タイのICT4Dプロジェクト

仕事でタイへ行ってきました。タイといえば、15年以上前に初めて海外旅行へ行ったのがタイのバンコクでした。懐かしい。その後も縁あって、エチオピアから日本へ行くトランジットやらなんやらで、今回は5回目のタイでした。

タイ政府のICT活用の取組みは自分の想像を超えていて非常に進んでいると正直驚きました。いやはや、ある意味日本よりも進んでいる部分もあるんじゃないかと思うほど。以下、そんなタイ政府の取組みをご紹介します。

IT Community Development Center

タイのICT省が進めているいわゆるテレセンタープロジェクト。各家までの有線通信ネットワーク施設が困難な地域を対象に、地域からのテレセンター設立プロポーザルを募り、基準をクリアした地域にテレセンターを設立するというもの。プロポーザル内容から、持続継続性などを判断して採択可否が決まるようだ。採択された場合は、ADSLラインの提供、管理者向けトレーニング提供、1年間の運営費補助などの支援が行われ、2年目からは自立運営することになる。現在既に1,800ほどのテレセンターがあるらしい。

「とはいえ、サステイナブルなのか?」と疑問に感じたが、全てのセンターが運営出来ており、なかにはその地域の特産品をネットで販売して運営費以上の収益上げていたり、テレセンターがマイクロファイナンス的サービスの提供まで実施したりと、好事例も多数ある。アフリカの事例から、「テレセンターは上手くいかないケースが多い」と思い込んでいた自分の偏見が変わりました。おそらくアフリカ諸国の多くでは、インフラが弱いことに加えて、まだ「情報の価値」がそれほど高くなく、一方タイくらい発展した国になるとインフラもある程度安定し、且つ「情報の価値」がグンと上がるのだろうと思いました。つまり、インフラ関連のコスト(資料料、メンテナンス料など)が低くなり、且つ情報にお金を払うことが当たり前に行われ、それゆえにテレセンターもサステイナブルなんじゃないかと。

e-learning

高等教育では遠隔教育の取組みも行われており、ほほ全ての大学が使える共通プラットフォーム(“Uninet”という)が構築されている。それを活用し各大学で作成したe-learningコンテンツを共有したり、遠隔研修を行なったりといった取組みが行われている。

One Tablet One Student

初頭・中等教育分野の取組みとしては、小中学生を対象に一人に一台ずつタブレットPC(iPadじゃなくて中国製のもの)を供与するという。凄いなぁ、と思っていたら、日本でも同様の試みがあるということを遅ればせながら知りました。もう自分が子供の頃の授業とは大分違っているのか・・・。ちなみにタイでは小学校1年生からITの授業があるそうです。

遠隔医療

以前、このブログでも紹介しましたが、遠隔医療分野でのICT活用も一部で始まっていました。WiMAX技術を使って遠隔医療を行なっています。ちなみに、JICAが支援したプロジェクトでも地域活性化を目的に地方の情報インフラを整備するプロジェクトがあり、そこでもWiMAXが使われています。以下、JICAのプロジェクトとも連携していたIT Valley プロジェクトというタイ政府の取組みを紹介する動画です(6分20秒あたりから遠隔医療の紹介です)。

 

以上がタイのお話。テレセンターにしろ遠隔教育にしろ、他の国なんかでは失敗する例も少なくないはずなのに、タイでは非常に上手くいっている印象でした。今後、どんなふうに発展していくのかが楽しみです。

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コメント

  1. […] タイのICT4Dプロジェクト « ICT for Development.JP […]

  2. M.Miyazaki より:

    タイ政府が推進するテレセンターがうまくいく一因として現政権のインラット首相(そしてタクシン元首相も)一族がタイ大手通信会社Sincorporationを経営しており政府側、民間側お互い強力な支援体制が組めることもあるのでしょうね。
    確かタイ国内の通信分野は外資が入れなかったはず。

    また、話は変わりますが、ICT省ができる前、1995年からNECTECという組織がSchoolNetprojectという安価なPCを配り国内のインターネット促進を図っていました。(予算不足とかで全てがうまくいっていないとも。)それが今Tabletに進化したんでしょうね。
    もし、可能だったら現地協力隊の方などに出張のついでに現状を見てもらって報告してもらうと面白いかもしれませんね。

    …蛇足ですが、10年くらい前、ラオスのサバナケット県というところに日本からのプロジェクト関連で出張に行った時、タイのJICA版その名も「TICA(笑)」からも、タイのIT支援関連でCATかTOTの人が別プロジェクトで来てました。
    同時期日本からタイへのプロジェクトが進行していたので、その一方でもう既にタイがラオスを支援する時代なんだな…と吃驚しました。また、タイの王女様のIT好きみたいで、バンコクで開催された展示会の際日本のブースに来たとか聞きました。

  3. tomonarit より:

    M.Miyazakiさん
    タイIT事情についてのコメントありがとうございます。ICTは利権が絡むこともあり、色んな意味で政府側・民間側お互いの連携は強いみたいですね。
    NECTECについてのお話がありましたが、今回のWiMAXプロジェクトの実施機関がNECTECでした。接した方達は皆さん優秀な印象でしたね。この機関がIT Valleyというプロジェクトを北部で展開しており、IT好きな王女様からもメディア等でポジティプなコメントをしていますね。

    今回タイのICT事情を知って、10年くらい前からTICAがラオスにIT支援しているのも、なんだかわかる気がしました。
    また、面白い情報があればコメント宜しくお願いします!

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