メルマガ解除と男女の別れ(UI/UX編)

日本

別れたがってる人にしつこく接しても、自分の評価を下げるだけ。すっぱり別れた方が今後のためには良い。

こんばんは、Kanotです。日本に帰って来て以来、メールマガジン(メルマガ)や広告メールの登録解除が面倒すぎて、いちいちイライラしています。メール配信を止めるために、メール下部にある「登録解除」をクリックすると、ログインが求められ、渋々ログインして、ようやくメール登録解除が終わったら、不要な「メルマガ解除しました」メールが送られて来ます。

これは日本では当たり前の光景ですが、世界的にも当たり前なのでしょうか?

否です。アメリカのほとんどのメルマガは、下部にある「unsubscribe」をクリックすれば、ログインを求められることもなく、すぐに登録が解除できます。もちろん「解除しました」メールなんて送られてきません。

この違いは何なのでしょう?私はこの差は文化などではなく、デザイン、特にUI/UX(User Interface/ User Experience)にしっかり投資をしたかどうかの差な気がしています。

日本のサイトで登録解除が複数ステップなのは、以下のような理由かと思います。

  • せっかくお金かけて獲得したユーザを離したくない
  • 引き止めたというエビデンスを残したい
  • これがよいデザインと思っている
  • ログイン時の他人のなりすましを防ぐ
  • 何も考えてない(昔からこのデザイン)

確かにこれらも企業の視点では一理あります。しかし、ユーザの気持ちになって考えると、メルマガ解除したい人の心理は、ほぼ以下のような感じかと思います。

メルマガを止めたいと思ってる時点で、もう受信したくないと決めているのに、「登録解除」リンクをクリックしてもログインを求めるとか、ホント面倒だ(パスワードわからない時なんかはキレそうになる)。そして、ログイン後も迷子になり、なんとか登録解除ページを探し出したとしても、追い討ちをかけるのが「解除しました」メール。こんなメール不要だよ。もう二度と登録しない!

これを男女の関係に例えるとこんな感じでしょう。

もう別れる意思は固まって電話してるのに、本人確認とか、ほんとしつこい(「合言葉が違います」なんて言われた日にはキレそうになる)。そして、なんとか説得して別れることに成功して電話を切っても、追い討ちをかけるのが「私たち別れました。認識合ってますよね?」メールが来る。こっちから言い出したんだから、わかってるっちゅうねん。二度と付き合うか!

つまり、言いたいことは、メルマガ解除したがってる人に抵抗することは、このくらいセンスのないことで、ただ企業イメージを下げるだけで何一ついいことはないと思います。

むしろ、リンクをクリックして一発でメルマガ解除できたら、「なんだ、いいやつじゃんか!」とその企業の好感度は上がると思います。今時の技術を使えば、メルマガのリンクにユーザ情報を暗号化して埋め込むなんて朝飯前で、リンク一発解除も簡単に実装できます。

つまり、本気でユーザの使い勝手と企業イメージを考えたら、こういったデザインはありえないと思います。にも関わらず、このデザインが残ってるのは、日本企業がUI/UXを軽視してる現れじゃないかと思わざるを得ません。

アメリカでは、いまUI/UXは旬の分野で、企業は多大な投資を行っています。日本の企業がこういった見えにくいところで海外の企業に置いてかれている気がして心配です。

私見に溢れた投稿である点はご容赦ください・・・。

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コメント

  1. TOSHI より:

    まさしく同感です。

    入りにくく、抜けにくいというサービス手法は以前は横行していましたが、そういうサービスがビッグになった例を私は知りません。その典型的な例がReal Networksですね。

    UX/UIについては私もとても興味がある分野で、KICで研究していたのもUX/UIが文化的コンテクストによって変化する必要があるんじゃないか?ということです。
    例えば、日本の情報系サイトの「会員になって続きを読む」という超うざったいアレは海外のサイトにはあまりない。その代わりポップアップが出るのが多い。なぜかというと日本語の文法というものが結論が一番後に来るようになっているからです。逆に欧州言語では結論が大抵最初に来る。だから「続き」を隠したところで意味がないんです。まあ、十中八九最後まで読んだところで、ものすごく面白い結論があるわけでもなく、つまらない当たり障りのない結論で終わるのが定石でそれを作ってる方がわかってるからわざと隠してあるんですけど。
    最悪なのはそれがまとめサイトとかに転載された時に「続きを読む」が文中に紛れ込んで日本語として無茶苦茶になるんですね・・・一体、コンテンツの質をここまで台無しにしてまで会員が欲しいのか?そこまでDesperateなのか??と思ってしまいます。

    Kanotさんのあげている考えられる理由の2番目がとても気になります。この「エビデンスを残す」という病・・・これって個人的には極めてWindows的なものに思えて仕方ないんです・・・ユーザーにとってそんなエビデンスどうでもいいし、むしろ残したくない。

