英語論文での「発言・主張」に関する動詞・名詞の使い分け

アカデミック

まず最初にお伝えしますが、本稿は、日常会話やTOEICでは同義語と考えて全く問題ないレベルの単語をニュアンス比較するとてもマニアックな内容で、留学中の方や英語論文を書く必要がある方向けに書いています。

さて、みなさん、英語で文章を書く(特にアカデミック・ライティング)際に、発言を意味するsay, tell, mention、または主張するを意味するassert, claim, insistなどの使い分けで迷ったことはありませんか?

英語で論文を書くときに、参考文献や引用などで人の主張や発言を取り上げることが多いのですが、「X氏の研究はYYと主張した」などの場合にassertやclaimなどをテキトーに使っていたら、指導教官に「類義語でもそれぞれニュアンスが違うのだから、もっとバラエティを増やして的確に使いなさい」と指導を受けたので、論文等のアカデミックライティングで見覚えのある類義語をいくつか調べてみました。以下で紹介する辞書の説明は英和辞典・英英辞典ともにMac内蔵の辞書から引用したものです。

先に結論ですが、やっぱりニュアンスを調べたい時は、英英辞典ですね!

発言・言及の動詞

say

英和辞典:言う、話す、口に出す

英英辞典:utter words so as to convey information, an opinion, a feeling or intention, or an instruction

コメント:sayは意思を持たせずに客観的に発言だけ取り上げたいときに使える動詞という印象です。また、似たような単語でtellもありますが、「sayは人の発言をそのまま伝えることに重点があるが、tellは伝える内容だけでなく伝える相手を意識する言葉」(英和辞典)とのこと。なので特定の相手に向けた発言でなく、ただ発言を取り上げたいのであれば、tellよりはsayの方がよいということになりそうです。また、あまり論文ではtellは使わない印象です。論文でsayと似たような意味で使われる言葉としてはwriteがあります。

report

英和辞典:報告する、伝える

英英辞典:give a spoken or written account of something that one has observed, heard, or investigated

コメント:sayより相手に伝えることを意識した動詞で、tellよりはフォーマルなもの、という印象でしょうか。「X氏は調査結果YYだったと報告している」などはreportですかね。

mention

英和辞典:(人・物・事)に軽くふれる、挙げる、言及する(refer to)、述べる。

英英辞典:refer to something briefly and without going into detail

コメント:中学校では「述べる」と習った記憶があり、フォーマルな印象がありましたが、英英辞典を見ると、「簡潔に・浅く」といったニュアンスが強いようです。なので、詳しい説明ではなく軽く言った、ような際に使われるようです。似たような単語としては、noteがあるとのこと。また、回数を数えるときはmentionが使われます(eg. He mentioned the word ten times.)。

discuss

英和辞典:話し合う、議論する、詳述する。

英英辞典:talk about (something) with another person or group of people

コメント:英英辞典が意外だったのですが、discussは「talk about something」という意外にも弱い表現の動詞のようです。これは日本語の「話し合う」に近いニュアンスで、「議論する」に近い英単語はdiscussではなく、debateのようです。

また、argueとの比較として「discussは結論に到達するために冷静に議論する事、argueは証拠に基づいて自分の意見を主張する事」(英和辞典)との記載もありました。つまり、意見と言うよりは主張を紹介するものという客観的なニュアンスになると思われ、この投稿の中でも、意見・主張カテゴリではなく発言カテゴリに入れました。よく使う使い方としては、自分の議論の紹介のような形で、「As we discussed in chapter 5, …」のような形ですかね。

<参考>論文の「考察」の章は英語だと「discussion」と言います。

find

英和辞典:見つける、発見する

英英辞典:discover or perceive by chance or unexpectedly

コメント:他人の論文でのFindingsやResultを引用する場合などは、findも使えます。また、グラフなどから読み取れることを紹介する動詞としても使われるという印象です。グラフだとshowもよくみます。

意見・主張の動詞

assert

英和辞典:断言する、強く主張する

英英辞典:state a fact or belief confidently and forcefully

コメント:私が多用しすぎて指摘された単語です・・。参考文献として他人の研究を紹介する時によく使います。比較的ニュートラルな主張のニュアンスで使われる動詞です。

claim

英和辞典:主張する、断言する

英英辞典:state or assert that something is the case, typically without providing evidence or proof

