海外PhDに興味を持ったら最初にするべきこと

アカデミック

こんにちは、Kanot(狩野)です。私はアメリカにあるUniversity of Michiganという大学の博士課程(PhD課程)に在籍し、開発途上国のDigital Skill Developmentを研究しています。これまでたびたび海外PhDに関する相談受けることがあり、色々と経験談をお伝えしているのですが、ネット上に情報が多くないこともあり、まとめてみました。まずは導入編として、「海外PhDに興味を持ったら最初にするべきこと」を書いてみたいと思います。ご参考になれば幸いです。(写真は私の所属するSchool of Informationです。)

ちなみに、私自身の経験としては、アメリカ(ミシガン大学)、コンピュータ・社会科学分野、社会人経験あり、家族連れ留学、ということで、この4つのいずれかに偏った情報になってます(というか、それ以外はよくわからない)ので、そこはご了承ください。

1. 行きたい国のPhD課程の仕組みを知る

以下はアメリカのPhD課程の特徴です。

期間は5−7年。PhD Student期(2年)とPhD Candidate期(3−5年)に分かれる

大学や専攻によってまちまちなのですが、アメリカでは博士号取得まで通常5年はかかると見ておくのが無難だと思います。その内訳としては、最初の2年はインプット中心で、PhD Studentとして授業を履修したり研究するケースが多いです。そして、その後にQualified ExamとかPrelimとか呼ばれる試験に合格すると、はれてPhD候補生(PhD Candidate)となり、後半戦はアウトプット中心とした論文書きや講師補助、長期フィールド調査に出たりと、博士論文に向けて研究を進めることになります。

ちなみに、前半はインプット中心、後半はアウトプット中心、と書きましたが、私の専攻の場合は、一年目から研究をすることになっていて、アウトプットも一定程度求められていました。この辺りの時間配分は大学・専攻によって大きく変わると思います。(例えば経済学は最初の2年はひたすらインプット。人類学などは後半の研究で年単位のフィールド研究が一般的、など。)

研究の基礎から学ぶことができる

博士課程というと「いやいや、そんなん無理です。研究したことないですもん。」と思われるかもしれませんが、実はアメリカのPhD課程の応募要件に修士号は入っていません。つまり、そこまで研究経験は問われないケースも多いです(欧州や日本は違うと聞いています)。多くのアメリカ大学では、関連分野の理論に関する授業や、研究手法に関する授業などが組み込まれていて、それらの授業を取りながら、研究のイロハから学ぶことになると思います。ですので、研究経験がないからといって応募を諦める必要はありません。(ただし、これから作ることを「2. 実績・経験を積む」でオススメしています。)

PhDの学生は、大学に雇用される(ことが多い)

ご存じない方が多いのですが、実はアメリカのメジャーな大学の博士課程では、実はお金がかかりません。むしろ給料がもらえるケースも多いです(おそらく欧州も??)。アメリカのPhD生は、学生ではあるものの、大学スタッフとしてResearch AssistantやTeaching Assistantをすることが必須となっているケースが多く、その労働対価として、授業料免除(年間500万円くらい?)そしてStipendと呼ばれる給料($2,000〜$3,000/月程度?)や健康保険費用(これは大学による?)が支給され、学業・研究に集中できる環境が整っています。これを単純に足し算すると、PhD生というのは年収800万円くらいで大学に雇われながら学生・研究活動をしているとも言えます。

この点は、授業料を払うケースが多い(と聞いている)日本と大きく違うところですよね。とはいえ、学位取得までの期間が5〜7年と長いので、これで自腹で払ったら数千万円かかってしまうので、このような待遇にしないといい学生が集まらないのだと思います。

ただ、このようにPhD生の費用は大学が負担する仕組みになっているため、日本で奨学金などを取っていたら、大学の費用負担が下がるので、選考で有利になるかもしれません。

