インフォデミックと情報リテラシー

保健医療
Source: https://www.un.org/en/un-coronavirus-communications-team/un-tackling-%E2%80%98infodemic%E2%80%99-misinformation-and-cybercrime-covid-19

ども、Tomonaritです。娘の小学校開始が延期になり、どうやって自宅学習をやらせれば良いのか悩んでいます。

しかしそんな悩みよりかも、途上国の影響は深刻で、UNDPの発表によると、新型コロナの影響で途上国の収入の損失は2,200億USD以上、アフリカでは全雇用のほぼ半分が失われる可能性がある・・・とのこと。

さて昨日、うちの妻(エチオピア人です)が言いました。

「新型コロナウィルスは中国が作ったものだ!ケシカラン!💢」

おいおい、それは単なるデマでしょうよ・・・。と思い、情報の出どころを聞いてみると、なんと日本人ノーベル賞(医学・生理学賞)受賞者である京都大学特別教授の本庶佑氏がそう発言している、と言う。

んなアホな・・・。「デマでしょ?」と言うと妻はお友達から送られてきたLINEメッセージ(どっかのニュースのコピペ+本庶佑氏のWikipedia)を私に見せつつ食い下がる。

「これ見てよー、こんなことまで言っているわよ!」と以下の部分を指先す。

「もし私が今日言っていることが今、もしくは私の死後に誤りであることが判明したら、(日本)政府は私のノーベル賞を取り下げることができます。しかし中国は嘘をついており、この真実はいつか皆さんに明らかにされるでしょう」(←実際、妻が見ているのは英語です)

全くどのお友達が送って来たのやら・・・と思いつつも、
ちょっとだけ自分も「まさか本当・・・」と言う気持ちも少し出てきて、
ググってみました。

やはりデマでした。

「新型コロナは中国で人為的に製造された」とノーベル賞の本庶教授が語ったとする虚偽情報がインドで拡散


情報リテラシーの重要性は昔から認識しているものの、改めて怖いものだと感じました。かつてはデジタル・ディバイドと言えばネットに接続出来る人と出来ない人の格差でしたが、今は問題の質が変わってきていると実感。インターネットからの情報収集によってメリットを享受するには以下のような段階があって、だんだん下の問題の方が深刻化してくるのかと思います。

・そもそもネット環境がない(圏外)
→ネット環境あるけど接続出来ない(接続料金払えない。デバイス持ってない)
→接続出来るけど情報が取れない(文字が読めない。検索スキルがない)
→情報は取れるが正・誤が判断出来ない
→正しい情報を取れるメリットがない(情報に基づいた行動が取れない。行動したけど期待した結果が得られない)
→正しい情報に基づき行動した結果、期待したメリットを得られる

言語の問題は、かなり多くのフォントが出来たこと(エチオピアのアムハラ語も随分前に出来ました)や動画配信が当たり前になったことで、かなり解消されているだけに、その次の「情報は取れるが正・誤が判断出来ない」と言う問題が深刻になってくると思います。情報の多くは、ニュースサイトなどから得るよりも、SNSやメッセンジャーから得ることが多そうですし。


WHO国連も「インフォデミック」に対する警告を出していますし、日本のメディアでもトイレットペーパー買い占めなどに絡めて、インフォデミックについて取り上げられています。(冒頭の画像は国連のサイトから拝借しています)

先日紹介した新型コロナ対策ハッカソンで提案されたアイデアの中にも、webで出回っている情報の信憑性を調べるサービスがありましたが、同様の取り組みはすでにいくつか実施されています。例えば、英国のDFIDの取り組みが「国際開発ジャーナル5月号」に掲載されていました。

DFIDは、新型コロナウイルスの「ファイクニュース」への対策として、災害や感染病発生時にもこれらの対応経験を持つ人道支援団体「Humanitarian-to-Humanitarian (H2H) Network」へ50万ポンドを援助すると発表した。WHOは、東南アジアやアフリカを中心に拡散している誤情報について、感染被害拡大の危険がある「インフォデミック」として警告している。そこでH2HネットワークはBBCや各国のヘルスケア専門のインフルエンサーと協力して、特にフェイクニュースへの感度の高い若年層へ働きかける。さらに多言語で情報を精査する「国境なき翻訳者」や疫病の研究データベースを更新している英国のNGO「エビデンス・エイド」も支援していく。

