最近読んだICT4D論文レビュー (2025.2.9)

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こんにちは、Kanotです。読んだ論文を、少しでもアウトプットに繋げることで記憶に残すためにブログするという、超個人的Annotated Bibliographyです。2025年2月に読んだ論文3本紹介します。

Poverty and Migration in the Digital Age: Experiental Evidence on Mobile Banking in Bangladesh

著者・出版年:Jean N. Lee et al. (2021)

ジャーナル:American Economic Journal: Applied Economics(American Economic Association)

Poverty and Migration in the Digital Age: Experimental Evidence on Mobile Banking in Bangladesh - American Economic Association
Poverty and Migration in the Digital Age: Experimental Evidence on Mobile Banking in Bangladesh by Jean N. Lee, Jonathan...

概要:首都に出稼ぎに行くバングラデシュ地方在住者に対してモバイル送金をの研修を行なった際の経済効果をRCTで測定。結果としては、出稼ぎ前にbKash(バングラデシュのモバイル送金サービス)の研修をしたところ、研修なしの人と比べて家への送金額が26%増えた。受け取り側の消費も7.5%向上した。貧困率も下がった。一方、研修を受けた出稼ぎ労働者の労働時間は増え、精神面の健康は低下した。

メモ:留意点としては、モバイルマネーが普及する前のバングラデシュのデータ取得であり、モバイルマネーが一般的となった今に応用できる話ではないかもしれない。また、モバイルマネーの研修がなぜ労働時間の増加に繋がるのかと読んでみたところ、モバイルリテラシー向上による労働機会の増加や柔軟な金融サービスへのアクセスにつながり、それが労働時間増加に繋がるとのこと。そしてモバイルマネー研修と送金額の関係については、送金コストの低下や労働機会の増加から送金額が増えたのではとのこと。ITが進んで繋がりやすくなると、家族からのプレッシャーなど強まってしまうのだろうか・・。

補足:APUの山形辰史教授の著作「入門 開発経済学-グローバルな貧困削減と途上国が起こすイノベーション」の中で引用されていたので、気になって読んでみました。

Connecting the unconnected? Social ties and ICT adoption among smallholder farmers in developing countries

著者・出版年:Linda Kleemann and Finn Ole Semrau (2025)

ジャーナル:Technological Forecasting and Social Change (Elsevier)

ScienceDirect

概要:12か国の農家に対するpanelデータ(時系列な観察データ)でsocial tieとテクノロジー活用の関連性を分析。社会的に繋がっていない人は、テクノロジーの利用も低い。テクノロジー活用のwinnerは、すでにsicial tieを強く持っていて、すでに情報にアクセスできる人たちである。

メモ:Kentaro ToyamaのAmplification theoryのストーリーと似ている。農家のICT活用のためにテクノロジーを活用させて情報を取れるように・・というのはうまくいかず、まずはsocial tieをしっかり作るinterventionが重要で、それとセットで初めて効果が生まれてくる。コミュニティ形成のintervetnionが重要となる。

The role of mobile broadband in poverty alleviation: a comparison of the effects of 3G and 4G network expansion in underdeveloped regions of Indonesia

著者・出版年:Kasmad Ariansyah et al., (2024)

ジャーナル:Information Technology for Development (Taylor & Francis)

Just a moment...

概要:インドネシアでmobile broadbandの普及率と貧困の関係をsupply side(従来は住民に対する機器保有などの調査が多かった)での調査。結果、3Gカバレージが1%増えると0.019%貧困率が下がり、0.011ポイントpoverty gapが下がる。4Gについても同様だが、3Gほどの影響はなかった。ネットワークを増やすことを提言している。ネットワークが増えることで、雇用機会、トレンザクションコストの低下、生産性の向上などが見込めるため。

メモ:2本目の論文とは異なる主張で、こちらはインフラの普及が貧困率の削減に貢献するとしている。面白いのは機器の保有率といった個人向け調査ではなく、地域のmobile broadband普及率というインフラ視点で区分けしているところ。2本目との違いをあえて解釈するなら、通信インフラ普及は地域単位と思われるので、social tieの観点やコミュニティの観点はcontrolされていると考えると筋が通る。

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