ガーナのオレオレ詐欺!?

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SIM cards

Source: http://commsrisk.com/simbox-arguments-provoke-more-political-tension-in-ghana/

ここ最近、ガーナの新聞で立て続けに携帯電話やモバイルバンキングに関する記事が載っており、なかなか興味深かったので紹介します。

ガーナのモバイルバンキング市場は?

そもそもどんくらいガーナで携帯電話やモバイルバンキングが浸透しているの?という点について、CGAPの調査でガーナとその他アフリカ諸国のモバイルバンキング市場状況が比較されてました。結果は以下のとおり。

モバイルバンキング口座登録者の割合(人口に対しての割合)

ガーナ:20%
ケニア:63%
タンザニア:38%
ルワンダ:23%
ウガンダ:33%

残念ながらガーナはイマイチです。そしてリーディングはやはりM-PESAのケニア。納得。ただ、ケニアやタンザニア等の国よりもガーナでモバイルバンキング利用者数が少ない背景には、ガーナは比較的多くの人が通常の銀行口座を持っているという事情がありそう。以下が成人の銀行口座保有者割合。

銀行口座保有者の割合(人口に対しての割合)

ガーナ:34%
ケニア:28%
タンザニア:21%
ルワンダ:16%
ウガンダ:14%

モバイルバンキング普及度が劣るガーナですが、モバイルバンキング口座登録者数は4.4 million、代理店は44,000あり、毎月380 million GHS(=約105億円)のトランザクションがあるとのこと。そして、こういうサービスが普及すると、それを利用した悪もはびこるようで、次の記事が新聞に掲載されていました。

ガーナ版オレオレ詐欺

偽造IDカードを使って登録・入手したSIMカードを使った犯罪が増えているそう。2016年2月4日のガーナ新聞「Daily Graphic」に、その中でも「ガーナ版オレオレ詐欺」と名付けたくなるような犯行についての記事があった。具体的には、知らない人からいきなり電話がかかって来て、「◯◯さんですね。◯年前に◯◯大学を卒業されて、◯◯企業でXXのお仕事をされていると聞いていますが・・・」と、何故か相手は個人情報を知っている。そして、ある会社からの仕事のオファーや引き抜きを装って、仕事が欲しければ紹介料として金をモバイルバンキングで送金しろと言う。しかし送金後に相手に連絡すると、「この携帯番号は現在使われておりません・・・」状態になっている。個人情報の入手方法は色々とあるようだが、組織的な犯行の場合も多く、仕事に困っていたり良い仕事を欲している者達は、ついこの手の詐欺に引っかかってしまうらしい。

国際電話料金のちょろまかし

不正に登録・入手したSIMカードを使った犯罪として、国際通話を国内通話にすり替える方法もある。自分は技術的なことは詳しくないのだけれと、SIM Boxなる装置を用いてそういうことが出来るらしい。実際、ガーナの新聞でもSIM Boxを用いて国際通話料金をちょろまかしている会社が摘発されたという記事が掲載されていた。SIM Boxは遠隔操作も可能なため、警察としては犯人探しが大変で、2010年から2015年7月までの国際通話の損失は52 million USDにものぼるとのこと。ちなみに警察側もこのような犯行を調査するために特別な装置を使っているとのこと。アフリカといえど、なんだがサイバーな感じ。この記事を見たときに「SIM Boxってなんだろ?」とWikipediaを見てみたら、国際通話料金のちょろまかしに使われる事もあると書いてあり、その例示でガーナの名前が上げられてました。なんか不名誉な感じ。

以上3つの記事の紹介でした。便利になるのは嬉しいけれど、それに絡んだ犯罪も増えて来るとは先進国も途上国も万国共通の課題。法や規制の整備とか、それを管理監督する機関の能力向上、そして、通信業者や町のモバイルバンキングサービス提供エージャントといった上から下までを含めた対策が必要になってきてます。

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コメント

  1. Ozaki Yuji より:

    地味にSIMbox fraudを追いかけています。結構興味深い。

    技術的には、VoIP化された国際通話を、SIMboxがVoIPインターネット経由で受け取り、SIMbox内部でローカルのSIMから発信して受信者に到着させる、というもの。国際通話料金の取りっぱぐれ、ですね。外国から当該国に着電する国際通話における問題であるようです。
    ここで素直な疑問として「だったら送受信者ともにスマホでSkeypeやViber、LINE使えばええやん。違法でもなんでもないし」が浮上してきます。いずれ音声のIP通信が低廉化してアタリマエになると、SIMbox fraudも無くなってしまうかもしれませんね。

    SIMbox fraudでは、ハードウエアとしてのSIMbox以外に、VoIPプロバイダの存在(ある米国の会社が有名なようです。ここではVoIP化された通話の発信番号が任意設定できてしまうケースもある)が重要です。
    SIMboxそのものは、SIMを収納して(この収容可能なSIMの枚数がfraudの儲けを決める。1000枚近く収容できるものもある)主にGSMの通信とIP通信のゲートウエイとして機能します。CTIやIVR(電話の自動応答)構築にも使われてます。

    SIMbox fraudは、国際通話と国内通話の差が大きな要因なので、国際通話の入電に対して高いITR(International termination rates => 政府の収入)を課し、国内通話との料金差が大きい国で発生しているようです。ガーナ、タンザニア、ウガンダがこれに当たります。特にガーナでは、国際通話の最低料金、国内通話の最高料金が「Electronic Communication Amendment Acts, Act 786」で罰則付きの規定があり、わかりやすいことから事例として取り上げられているようですね。
    逆に、国際通話と国内通話にあまり料金差がない国、例えばナイジェリアや南アではSIMbox fraudは存在してないようです。

    次に、SIMが大量に購入出来ることがSIMbox fraud発生の条件となるようです。
    SIM購入時のIDのチェックがいい加減、購入者のIDが複数種類使える、IDあたりの購入枚数の制限が存在しない、たとえ購入枚数の制限があってもそれが適切に機能せず、販売店を移動しながら大量のSIMが購入できる、販売店がグルになっている、といったケースが相当します。
    また、IDを偽造する際の基礎情報としてよく使われるのが、銀行口座開設時の登録情報であるようです。これがついでに「ガーナ版オレオレ詐欺」に転用されているのかも。もちろん、銀行員を抱き込んで情報を入手しているようです。

    これ以外にも、いろいろな発生要因があり、それぞれに対策が行われているようです。ケニアやパキスタンは国レベルで対策を頑張っている様子です。

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