Source: 国際開発ジャーナル2020年5月号 p45より

また、日本でも「特定非営利活動法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」と言う団体が新型コロナウイルス情報に関するファクトチェック国際プロジェクトを行っています(日本財団やSmartNewsなどが支援しているようです)。


しかし気になるのは、私の妻のような人たちは、そもそも「これフェイクニュース?」と疑って、情報の信憑性をチェックするサイトを見たりはしないと言う点。私自身もそうですがどうしても「信じたいものを信じてしまう」ので、なかなか難しい問題です。日本でもトイレットペーパー買い占めが起きるのだから。でも、新型コロナを機に、世界的に情報リテラシーが向上されることを期待したいです(自戒も込めて)。

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コメント

  1. Ozaki Yuji より:

    今回のコロナウイルス関連では、確実な情報源とされているWHOでも事務局長の情報発信がアレなことになっていたり、厚生労働省が初期情報をまともに扱えていなかったり、マスコミも(政府批判を意図したり、特定の医療関係者・特定の組織の見解を唯一真実のように引用したりして)妙な解釈で情報を流布させているところもあるので、一体何を信じればいいのやら、ですね。
    ※事務局長発言以外のWHOのコンテンツは割とマトモに見えるのですが…。

    tomonaritさんの奥様が受け取った情報を生み出した・流通させた手間と、tomonaritさんがそれをフェイクと断ずるための手間の量を比べてみると…どうでしょう(笑)。個々のフェイクニュースを判定しつづける手間を考えると頭飛びそうです。
    ====================
    “The amount of energy necessary to refute bullshit is an order of magnitude bigger than produce it.”
    — Bullshit asymmetry principal —
    「でたらめに反論するのに必要なエネルギー量は、でたらめを生み出すよりも桁違いに大きい」
    — でたらめ非対称の法則
    https://twitter.com/krelnik/status/472046082135162881
    ====================

    一種の例題なのですが、以下の2020年4月2日付の朝日新聞の記事『布マスクは有効? WHOは「どんな状況でも勧めない」』について考えてみました。Yahoo!など多くの媒体に転載されて話題になったキャッチーな記事です。
    https://www.asahi.com/articles/ASN424D52N42ULBJ003.html

    記事タイトルは、WHO医療関係者向けアドバイザリーの「Mask Management」の項にある、最後の一文「Cloth (e.g. cotton or gauze) masks are not recommended under any circumstances.」を引用したと思われます(記事には引用元についての記載なし)。医療関係者向けのアドバイザリーをなぜ一般向けに解釈しようとしたのか?
    https://www.who.int/publications-detail/advice-on-the-use-of-masks-the-community-during-home-care-and-in-health-care-settings-in-the-context-of-the-novel-coronavirus-(2019-ncov)-outbreak

    この記事は、最初の段落にある『安倍晋三首相が….全世帯に2枚ずつ配る方針を表明した。布マスクの効用をめぐっては、専門家の間でも懐疑的な見方が多い。』から始まり、以降はすべて発言引用の体裁をとって「布マスクの使用は適切ではない」というメッセージを繰り返し記述し、最後に『「他人にうつさないという目的を考えれば、『つけない』という選択肢はない」』という一見して解釈が面倒そうな一文が加えられています。
    かなり無理矢理に両論併記の形式をとっているのでしょうけど、これを読んで信じた人はどのような行動を取るのでしょうね。布マスクはダメだとなって、市販の不織布マスクを買うためにドラッグストアに並ぶのでしょうか。
    情報発信側は、タイトルで釣ってページビューが稼げてオッケー、なのかもしれません。そういう「情報流通や情報商材ビジネスの仕組み」まで勘定に入れるのが「情報リテラシー」ならば、異常に敷居が高いですね。

    • tomonarit より:

      Ozakiさん
      とても示唆にとんだコメントをありがとうございます!「でたらめ非対称の法則」、そのとおりですよね。また、「自分が信じたい情報を信じてしまう」ということに加えて、情報発信側が「注目を浴びそうな情報を流す」という問題もあると言う点は、情報リテラシー向上の課題ですね(逆にだからこそ、情報リテラシーを向上させねば・・・と言う危機感につながるかも?)。

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