ルワンダにおけるOLPCの課題

アフリカ

お久しぶりです、Kanotです。いきなりですが、ICT4D史上、最も賛否両論を生んだプロジェクトとはなんでしょう?

タイトルにキーワードが入ってるので既にネタバレしてますが、それはOne Laptop Per Child (OLPC)です。勝手に言い切ってしまいましたが、おそらくICT4D関係者なら異論がないのではないでしょうか。OLPCとはMITのニコラス・ネグロポンテ氏が主導した、小学校の子どもたちに$100程度で作られたノートパソコンを配り、教育に役立てるというプロジェクトです(下の写真参照)。「物をあげることが効果的か否か」というICT4Dでよく起こる議論の象徴のようなプロジェクトで、このブログでもなんと過去10回もOLPCがタイトルに含まれる投稿がありました(笑)。

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今回取り上げるルワンダにおけるOLPCですが、NPOの枠を越えて、国策として展開されています。ルワンダ政府が出しているICT Sector Profileによると、2015年時点で756の小学校に約25万台が配布済みです。そのOLPCについて、ルワンダで青年海外協力隊として活動しているタケダノリヒロさんがブログで取り上げていたの紹介したいと思います(現地の動画付き!)。

ルワンダノオト〜ルワンダの子どもにPCを!OLPCの現状と課題〜

今回の投稿に使っている黒板の写真もタケダさんが撮ったものです。ブログにはルワンダのOLPCの現状をまとめた動画もありますので、OLPCについてよく知らない方はぜひご覧ください。

さて、本題のOLPCの課題についてですが、タケダさんのブログでは、以下のように言及されています。

  • 教師が使い方をわかっていない。教師向け研修もあるのだが、そのトレーナー自体が使い方をよくわかっていない。
  • その結果、PCの授業ではPCの仕組みであるキーボード、マウス、メモリ、などと行った知識しか教えられない。(黒板の写真がそうですね)

この点はまさに私がルワンダ滞在中に聞いたOLPCの課題の一つです。OLPCのメリットはPCやインターネットの可能性を子どもに教えることであり、PCの仕組みを教えることだけでは、本来テクノロジーの持つ楽しさ・ワクワク感などは伝えられないと思います。その他にも私のルワンダ滞在中のヒアリングを通じて、以下のようなOLPCの課題を聞きました。

  • PCを失くすと先生の責任になるため、授業時以外は先生が保管している。これでは自宅に持ち帰って遊びを通じてPCを学ぶということができない。
  • 電気が安定しないルワンダでクラス全員でOLPCを使うということは、教師が授業前にそれらをいちいち充電するということになりわけで、教師の負担が非常に大きい。
  • OLPCにはWifi機能があるが、ルワンダの小学校でクラス全員が同時に繋げるようなWifi環境など存在せず、結局ネットには接続できない。

一方、じゃあOLPCは全く不要なのか?と言われるとそこはわからないというのが正直なところです。本ブログの「OLPCは失敗例の見本なのか? (2010/4/12, tomonarit)」投稿にもある通り、OLPCはただのツールであり、他の要素が揃わないと成果は十分に発揮できないので、現状だけを見てOLPCは失敗と言い切ってしまうのは乱暴かもしれません。つまり、先に挙げた指摘の逆を返すと、電気があってネットがあって、そして教師が正しく教えられさえすれば、OLPCは協力な教育ツールになるポテンシャルを秘めているという言い方もできないこともないので・・・。

もしこれを読んだ皆さんが途上国の現場でOLPCがうまく使われている例をご存知でしたらぜひ教えていただきたいです。

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コメント

  1. tomonarit より:

    賛否両論のOLPCだけど、これまでバージョンアップしながら持続しているのが凄い。途中でやめたら失敗だけど、やりとおせばいずれ誰もが認める成功になるのかも。そして後から、[これぞ時代を変えたイノベーション!]と言われるのかも。結局、成功と失敗の差は、成功するまで続けられるか、なのかも。

  2. TOSHI より:

    私はOLPCは必要だった派ですが、問題がたくさんあるのも事実です。私がREBで聞いた話ではルワンダのXOにはWindowsが入ってるということだったのですが、タケダさんのブログではSugarが動いていますね。ぶっちゃけてまとめるとXO+Sugarというのは子供が自由に触ってその中でツールとしてつかいこなすのには最適化されていても、先生向けにはできていないし、教室でみんなが同じことをしながら学ぶというスタイルには適していないと思います。要するにこれは教育の現場においてITをどう捉えるか?というポリシーレベルの問題だと。それがはっきりしないのに、現場が動いてしまっているし、ポリシーレベルの問題は困惑・混乱を続けていて、一向に解決される方向に動いていない。おそらくルワンダでさえも。そういう意味ではOLPCは未だに「使い方のよくわからない」モノリスのようなものなのだと思います。

    • Kanot Kanot より:

      詳しくコメントありがとうございます。私の印象では、ポリシーレベルはしっかしてるのですが、それを現場で実現できてない、というのがルワンダの現状と感じています。このような問題が高校レベルとかでも起きていて、teacher’s trainingの重要性を痛感します。OLPCもHPを見たらタブレットなども出ていて、少しずつ進化しているのですね。

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