イノベーションってなに?

こんにちは、Kanotです。イノベーションって何ですか?なんか凄い事、天才たちの所業だと思ってませんか?少なくとも私はそう思ってました。(そう思ってなかった人は続きは読まなくて大丈夫です)。今回の投稿は、日本人のイノベーションに対する誤解がイノベーションの芽をつんでいるのでは、という話です。

最近よく聞くバズワードの一つに「イノベーション」があります。国連の開発目標であるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にもイノベーションが「Industry, Innovation and Infrastructure(産業と技術革新の基盤を作ろう)」として加わるなど、国際開発業界でも注目度が上がっています。

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JICAや世界銀行などドナー界隈でもSTI(Science, Technology and Innovation)というキーワードを聞く機会が増えて来て、これまでマイノリティであったICT4Dにも、にわかに脚光が当たりつつあると感じています。

その一方で、いつも素朴な疑問として感じていたのが、「イノベーションってなんだろう?」ということです。職場で「イノベーティブなアイディア求む!」って言われても「ヒエェェ、そんな画期的な発想は凡人の俺にはできないよー。」と思うことも多く、ちょっと調べて見ました。

まずは国語辞書(Mac内蔵)で引いてみると、「イノベーション=技術革新」とあります。まずこの言葉がよくわからない。なにそれ?エジソン的なこと??そんなの僕には無理です。

次に英英辞典(Mac内蔵)。「Innovation = The action or process of innovating.」はぁ、そうですか、全く答えになってないです。

じゃあ、とinnovateを調べてみると、「make changes in something established」が最初に出て来ます。あれ、なんか随分ハードル下がったな。既にある物を変えることもイノベーションなのか

この私の誤解が確信に変わったのが、世界的イノベーション・カンパニーの1つである3Mのセミナーに参加した時です。3Mの方が、イノベーションの例として以下のようポストイットが開発された手順を説明していました(細かいところは違ってるかもしれません)。

1969年に強力な接着剤を研究していた3Mですが、うまくいかず、めっちゃ弱いノリができてしまい、失敗作としてお蔵入りしていました。そして5年後、他の研究員が「あの失敗作の弱い接着剤、ノリのついた紙として使えるんじゃ??」と閃き、それを元に開発され、1980年に大ヒットしたののが、粘着力が弱いけど貼り剥がししやすいポストイットです。

なるほど、これがイノベーションなのか。天才的なアイディアではなくとも、既存のものの見方や使い方を変えるだけで生まれる新しい発想、それも立派なイノベーションなのか、と妙に胸にストンと落ちました。

ここでやや気になったのが、日本人ってイノベーションを過大評価しているのでは?という点です。もし私と同様の誤解を多くの日本人がしていて、その中で日本人と外国人で同じ「イノベーション」という単語を使っているのだとしたら、結構危険なことだと感じます。なぜなら、ただでさえ自尊心が低い日本人、「イノベーティブなアイディア出せ」と指示されたとき、求められるのは「新しい見方・使い方」であるにも関わらず、「革新的な発想」と勘違いしていては、アイディアは出せず、イノベーションの芽を自ら摘んでしまっているのかもしれません。

私自身も、「イノベーション=革新的な発想」という考え方だけでなく、「イノベーション=既存のものの新しい見方や使い方」と理解し、自信持って「イノベーション」という言葉を使って行きたいと思います。このような誤解をしてる日本人が私だけであることを祈ります。

“イノベーションってなに?” への16件の返信

  1. 私としてはイノベーションのキモは「発想の転換」だと思います。ただ、多くの組織の中では実際に発想の転換は規則によって禁じられていることが多い訳で、そういう意味ではイノベーションは破壊を伴いますし、そのリスクを慎重に計算しないと受け入れられないものだと思います。だからオーダーとしてイノベーティブなものと出された場合は、どこまでこれらの破壊のリスクを許容するかをリクワイアメントとして示さないと何でもアリになったり、全然イノベーティブでないただのKAIZENになってしまうのだと思います。
    また「既存のもの」というのにも注意が必要で、既存の技術とかすでにある物理的なモノであれば問題はないのですが、これがエティカルなものに抵触するようなイデオロギー的なものの場合、かなり慎重さを要すると思います。

