT業界に籍を置く私としても興味津々だったのですが、シネアフの誘惑に負けました。が、今回は大失敗。エチオピアものだったのに残念です(T_T)
    途上国の問題解決と言わず、ICTの活路は変わってきていますヨ、民間の商売でも。ICTがツールというのは間違いないですが、相手にどんなVALUEを提供できるか?というのが要です。コストダウンできますとか、省力化できますという時代は終わり、新たなか価値を生みだしますという提案じゃないと投資が見込めない時代になってきたようです。

    • tomonarit より:

      アベバさん
      オフ会、またやりたいと思うので、そのときには是非、ご参加下さい。
      ICTを利用して、「VALUE」を生み出すってのが、これからのポイントなんでしょうね。しかも、コストダウンとかの単なるメリットじゃなくて、これまでなかった「新しい価値観」を創造・提供することが求められてる。例えば、KivaやUshahidiなんかはこれまなかった価値を提供出来ている好事例だと思います。きっともっと色々なところに新しい価値観の創造を考えていきたいですね。

  2. […] 去同様にテクノロジーの活用は根付かずに下火になっていくのだろうと思います。以下、2010年の投稿ですが、国際開発機関でのICT4Dブームの終わりについて書かれているので引用します。 […]

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