南太平洋に広がる衛星を使った遠隔教育の環

フィジーに南太平洋大学という大学があるのをご存じだろうか。

南太平洋にはフィジーをはじめ、ツバル、トンガ、サモアなど小さな島国が沢山ある。
それらの国は人口数万人~数十万人ということもあり、独自に高等教育機関は持てていない国が多い。
そこで、周辺国12か国がお金を出し合って1968年に設立したのが南太平洋大学である。
その南太平洋大学に、JICAはオーストラリア・ニュージーランドと共に援助を行ってきており、フィジーの本校での授業を、衛星を経由して加盟12か国の首都にあるキャンパスに送り、遠隔で講義を受講できるようになっている。
人口も少ない島国にとって、遠隔とはいえ大学教育を留学せずに受けられる唯一の手段として、まさにICT4E(教育へのICT活用)の典型である。

やや専門的な話になるが、現在は講義の送受信にはC-bandという帯域を使って衛星通信を行っている。
この帯域は、通信は比較的安定しているのだが、4m級のパラボラアンテナが必要になり、輸送、費用ともに大変である。
そこで現在JICAでは、Ku-bandという帯域を使った衛星通信設備を供与し、それを使える人材を育成するというプロジェクトを実施している。
Ku-bandに帯域を変えることで何が変わるかというと、受信のパラボナが2m弱の物でも受信可能になり、一台20万円程度で買えるようになる。

すると何が起こるかというと、現在首都でしか受信できていなかった講義が、離島などで受講できるようになり、利便性が非常に高まるというものである。
また、衛星経由でインターネットも受信できるため、様々な応用が考えられる。

アジアやアフリカと違い、海と海とで隔てられた大洋州では、費用対効果からも光ファイバーの敷設は望めない。
仮に首都に光ファイバーが来たとしても、そこから国の予算で無数にある離島に光ファイバーを引くことなど不可能である。
そういった環境においては、衛星技術を用いた遠隔教育やインターネット接続、この可能性ははかりしれない。
情報通信の利点を最大限生かしたものであり、情報通信でなければできないことである。

まさにICT4D冥利に尽きるプロジェクトであり、 この衛星技術が今後どのように応用されていくのか楽しみである。

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コメント

  1. ハヤカワ より:

    度々コメント失礼します。今回は宣伝です。USPNet、PEACESATそれからTongasatの事にも触れた本が出ました。使用している写真はJICA提供です。印税(1冊売れると30円弱貰えるらしい。)は東北復興に寄付させていただきます。
    http://blog.canpan.info/yashinomi/archive/570
    ITC4Dの歴史的背景も簡単にまとめてみました〜。
    http://blog.canpan.info/yashinomi/archive/591

    • tomonarit より:

      ハヤカワさん
      遅ればせながら、情報共有どうもありがとうございました。
      ICT4Dの歴史についてのブログ、読ませて頂きました。自分は沖縄憲章くらいからしか知らないので、それ以前の歴史は知らないことばかりでした。もっと勉強せねば・・・・。
      また、色々と情報共有お願いします!

  2. ハヤカワ より:

    こちらこそお世話になります。英文で詳細を書いたものがあります。博論の一部ですが、必要であれば御送りします。
    Wikieducatorの無料オンラインワークショップの案内がありました。著作権、CCに関する内容です。http://blog.canpan.info/yashinomi/archive/613

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