  2. TOSHIさん、コメントありがとうございます。なるほど、発想の転換ですか。KAIZENについては、実は今回の記事を書きながら、「KAIZENも広義のイノベーションの一つなのかなぁ」と感じてましたが、TOSHIさんによると全く別物として考えられているようですね。つまるところ、破壊からKAIZENまでイノベーションは広く色んな意味合いがあり、きちんと定義をしてから話をしないと、お互い大きな誤解を持ったまま話が進んでしまう可能性がありそうですね。そもそも「イノベーティブに!!」と言ってる人自身がどれだけ明確に定義できてるかも怪しいですが(笑)

  3. Kanotさん、返信ありがとうございます。KAIZENについてはイノベーションではなく「最適化」=Optimizationだと思います。違いは「破壊を伴わないこと」。だからTOYOTAのような大企業と相性がいいのだと思います。翻ってイノベーションは破壊を伴いますので、昔のAppleやTESLAのような比較的小さく、先端的で挑戦的な企業に向いているのではないかと思います。
    Postitの例だと何も破壊されていないように見えますが、実は破壊されたのは「糊は強力であるべきで剥がれちゃいけない」という「常識」です。そしてその裏で開発に完全な成功がないように完全な失敗もないのだ、という新しい考えが生まれたのではないでしょうか?それが発想の転換であり、イノベーションそのものだと思います。

    1. TOSHIさん、なるほど。破壊を伴うか、ですか。これまたハードルが高そうな響きで、自分のアイディアをイノベーションと呼ぶことに躊躇しますすね(笑)

  4. グッと俗っぽく考えた場合、イノベーションの言葉を軽く口にする人が期待しているのは、特許や実用新案につながるようなモノなのかもしれないですね。いわゆる「ちゃりんちゃりん商売」に結びつくようなコト。

    個人的には、「よい製品 = 売れた製品(市場に受け入れられた製品)」と同じく、イノベーションも「あの時歴史が動いた」っぽく事後的に評価されるものなのだろうな、と考えています。ただし、そのイノベーションの当事者が、評価される時までその分野で輝き続けるとは限らないのがポイント。Netscape, Palm, Sun, Kodak (Bayer filter), Nokia (Symbian)…などなど。

    1. Ozakiさん、そうかもしれません。だからこそ無責任に下に丸投げしやすく、タチが悪いのかもしれません。「もっとイノベーティブに考えよう」なんていうのは誰でも言えますからね。

  5. これ、とても興味深いですね。「イノベーションの定義とは?」
    自分はイノベーションを過大評価しているタイプですね。でも、この投稿を読んで確かに過大評価し過ぎていたかも…と思いました。一方、それでもなお、やはりイノベーションは「KAIZEN」とは異なるスゴイコト、というイメージがあります。

    たまたま今読んでいる(今更ながら読んでいる)「仕事は楽しいかね?」(デイル・ドーテン)に、「革新は秩序だった仕事じゃない。遊び感覚でいろいろやって、試行錯誤を繰り返すことだ」という台詞が出て来ます。この「革新は秩序だった仕事じゃない」という点でやはり「KAIZEN」とイノベーションは違うのかな、と思いました。

    また、自分のように外国から入って来たイノベーションをいう言葉を天才の所業だと過大評価している日本人と、イノベーションを母国語としている欧米人で、果たして定義が違うのか?という点も興味があります。
    「仕事は楽しいかね?」という本は、いけてない35歳サラリーマンが老人(←企業トップがアドバイスをほしがるほどの高名な実業家)から含蓄ある講義を受けるような話。「凄い事を成し遂げたい」と考えているサラリーマンに対し、老人は、「必要は発明の母かもしれない。だけど偶然は発明の父なんだ。」とウンチクを述べるシーンが出て来ます。「凄い事」は偶然の産物である、という例として、コカコーラは製薬会社が薬として作ったシロップを従業員が美味しがって試飲してたのをソーダで割ったものだったとか、チョコチップクッキーはチョコレートクッキー(茶色いやつ)を作ろうとしたけどチョコが解けなくて偶然チョコチップクッキーが出来たものだとか、いくつか出て来ます。
    このシーンから思うのは、欧米人でもやっぱりイノベーションを結構凄い事(やろうと思ってもそうそう出来ることじゃない)と考えている人が多いんじゃないか?ということ。気になってちょっとググってみると、以下を見つけました。
    (以下、マイナビhttps://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/37848からの転記)