2. 実績・経験を積む

上記を読んで興味を持った場合、次に取るべきアクションについて書いてみます。

海外の学会に参加してみる

もし海外PhDに興味を持ったとしても、「アカデミアの生活は肌に合うのだろうか」と不安になりますよね。社会人経験が長かったため、私もそうでした。なので、まず最初にしたらよいと思うのが、学会参加です。できれば海外の国際学会ですが、国内の学会から始めるのも手です。理由はシンプルで、人脈ができるのと、アカデミアの雰囲気がわかるからです。

学会の探し方ですが、Googleなどで研究したい分野のキーワードと「international conference」などを合わせて検索すれば、複数見つかるかと思います。私の場合は、博士過程に応募する約2年前に南アフリカで行われた国際学会に参加し、研究者という仕事のイメージが深まるとともに、いろんな研究者と知り合い、研究発表を聞くなど、とても刺激的であったのを覚えています。今の指導教官ともこの時に初めて会いましたので、あの時思い切って参加していなかったら、今の自分はないと言い切れます

学会に参加する場合は、いち参加者として参加するのもよいですが、もし可能であれば、何かしら発表することを目指すのが良いと思います。この「何かしら発表する」ということがなぜ重要か、そして実はそこまでハードル高くない理由は次項で書きます。

研究実績を作る

アメリカのPhD課程に入るのに修士号は必須でないと書きましたが、研究実績など「私は研究者になる素質があるのです!」というアピールをすることは選考でも不利に働くことはないはずなので、何かしら研究実績を作っておくことをオススメしています。特に英語力で不利なことが多い日本人は尚更でしょうか。

研究実績としては、簡単な順から、日本で発表 < 日本で論文 = 海外で発表 < 海外で論文、というイメージです。現職の研究職や修士課程生なら「海外で論文」を目指して欲しいですが、現在社会人の方などは、なんとか「海外で発表」を目指して欲しいと思います。

だいたいの学会では、フルペーパーと呼ばれるガチ研究部門と、Short PaperやNote、Posterなどと呼ばれる、未完了の研究や実務家でも応募可能な部門を持っていることが多いです。こういった部門であれば、実は採択のハードルはそれほど高くないと思います。私の場合は、業務関連の内容で守秘義務に触れない程度に実務ネタで4ページほどのものを出したところ、幸運にもポスター発表させてもらえることになり、色々な人と話をするいいきっかけになりました。

こういった動きをいつから始めるべきか、ということについては、学会に出すネタを考えて、情報集めて,書いて、参加して・・等々で軽く1年はかかるので、「いつかPhD行けたらいいな」とぼんやり考えている今がこれをするべき時です。応募準備を始めてから研究実績を仕込むのでは間に合いません。

最終的にPhDに進学しなかったとしても、海外の学会に出してみるというのは、とてもいい経験になると思いますので、ぜひ今、最初の一歩(まずは学会探し)を踏み出していただけたらと思います。

3. 海外PhDのイメージがわかない方へ

海外でのPhD生活をおもしろおかしく描いた漫画・映画として、PhD Comic、PhD Movieがあります(原作者は同じです)。これを読む、または見てみると、実際の学生生活のイメージが湧くかと思います。数年間経験した後にこれをみると、ほんとにあるあるネタが多くて、めちゃくちゃ面白いです。

PHD Comics: The PHD Movies - Free during the Coronavirus Crisis
Link to Piled Higher and Deeper

4. 次回予告

また近いうちに、PhDシリーズとして、「してはいけないこと編」「出願準備編」「生活編」などを書いてみようと思います(と予告して書かないケースも多々あり・・・)。

(後日追記)「してはいけないこと編」書きました!

5. 関連記事・ページ

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PhDに関する記事

まずは私が書いたPhD関連の記事を紹介します。

最後にもう一つ。こちらは私の記事ではないですが、一緒にミシガンで頑張っているクニさんのHPで、こちらでは文系PhDについての情報が書かれています。

アメリカ文系PhDについて
現在、日本からアメリカへの留学というのは、おそらくほとんどが企業や官庁に派遣されて、ビジネススクールやロースクール、公共政策などの専門職大学院に1〜2年ほど在籍する人、もしくは日本の大学に職を得てサバティカルで来る人が大部分かと思います。私は留学前に留学予備校に二つ行き、アメリカで三つの大学に所属しましたが、文系でドク...

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