世界銀行がITを2016年の主要テーマに(その2)

前回のKanotの投稿「世界銀行がITを2016年の主要テーマに」について、コメントを書いていたら、あまりに長文になってしまったので、別トピックとして投稿することにしちゃたTomonaritです。

Kanotの投稿はとても勉強になる投稿っすね。あざーす!自分はWDRレポートそのものは斜め読みしかしていないので、日本語分かり易く書いてくれてとてもためになりました。
自分もICTがWDRのテーマに選ばれたとこ自体は凄い嬉しいですね。一方、議論そのものの根底にある考え方、すなわち「ICTはツールに過ぎずアナログ・コンポーネントがより重要。アナログ・コンポーネントが整ってないと、逆に整ってる国とそうでない国の格差がICTによって広がっていく」ということ、は10年以上前から変わっていないと感じます。逆に言えば、それが現実・真実ということなんだろうけど、ちょっと物足りなさを感じてしまう気も。

最近、自分が講師をやらせてもらっている神戸情報大学院大学の授業の課題として、学生(ほとんどがアフリカからの留学生)から提出されたエッセイ(20数本)を読んでました。実際のICT4Dプロジェクトをケーススタディとして、その成功の秘訣もしくは課題と原因&解決案を考えてもらうというのがお題です。一通り読んでみて思うところは、結局「アナログ・コンポーネントの改善」や「インフラ整備」が必要というような結論なんですよね。そして、それは自分も全く正論で正しいと思うのです。

しかしながら、「じゃ、アナログ・コンポーネントとしての教育制度や教授法が整うまではICTを学校に導入するのは待ちましょう」とか「じゃ、ICTインフラが整ってユーザのスキルが一定レベルまで上がるまではICTを導入するのは待ちましょう」というのだけが本当に「ベストな判断」なのか?というと自分は疑問を感じちゃったりします。
間違いなく「正しい判断」だとは思うものの、そこで「待ちましょう」という判断をしては、決してそれ以上の進歩がないような、なんとなく残念な気がするんですよね。

いくらアフリカを代表とする途上国の携帯電話普及率が劇的に伸びてきているとは言え、ICT環境や法制度や個々人のスキルなど条件の善し悪しを言い出したら途上国が全体的に劣っているのは間違いないので、「そんな条件でも、そんな条件だからこそ」ICTに期待出来る何かがあるんじゃないかと、つい夢を見てしまうのです。ケニアのM-PESAUshahidiインパクト・ソーシング(ソーシャル・アウトソーシング)のSamasourceなど、ある一定の厳しい環境・条件のなかでも成功しているICT4D事例があるということは、環境・条件の悪い途上国でのプロジェクトや事業でも、どっかに成功させる可能性があるんじゃないかと・・・。
これまでの王道の議論では、「成否の鍵はコンテクストによりけり」というような締めくくりになってしまうのですが、そうじゃない結論、「ズバリ、こうすれば上手く行く」というもの、を探して行きたいですね。いや〜、それがわかれば苦労はないか・・・。

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コメント

  1. Kanot Kanot より:

    あまりに軽いタッチではじまったので驚きましたw
    おっしゃってる、「じゃあアナログな準備ができるまではやらないのか?」というのは本質的な問いですよね。こちらで議論しているのはITは人・組織の意思を増幅するものではないかということです。つまり、アナログコンポーネントの中に「意思」も含まれるのではという点です。これであればもう少し取り掛かるハードルは低そうですよね(笑)

    • tomonarit より:

      いやー、このテーマは数年前からの自分の関心事項ですね。ICT4Dプロジェクトの色々なリスクを把握するということが第一歩だとすると、二歩目は成功に導くにはどうするか?だと思うのですが、「時期が来るのを待つ」ではなんだか悲しいっすからね。
      あと、「ITは人・組織の意思を増幅するもの」というのは正にそのとおりなんだと思います。そして、その上でいつも疑問に感じるのが、ICT4Dという領域の専門家に求められる役割ってなんだろう?という点。アナログ・コンポーネントが大事となると、「教育」とか「農業」といったようなICTに関係なくそのセクターや機関のキャパビルが必要となり、教育の専門家や農業の専門家の出番になったとき、ICT4Dという領域にいる我々の立ち位置ってどうなんだろう?と。出番はなくなるのかなぁ。。。

  2. Ozaki Yuji より:

    「そんな条件でも、そんな条件だからこそ」という制約の中でもなんとかソリューションを引っ張り出すのがキモなんでしょうね。この努力はなくしたくないです。

    ただ、そのソリューションにも罠が。
    ICT周辺のサービスの隆盛を見ていると、高付加価値な商品や知識財は、売り手と仲介者・買い手に情報(知識)格差がありすぎると売れないんじゃないか、とも考えるようになってます。
    売り手が情報や知識をもっていて買い手が持っていない、という構図だけではなく、その逆もまた然り。

    • tomonarit より:

      情報(知識)格差の話は、売り手が情報があり買い手が持っていないという良くあるパターンで考えてみると、買い手側の教育レベルだったり、その分野の知識だったり、というこれまた「アナログ・コンポーネント」を改善すれば良いという話になるのかもしれませんね。ユーザスキルが向上するというのは、高度なサービスを売る市場が熟成するということかと。

  3. Toshi より:

    大変面白い話題ですね。私が思うのはインフラ整備ももちろん必要なんでしょうが、成功してるICT4Dの事例ってほとんどが「やり方が文化的に受容されている」ことが前提になってるのではないかと。例えばSMSで情報を送ることが文化として根付いているからM-PESAは受け入れられた。その文脈で考えるならHangoutが一般化しないのもSkypeが文化的に根付いてしまっているからと言えるのかも。逆に捉えれば、今あるインフラやツールをどのように既存のサービスと結びつけて、その「やり方=メソッド」を定着させられるかが重要で、そのメソッドが文化的に受容されていることがカギとなるのではないかと思います。

    • tomonarit より:

      Toshiさん、「やり方が文化的に受容されている」ことっていうのは、確かにそのとおりですね。そして、自分の模索している「そんな条件でも、そんな条件だからこそ」という途上国の制約の中でもどうすれば上手く行くのか?という疑問の1つの解になり得る要素のような気がします。他にも「プロジェクトが成功するまで突き進むリーダーがいる」とことか、そういうのも1つの要素かと思いますが、強いリーダーの有無よりも、「やり方が文化的に受容されている」ことの方が、何かと打ち手がありそうで、「ズバリ、こうすれば上手く行く」に近づく解としての可能性が高そうと感じました。今後、この疑問を考える上で参考になりました。ありがとうございます!

  4. […] そもそも安定したインターネット環境や個人のスキルが高くないと仕事が受注出来ない(結局、インフラや教育レベルなどのアナログ・コンポーネントが重要という前回、前々回のトピックと同様) […]

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