    “また「イノベーションのジレンマ(Innovator’s Dilemma)」で有名なハーバード大学のクリステンセン教授は、シュンペーターのようなイノベーションを「破壊的イノベーション(Disruptive Innovation)」と呼び、現在の延長上にある改善を「持続的イノベーション」と呼んで区別しています。破壊的イノベーションとは、従来製品や技術の価値を破壊する可能性のある、まったく新しい価値を生み出すことです。”
    (シュンペーターのようなイノベーションの例としては「駅馬車から汽車への変化」)

    これを読むと、シュンペーターはTOSHIさん的な解釈でクリステンセンはKANOT的な解釈なのかなぁと感じました。やはり欧米人でも色々な捉え方をしているようで、ともて面白いですね。

    どっちの定義にしても、イノベーションを生み出すには「遊び感覚でいろいろやって、試行錯誤を繰り返すこと」を許容したり、社員にのびのびやらせる企業文化が大切という点は変わらないと思います。その意味でKANOTのいうように、イノベーションという言葉に構え過ぎないという点は重要だと思いました。

    1. コメントありがとうございます。これらを読んで、今回の議論の一つの問題は「技術革新」という訳のせいな気がしてきました。そもそもイノベーションに技術は必ずしも必要じゃないですし、「革」という字は革命を連想させるので、「革新=革命的に新しいもの」という解釈になってしまうかと思います。このイメージに合致するのはiPhoneクラスですよね。
      つまり、日本で(定義の説明なく)イノベーションの議論をしてしまうと、勝手に非技術的な要素は排除され、持続的イノベーションも排除され、結果イノベーションの芽を摘んでしまうのではと感じます。

    2. さすが、わが師・・・
      ところで、この「遊ぶ」ってことを少し掘り下げてみたいのですが、イノベーション的な文脈での遊びっていいうのは多分、「コントロールされ、規定された範囲で許容されたラディカル(=破壊)」なのではないか?と思います。イノベーションにとってこういった遊びが必要だと言われているわけですが、KAIZENの文脈ではこういった「遊び」は多分「悪」以外の何ものでもないのでは?KAIZENもある程度の遊びは許容しているでしょうが、それは人間の精神衛生上最小限度のものがかろうじて許されているにすぎませんし、それも強いては生産性を上げる目的で必要だから許容されるのだと思います。つまりKAIZENは透徹したエティックに統制されていて、一切のラディカルは許されないはずだと。
      そう考えても、イノベーションとKAIZENは別物だし、むしろ相入れないものだという気がします。

  6. 興味深かったので、初めてですがコメントさせていただきます。
    改めて辞書でイノベーションを調べたとのことで、そう言えば英英辞典に遡っていなかったなと私も目から鱗でした。
    make change the something “established” この”established” をどこまで堅牢に確立された制度や仕組みと捉えるかによってハードルが変わる響きがあります。
    なお、オックスフォード現代英英辞典では、to introduce new things or ideas, or way of doing something とあります。破壊しなくても継続しなくても、新しい体験がそこにあればいいのでしょう。
    そしてそれは、社会にとっての新しい体験であった場合に”イノベーション”が起きたと評価されることが日本語の感覚だろうと思いますが、これは個人体験や、個別企業、果ては一国においても何をもって新しい体験、新しいアイディアと接触したと感じるかは歴史的・文化的背景によって違うのだろうと思います。そう考えると、必ずしも技術に関連した用語ではない気がします。
    日本語の翻訳文化の限界がイノベーションという語彙にも潜んでいるとつくづく感じてしまいます。Personal Computer を電子計算機と訳すこととは逆の意味でです。
    個人的な体験ですが、スマホって何?という問いに私はまだ答えられないままです。

    1. tomekonさん、コメントありがとうございます。ここ10年の最大のイノベーションはiPhoneだと個人的には思ってますが、その発表プレゼンで、Steve JobsはBlackberryとかのキーボードがついた携帯をスマートフォンと呼んでいました。当時はパソコンぽい使い方ができる携帯がスマホだったようです。iPhoneもスマホを超えたものであったはずが、気がついたらスマホの代表になってます。言葉って生き物ですよね。

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