バングラデシュに交通ICカード導入(その1)

アジア・大洋州

現在バングラデシュにて初の試みとして交通ICカード(SUICAやPASMOのようなもの)を導入しようという動きがあり、JICAがプロジェクトを実施している(私が担当)。これまでJICAが行ってきた種類の支援とはやや異なり、ビジネスベースでの進出を検討していた民間企業とタッグを組んでのプロジェクトを行うという形である。最近メディアへの露出も増えてきており、このブログでも紹介しておこうと思う。

まず、昨年いっぱい実施していたプロジェクトの概要としては、バングラデシュの国営バス会社にSPASSと呼ばれるICカード(Felicaタイプ)を試行的に導入するというものであった。
<SPASS>
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パートナーとなったのが、日本のソフトウェア企業である(株)N-wave。きっかけとしては、社員として雇っていたバングラデシュ人を通じて既に国営バス会社のチケット販売を受注していたN-wave社がICカードへ広げるアイディアを持っていたことと、JICAがダッカの交通事情に問題意識を持っていて、そこがうまくマッチしたと言える。

プロジェクトの現場・イメージについては、日本で報道された番組が分かりやすい。

このプロジェクトの面白い点としては、バングラデシュ初のICカードということもさることながら、意外なその結果にある。バス会社への試行導入をして数ヶ月、プロジェクトメンバーから意外な報告があった。

その内容は「バスの利用人数は導入前後で変わらず・平均利用区間も変わっていないのに、ICカード導入バスの売り上げが増えているんです。」ということ。

どういうことかわかるだろうか。

これまではチケット売り場(売店)でチケットを買い、バス乗車時に車掌に渡して乗っていた。しかし、一部の人はチケット売り場でチケットを買わず、車掌に(通常料金よりやや安い)現金を渡していて、その金はそのまま車掌や運転手のポケットマネーに消えていた。この行為がICカードを導入したためできなくなり、多くの人が通常料金を払うようになったことにより売り上げが急増したということである。

つまり、ICカードを導入したことにより、顧客の利便性向上のみならず、汚職対策という二次的な効果がでたのである。

そういった結果が数字として出たことにより、バス会社も本格的な導入を検討することになり、JICAによるプロジェクト終了後もビジネスベースでN-wave社に業務委託を行い、現在も国営バスでのICカード運用を続けている。

JICAとしてはこれで終わりではなく、バングラデシュのデファクトスタンダードとして利便性の良い交通システムを導入しこの劣悪な交通状況を改善すべく、そして日本の技術であるFelicaを浸透させるべく、次の手を打っている。

鉄道、高速バス、モノレール、統合精算機関設立と道(夢)はまだまだ長い。

今後の動きについては、その2、で述べようと思う(時期は未定。現在立ち上げ中のプロジェクトの成果が出た頃??)。

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コメント

  1. Yuji Ozaki より:

    「バングラデシュのデファクトスタンダードとして利便性の良い交通システムを導入」
    NFC(Near Field Communications)は、日本国内でもSuica / Taspo などで異なる方式が導入されていたり、記事中のバス料金のシステムは中国が強力に売り込んでいるなど、競合が激しい部分ですが、何とかがんばってください(祈り)。バングラデシュは、他の国と国境で接しているので、相互乗り入れや通関、高速道路など応用範囲は広そうですね。

  2. Kanot Kanot より:

    > Yuji Ozakiさん
    他国との国境ですか。。そこまではまだ考えれていませんね(そもそもまだダッカの外にすら広がっていませんが・・)。そのうち競争も激化してくると思いますので、それまでにデファクト目指して頑張りたいと思います。

  3. あだち より:

    日本以外のベンダーからも、N-wave社の後から電子マネーの許可を取ろうとバングラデシュ中央銀行に働きかけがあったそうですが、
    他国のベンダーには今のところ降りないそうです。
    このため他社よりも大きく展開できる見込みだそうです。

    ただ、Felica関連の機器の値段がなかなか高いので、利益を大きく出すには下地作りがまだまだかかりそうです。

    • Kanot Kanot より:

      あだちさん
      コメントありがとうございます。この国は汚職や既得権益という大きな壁がありますので、正式な承認等を得るのは大変です。いかに民間ベースで導入できるかがカギと思います。

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