途上国開発におけるGoogleやFacebookの存在感

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こんにちは、Kanotです。皆さんGoogleやFacebookという企業についてどのような印象をお持ちでしょうか?シリコンバレーのITベンチャー、無料サービスのインターネット企業、カリスマの率いるプログラマ集団などでしょうか。

シリコンバレーを拠点に活動する彼らが、実は途上国開発でも存在感を増している、と書くと意外に感じるでしょうか?今日は彼らが今までにない考え方で途上国を見て活動しているという話を書きたいと思います。

まず最初に、GoogleやFacebookの企業としての規模感のイメージがない方が多いと思いますが、実はもはやベンチャーではなく立派な大企業になっています。従業員数はFacebookで1万人以上、Googleに至っては5万人!を越えています。特にGoogleはサービス範囲をネットサービスからどんどん広げていて、例えば、先日ニュースになった、囲碁のチャンピオンにコンピュータが勝ったという人工知能のはGoogle(正確にはGoogleが買収したDeepMindチーム)が作ったものです。今、凄い勢いで人工知能(特に機械学習・ディープラーニングやデータマイニング)に投資をして、ロボット(AI)や自動運転車を開発しています。

このように、やや意外に感じるかもしれませんが、彼らはもはやアイディアと直感に重きをおく理論無視の実践者集団という(私が持っていた)イメージとは異なり、極めて論理的に世界や人の行動をデータ化、分析しようとしています。コンピュータ科学を中心とする博士号取得者も研究者として大量に雇用していて、積極的に世界の頭脳を集めています。例えば、アメリカの大学では春から夏にかけて数ヶ月間のインターンの風習があるのですが、Googleは1500人(2014年)、Facebookも数百人規模で修士、博士過程の大学院生をインターンとして有給で受け入れるなど、研究を(そして青田刈りを?)重要視しています。

技術大国である日本との比較はどうでしょう?高度経済成長期に日本が世界を席巻したのには、アメリカがサービス産業にシフトする中で、日本のメーカーが大量の技術者を育成したのが一つの原動力だったと思っていますが、今のシリコンバレーの原動力は当時の日本と同じで、技術者と研究者です。極めて論理的かつ理論的にサービスを開発、改良しています。当時の日本・アメリカの関係と逆のような関係になってしまっていると感じるのは私だけでしょうか。

さて、前置きが長くなりましたが、本題である彼ら(Google, Facebook等)の途上国開発への存在感についてです。ビジネスが本業の彼らですが、最近は途上国とITをテーマにしたアカデミックな学会など(ICTDCHI)にも大学に並んで出てきて、大きな存在感を出しています。途上国向けのプロジェクトも盛んで、例えばGoogle のProject loonでは気球のようなものを成層圏に飛ばしてそれを通じてインフラが届いてない地域にモバイルネットワークを届けようとしています。Facebookもinternet.orgという組織を作り、インターネットの普及を支援しています。internet.orgではシンプルに、インターネットを届いてない人に届けよう、というものです。技術がどうこうという点を通り越して、インターネットにつながるという環境を提供するだけで人々の生活をこんなにも変えうる(各種情報を検索できること、遠くの人と繋がれること、バーチャルにビジネスをできること)といったことを通じて、途上国の人へのチャンスの提供を目指しているようです。Tomonaritの投稿でも色々とIT企業のサービスが紹介されています。

では、彼らはなぜそこまでインターネットの普及を支援するのでしょうか?もちろん社会貢献としての要素もあるかと思います。しかし、それだけでなくきちっとビジネスとしての可能性も考えた上での活動だと私は考えています。つまり、通信インフラ普及と所得向上、そしてリテラシー向上が彼らの市場開拓に効果的、というビジネスの視点です。ただし、従来のBOPビジネスと根本的に異なる点があります。それは、彼らはユーザ(B2C)からお金を取る気はなく(我々もGoogleやFacebookは無料ですよね)、ただ市場とシェアを拡大さえすれば広告収入(B2B)が後から付いてくる、と考えているので、一般的なBOPビジネスのようにユーザからお金を取るビジネスモデルとは全く異なる視点でビジネスを考えています。やや皮肉ですが 「すべての人にインターネットを」という開発課題を解決して一番恩恵を得るのも実は彼らかもしれません。

援助業界では新興国ドナーなどが新しいアクターとして話題かと思いますが、GoogleやFacebookとった企業の動きも、新しい援助アクターとして注目に値すると思います。

(画像はThe New York Timesより転載)

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コメント

  1. Ozaki Yuji より:

    Kanotさん、よみやすくまとめて下さってますね。ありがとうございます。
    『ユーザ(B2C)からお金を取る気はなく、ただ市場とシェアを拡大さえすれば広告収入(B2B)が後から付いてくる、と考えている』のは、民放テレビ番組のスキーム(視聴率が広告枠の単価を左右する)と似ているような気も。ただし、そこでの広告効果としての認知の母数や単価をドンブリ勘定ではなく、数字で明確にしているのがGoogleの収益を支えているアルゴリズムだと感じています。