    とにかく、Unscribeした後にストーカーされるかどうかっていうレポートも楽しみにしております。これがYESであれば重大な文化的問題かと。

    • Kanot Kanot より:

      TOSHIさん、コメントありがとうございます。
      なるほど。文化によって変わるべき、という点、面白そうですね。
      そして、TOSHIさんの「ユーザーにとってそんなエビデンスどうでもいいし、むしろ残したくない」。この点、まさにその通りだと思います。これってまさにユーザーではなく、企業の視点からサイトがデザインされている典型的な例だと思います。ですので、私からは「日本企業はUXを軽視してるのでは?このままではアメリカとかに置いてかれちゃうよ。」というメッセージを送ったわけです。
      UIは比較的見えやすいですが、UXは見えづらいだけに、気が付いた時には差が大きくついているというのを懸念しています。

  2. TOSHI より:

    いつも楽しく拝見してます。
    日本企業がUXを軽視しているという点ですが、確かにそれもあるかもしれません。私はむしろ「誤解」してるのではないかと思います。Windows的といったのはその誤解の元はWindowsのUI/UXにあるような気がするのです。例えばWindows PCにイヤフォンを差し込むと「A device is just plugged in」と出ます。これと全く同じな気がするのです。イヤフォンを差し込んだ本人はイヤフォンを差し込んだことを知ってるわけで、そんな確認はもともと不要だし、確認のためとしても、イヤフォンが差し込まれたというメッセージは出ずに(なんだかわからないけど)デバイスが差し込まれたと出る。全く意味がない。かえってユーザーを混乱させる。でも企業はその無意味かつ無価値なメッセージを送ることがUXだと思ってるフシがある。加えて横並び大好きなのでこの邪悪なUXが市場を席巻してしまう。でもUXとはもともとSemanticの世界だと私は思います。物事の「意味」をもっと考えなければいけないと。そういう意味ではSugarのインターフェイスはとてもよくできている。ただ普通のPCのインターフェイス、例えばWindowsに慣れてしまっている教師にはSugarは扱いにくいんですね・・・XOはPCだと思ってしまっているので。

    • Kanot Kanot より:

      なるほど。追加コメントありがとうございます。確かに私もiPhoneが出るまではWindowsやガラケーのインタフェースが最善と思い込んでました。
      つまり、いくらUI/UXを重視したとしても、目指す方向が最適でなければ、うまく機能しないってことですかね。イノベーティブ過ぎるとユーザはついてこれないですし、さじ加減が難しいですね。

  3. Yuji Ozaki より:

    小売的な観点からは、米国の小売では返品がドライでお気楽、日本ではやや面倒、というのに似ているような気がします。本来の「返品」は、「商品と、購買者の嗜好や都合のミスマッチの結果」なのでしょうけど、日本の小売業では「お金を媒介にして売り手が購買者に与える満足度(商品を含む)向上の失敗」、と捉えるフシが見受けられます。賃金の多寡に関わらず、売り手にコンシェルジュ化を要求してしまう日本の「おもてなし」の別の側面でしょう。

    日本での登録解除→確認の流れは「報連相」としてDNAレベルで染みついている感覚が介在しているのかな、ということで「何も考えていない」に一票。
    メルマガに関しては、広告との関わりもあるでしょう。米国ではオンライン広告をアドネットワークに出稿する際には、必ず受信者の反応を測定し、分析できる仕組みがセットになっていると聞いています(アクティブユーザー数やレスポンス重視。ターゲティング→リターゲティングの流れ)。
    日本では新聞や雑誌に広告出稿する感覚がまだ強いので、リーチの潜在分母(購読者数)重視になりがち。なもんで、購読者数を減らすような操作には、一定の障壁を作りたくなる(あるいは、最初は解除の仕組み自体が用意されておらず、あとで慌てて解除の仕組みを追加実装する)のかも。
    加えて、広告出稿主自らが反応やコストを睨みつつアドネットワークへの出稿を操作しているか、広告全体を期間と費用のシーリングをセットにして広告代理店に丸投げしているのか、も関係しているのかもしれないですね。

    • Kanot Kanot より:

      Ozakiさん、興味深いコメントありがとうございます。
      >広告全体を期間と費用のシーリングをセットにして広告代理店に丸投げしているのか
      いやぁ、さもありなんですね。これもまさにユーザではなく企業側の都合でデザインされる典型的な例ですよね。

      >「何も考えていない」に一票。
      実は私もこれだと思うんです。確かに日本のサイトはほぼ横並びで解除が面倒なので、競合企業を調べてもおそらく大差なく、ガラパゴスここに極まれり、と思います。

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