こんにちは、Kanotです。今日はパリ五輪の柔道団体をケーススタディとして「デジタルの限界」について考えてみました。
パリ五輪の柔道団体戦決勝の抽選
2024年8月4日にパリオリンピックの柔道団体をテレビで見ていました。決勝戦は日本対フランス。男女合わせて6戦行われ、どちらかが4勝したら試合終了。勝ち星が3対3になった場合は、7戦目を既存の6つの対戦の中から抽選で選び、そこで再試合をし、決着をつける方式です。
物議を醸したのは、3対3で並んだ後の代表戦の選び方です。私もテレビで見ていましたが、素人目に見て6戦の中で一番日仏の実力差があると感じた組み合わせが90kg超級でした。フランスは柔道界のレジェンドで百戦錬磨のリネール。これが選ばれるときついな、と感じていた中での抽選でした。
さて、注目の抽選ですが、下の画像のようなものでルーレットが回っていき、どこかで止まるという形の、バラエティ番組などでよくあるスクリーン上のデジタル抽選でした。「マジか。アナログじゃないのかよ」と思ったのを覚えています。
そして抽選の結果選ばれたのが、フランスとしては最高の、日本としてはなかなか厳しいと思われた90kg超級でした。
当然ですが、英雄の再登場に会場の雰囲気も最高潮に。そして見事フランスが勝利し、金メダル。
同時に日本から見ると「ちゃんと抽選やったのかよ。出来レースじゃないのかよ」と批判を浴びることに。
デジタル抽選の正当性の保証とジレンマ
今回の私の記事では、これがヤラセであったかどうかと言う話はしません。両選手とも一生懸命戦っていて誤審などもなかったいい試合だったと思います。
この記事で書いてみたいのは、デジタル抽選の正当性の保証とジレンマについてです。
まず、これまでの標準であり現在も多くの場所で使われているアナログの抽選ですが、これは古代から不正が度々起きています。カイジなどを読んでもわかりますが、重要な勝負になればなるほど、両者はあの手この手で自分に有利になるように操作しようとします。ルーレットも同様で、カジノではプロのディーラーは目を操作できると言いますよね。
そこで登場したのがデジタル抽選です。デジタル技術、特にランダム関数などを活用すれば、機械の計算により極めて高い精度の平等な抽選を行うことが技術的に可能です。今回の柔道の抽選も当然この方式でやっていたはずです。
つまり、「アナログ抽選は不正が起きやすいのでデジタル抽選に進化した」という一見正しい方向で進んでいるはずなのに、今回、なぜこのような物議を醸してしまったのでしょうか。理由を2つ考えてみました。
物議の理由その1
理由の1つ目は、デジタル抽選では不正がないことを証明するのが極めて困難なためと考えられます。
まぁ確かにあの画面上のルーレットを見て「これ本当に平等なのか?」と疑問を抱くのは当然と思いますし、私も見ていてあまりにシンプルな構造に「これじゃ不正してもバレないじゃん」と思いました。
裏で動いているコードは完全にブラックボックス(外からは見えない)ですし、仮にソースコードを公開したところで、そのコードが使われたことの証明も難しい。さらに仮にコードを見せながら一行ずつ実行していったとしても、rand関数をローカル定義して・・などいくらでもコード上の不正はできてしまいます。
アナログだと抽選時の動画や画像を検証したり等々で何かしらの対応が可能ですが、デジタルだと検証が全く不可能なので、疑惑を呼んでしまうのだと思います。
物議の理由その2
理由の2つ目は、視聴者と主催者の間に信頼関係がなかったからだと考えられます。
結局はアナログにせよデジタルにせよ本質は同じで、信頼関係に全て収束するのかもしれないとも感じました。今回の五輪の柔道は、ネット上では誤審の話が何度も出ており、そうした不信感が積もり積もった結果がこれだったため、抽選不正を疑う人が多くなってしまったと言うことかと思います。
これはとても本質的な問題で、いくら技術が改良していっても、信頼関係がないと成立しないというデジタル開発のジレンマを感じます。
まとめ
今回のケースは個人的に非常に興味深く、これはデジタル技術の限界なのかもしれないなとも思いました。結局いくらコード上で人間の意思が入らないように設計したとして、結局信頼関係がないと技術活用は成り立たない(むしろ不信感を増大させる)というジレンマを感じました。信頼は技術では乗り越えられないということです。
今回のケースではおそらく不正はなかったんだと思います。そして不正をなくすためにアナログからデジタルに変えたはずなのに、それが故に不正を疑われてしまうという皮肉というかジレンマを感じるとともに、デジタル技術の限界も垣間見える1日でした。
いずれにせよ、全7戦、いずれも手に汗握る好ゲームでした。優勝したフランス、準優勝した日本、どちらもおめでとうございます!
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