    Googleといえば、政府機関との間での人事交流(天下りや天上り)を盛んにやっているようで、Transparency Projectを通じて米国とEUについての情報を公開しています。日本語では2016年6月7日付の、
    Gigazneのまとめ記事が読みやすいですね。いずれにせよ、超高学歴な社員・元社員なら、国際協力を含む官や学との人事交流はスムーズに行きそうですしねー。
    http://googletransparencyproject.org/articles/googles-revolving-door-us
    http://googletransparencyproject.org/articles/googles-european-revolving-door

    米国の連邦諮問委員会については、その力の割にメンバーの人選に偏りが生じていることを市民団体や会計監査院からツッコミを喰らっている(公平性が足りん!的な)ようでもあります。
    例えば、Googleの元CEOであるエリック・シュミット氏は、米国オバマ政権下のクリントン国務長官に外交目的で用いる技術についての夕食会にお招きされたり、北朝鮮やイラクへの訪問メンバーに入っていたり、英国キャメロン政権下のビジネス諮問院会のメンバーじゃなかったっけか。

    日本では、懇談会や審議会を通じて「有識者」という名目で企業から人を政治に参加させたりしてますよね。所管省庁が業界団体に要請→業界団体加盟企業の持ち回りで委員を派遣→業界の利益確保、というコンテクストになりがちではありますが。近年では、官邸主導での懇親会や会議などの集まりに(人脈ベースで)企業から参加→特定の企業の戦略が国家戦略のベースになる、なんてこともあるのでしょうな。

  2. Kanot Kanot より:

    Ozakiさん、詳しいコメントありがとうございます。政府との太すぎる人材交流は知りませんでした。現在はトップが優秀で熱い思いを持ってやっているのでそんなに悪いことにはならないと個人的には思いますが、これが2代目、3代目となってきたら、財閥・大企業の御曹司の例に漏れず、おかしなことになってくるかもしれませんね。こういう点も高度経済成長期の日本のようですね・・・。私のアメリカでの一年の滞在を経て感じていることは、彼らの目指している自由(や平等・公平)な社会というのはあくまでビジョンであり、それぞれ日本より低い状況なんじゃないかと感じたりもします。逆に日本は管理社会が高度化しすぎてしまっていて、まさに出る杭は打たれてしまう状況と感じます。

  3. Ozaki Yuji より:

    めっちゃ余談ばかりですが。

    日本の管理社会って「効率よく管理したい」「イザというときに責任を負いたくない」という、管理する側の都合のカタマリだと感じてます。管理される側は、管理する側があらかじめ想定した動線に沿っている限りでは不都合が生じず、便利さなどの予定調和を何となく享受できる、ということで。

    出る杭は打たれる、ってのは、予定調和を維持するために、管理される側が同調圧力(ピア・プレッシャー)を相互にぶっ放している状態ではないかと。同調圧力を放つ人たちは、思春期的な・厨二病的な本能で「(虎の威を借る狐っぽく)自分たちが正しい」とか「みんな(って誰だよ?)がやっているし、やるのが当然」と何となく信じて疑っていない、というあたりとか特に。
    この同調圧力が顕著に現れる時期は小中学校あたりらしく、いわゆる「いじめ」や「(SNSなどによる)私生活まで相互監視」などの社会現象、家庭生活やマーケティング的には「さっしてちゃん」「アタシのこと全然わかってない!(だからそれで何だというのだ…)」という言葉との関係が見えてきそうで興味深いです(笑)。

    また、この問題を追っていると、社会人基礎力などで求められるコミュニケーション能力のつかいみちが「問題解決を目的とせず、問題をウヤムヤにしてしまうことが目的」という仮説にたどり着きそうでコワイです。

  4. […] 以前の投稿「途上国開発におけるGoogle,Facebookの存在感」でも取り上げた通り、彼はFacebookとは別にinternet.orgという組織を立ち上げており、「世界中の人にインターネットを」といったスローガンで活動をしている。この活動(インターネットユーザの増加)は長期的にはFacebookの利益にもなりうるので、完全な社会貢献事業とは言えないのでは?とその投稿で指摘はしたものの、彼の思想は広く大きく、何よりそれを実行できる力(お金・サービス)がある。 […]

  5. […] 以前の投稿「途上国開発におけるGoogle,Facebookの存在感」でも取り上げた通り、彼はFacebookとは別にinternet.orgという組織を立ち上げており、「世界中の人にインターネットを」といったスローガンで活動をしている。この活動(インターネットユーザの増加)は長期的にはFacebookの利益にもなりうるので、完全な社会貢献事業とは言えないのでは?とその投稿で指摘はしたものの、彼の目標は高く、何よりそれを実行できる力(お金・サービス)がある。 […]

  6. […] つは、こういった活動が長期的な視点で彼らのビジネスに繋がるからだ、と考えており、以前の投稿で取り上げました。今日は、もう一つの理由として私が考えている、「社員モチベーシ […]

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