こんにちは、Kanotです。2025年にアメリカにトランプ政権が誕生してから、関税を使った駆け引きが行われています。その中で使われる言葉の一つに「報復」という言葉があり、その言葉が与える心理的影響が気になっています。
例えば「報復関税」などは最近すっかりおなじみになってしまいました。意味としては、例えば、アメリカが一方的に追加関税を宣言した際に、相手国が逆にかける関税のことを指します。例えば、以下のようなニュースです。

私はこの報復関税という言葉に含まれる「報復」という言葉のニュアンスが気になっていました。敵意に満ち溢れた言葉なのか、ただの逆関税くらいの軽いニュアンスなのか・・。ということで、以下の通り調べてみましたので、共有したいと思います。
まず、貿易絡みで使われる言葉と思われるので、日本の税関のHPを見たところ、報復関税の説明がありました。
報復関税制度とは、
(1) WTO協定に基づいてわが国の利益を守り、その目的を達成するため必要があると認められる場合
(2)ある国が、わが国の船舶、航空機、輸出貨物又は通過貨物に対して差別的に不利益な取扱いをしている場合
などに、指定された貨物の課税価格と同額(従価換算税率100%)以下で割増関税を課す制度であり、関税定率法(第6条)に定められています。
Source: 税関(https://www.customs.go.jp/tokusyu/houhuku_gai.htm)
言及されている関税定率法(第6条)も確認したところ「その貨物の課税価格と同額以下の関税を課することができる」など書かれており、まぁ「不当な関税には、その同額以下の関税をかけ返す権利がある」くらいのそこまで敵意ある言葉ではなく、一般的な貿易用語のようです。
一方、この言葉を毎日のようにニュースで見るアメリカ国民や関税をかけられる側の国民の意識はどうなのでしょうか?
まず、日本語で「報復」を調べてみると以下のような定義になっています。
報復
・仕返しをすること。
・国際関係で、他国の不当な行為に対し、仕返しとして同様の行為を行うこと。
仕返し
・ひどい目にあわされた相手に報復をすること。復讐。
Source: Mac搭載辞書
まぁ敵意ある形でしか使わない言葉ですね。二番目の定義は今回の報復関税に近そうです。復讐の類義語としても出てきます。少なくとも友人やビジネスパートナーに使う言葉ではないと感じます。この言葉を聞くと、敵対関係を想像してしまいますね。
では、英語ではどうなのでしょうか?報復関税は「Retaliatory Tariff」と呼ぶようです。このうち「報復」は「Retaliatory」が該当します。
Retaliatory
(of an action) characterized by a desire for revenge (例:fears of a retaliatory attack by the victim’s friends.)
Source:Mac標準搭載の辞書
日本語に訳すなら「復讐を目的とした行動(例:被害者の仲間による仕返しを恐れる声が上がった)」といった感じでしょうか。Revengeという言葉が出てくるので、それも英英辞典で調べてみると、
Revenge
The action of hurting or harming someone in return for an injury or wrong suffered at their hands.
(訳:誰かから受けた傷害や不正に対して、その報復として相手を傷つけたり害を与えたりする行為。)
Source:Mac標準搭載の辞書
ともっと直接的で攻撃的な言葉で書かれています。
つまり、「報復」という言葉は、貿易用語として比較的ニュートラルな言葉として使われている一方、国民として受け取る言葉としては非常に強く、敵意に溢れた言葉になっていると感じます。これまで私が聞いてきた記憶を辿っても、戦争絡みでしか聞かなかった気がします。
私が懸念するのは、こういった言葉が一般的に使われてしまうことで、国と国の関係性が「交渉のパートナー」といったものではなく「敵対関係」であるという風に徐々にマインドセットが変わってしまい、相互嫌悪に繋がってしまうのではないかということです。
このことは、戦争などに向かう世論形成に一定の影響を与えると思いますし、本当に恐ろしいことだと感じます・・。
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