ICTという分野はあるのか?

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前回の投稿で紹介したInternational Development Youth Forumが実施した勉強会「ICT × 国際開発を考える講演会・ワークショップ」に参加してきました。前半の講演会は、アジア開発銀行で相殺首席補佐官を務める池田洋一郎氏、JICAの篠原雄之氏による話。後半は参加者でのディスカッション。色々と勉強になったので、備忘録的に。

  • ICTという分野はあるのか?

ICT4Dの話をすると、どうしても「ICTの前にBHNじゃないのか?」とか「ICT分野は民間がやるからODAでやらんでも良いだろう」という話題が出る事が多い。なので、池田氏に「公的資金をつぎ込む場合、ICT分野の優先順位はどう考えるのか?」という質問をしてみました。回答はとても明快で「ICTって分野はない」というもの。ICTはツールなので◯◯分野で何かを効率的に実施するために必要なら使うということ。以前からあるICTのメインストリーム化という観点と同じだと理解しました。じゃ、「教育分野で先生のトレーニングをした方が良いのか、それともICT教材を導入した方が良いのか?」のようにツールとして具体的に wiht or without ICT?となると判断は分野や個別案件で異なるのだろうと感じつつも、「ICTという分野はない」という点は最近Kanotとも話していた話題でもあり、ストンと落ちるものでした。

  • アジア開発銀行の高度技術信託基金(High-Level Technology Fund)

スマートシティやリモートセンシング技術などの高度なテクノロジーを途上国で活用するためのファンドが設立され、2017年5月のアジア開発銀行の第50回年次総会では日本政府が2年間で4,000万ドルを拠出するとの発言もされていたのでした。知らなかった。JICAではICT案件の比率はかなり低いですが、国際的にはSDGsに絡んだSTI (Science, Technology, and Innovation)やこういう動きもあるのだと改めてICT4D熱が高まっているかも、と感じます。

  • ICTの普及は途上国にとって良いの悪いの?

AIやIoTなどICTの普及が進むと人間の労働がICTに取って代わられてしまうとか、ICTを十分利用出来る人と出来ない人の格差が広がる…といった議論もありました(ある意味、王道の議論)。答えはないのですが、公的機関の役割としては、プラットフォームやデータの支配者による独占が起きないように法的枠組みを作ること、という話があり、まさにそうなんだよなと同感しつつも、一方で規制によって民間企業のイノベーション促進に足かせをしてしまわないか…?という懸念も。この辺りの議論は世銀のWDR2016にも書かれていましたが、独占を禁止し公正な競争を促進するとう法的枠組みをどう作って行くのはセキュリティの課題とともに、大きなテーマだと再認識しました。

  • 質問力を鍛えねば

後半のディスカッションのテーマは、「ICTの普及によって若者の失業率は高まる?我々の働き方はどう変化する?生活はどう変わる?」的なものでした(正確じゃないけど、ざっくり言うとこんな感じのテーマでした)。答えがないテーマだからこそ面白いものの、哲学的な問いにも発展する内容。池田氏からは「より具体的且つ身近なテーマの方がディスカッションし易いよ」とのコメントがあり、確かにそうだなあと感じました。自分も神戸情報大学院で講師をしているときに、ついつい漠然とした問いを学生へ投げてしまうことがあるのですが、今回自分自身が参加者となったことで、「質問力を鍛えねば…」と自戒したのでした。また、答えのない課題について、どう自分なりの答えを持っておくのか?という点も、もっとちゃんとせねば…と思いました。

他にも色々面白いICT4D事例の紹介などがJICAの篠原さんからあったり、ディスカッションではキレのある発言があったりと、得るものが沢山あったのですが、全部は書けないのでこのへんで。

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