コメント:まず、英語の「claim」には日本語の「クレームする」のような文句を言うニュアンスは含まれません。日本語の「クレームする」に近いのはcomplainですかね。また、英和の内容を見る限りでは、主張・断言を意味するassertと同じに見えますが、英英を見ると、「typically without providing evidence or proof」とあります。つまり、assertよりは弱いタイプの主張(言っている本人も確信を持たずに言っている)のようです。

insist

英和辞典:・・だと(しつこく)主張する、言い張る、強調する

和英辞典:demand something forcefully, not accepting refusal

コメント:なるほど、英英の「not accepting refusal」とは、これは非常に強い表現ですね。英英辞典を比較する限りでは、強い順にinsist > assert > claimのようです。つまり、assertが「これはXXな理由でYYである!」だとしたらclaimは「これはYYなんじゃないかと思う」、そしてinsistは「絶対にYY!異論は認めない!」というニュアンスの差がありそうです。

argue

英和辞典:論争する、(反対・賛成の)主張をする

英英辞典:(1) give reasons or cite evidence in support of an idea, action, or theory, typically with the aim of persuading others to share one’s view
(2) exchange or express diverging or opposite views, typically in a heated or angry way

コメント:英和を見る限りだとassertなどに近そうですが、英英を見ると、説得・賛成・反論などのニュアンスが含まれていそうです。つまり、ただ自分の意見を主張する時というよりは、他人の意見と比較して、とか相手がいる場合の主張に使うのに適した動詞のようです。「Xはこう言っているが、私はこう考えている。」みたいな表現に適した動詞ですかね。

articulate

英和辞典:(人が)考えをはっきり述べられる

英英辞典:express (an idea or feeling) fluently and coherently

コメント:主張と発言の間くらいのニュアンスですが、既に明確になっていることを述べる際に使えるようです。英英辞典で「fluently and coherently」となってるくらいなので、過去の有名な理論を参照する場合などに使えそうな表現です。
例:XXX articulated a taxoomy of needs that…

提案の動詞

suggest

英和辞典:提案する、持ちかける、(研究・証拠を)暗示(示唆)する

英英辞典:put forward for consideration

コメント:アカデミックな文章で「suggest」を使う場合、3つめの「暗示(示唆)する」で使われることが多い気がします。自分の主張を書く場合でも、「XXはYYを示唆していると考えられる」みたいな時に、suggestを使います。

propose

英和辞典:提案する、提唱する、(理論・説明などを)提案する

英英辞典:put forward for consideration or discussion by others

コメント:ふむ、英英では「by others」がついてますね。つまり、proposeは誰かに対して提案するニュアンスですかね。他のサイトでも調べてみたら、proposeはsuggestよりフォーマルであり、何か実際にある手順を提言するような感じ、一方のsuggestは「アイディア思いついたー」のようなニュアンスを持つようです。

前に仮説を提案する文章を書いた時に、proposeに直された記憶があるのですが、仮説を提示するというのは、結果から示唆されるというより、新しいアイディアを提案するというニュアンスに近いため、proposeが適しているということだったんだと思います。

補足:上には書きませんでしたが、日本語と同じく、結婚を申し込むという意味もあります(笑)

議論・提案に関する名詞

議論・提案の際に使う名詞として、discussion, argument, claimなどについて比較してみました。(後日追記のため、手抜きで英英辞典だけ使ってます。)動詞とやはり似ていて、claimは弱い、argumentは感情的のニュアンスが含まれるようです。ideaは思いつき、statementは言い切りですね。

  • discussion: the action or process of talking about something in order to reach a decision or to exchange ideas; a detailed treatment of a particular topic in speech or writing
    決定または意見交換のための行動・プロセスで、特定のトピックの詳細な論述
  • argument: an exchange of diverging or opposite views, typically a heated or angry one
    時に感情的にもなる意見の違いに関する議論
  • claim: an assertion of the truth of something, typically one that is disputed or in doubt
    (明確な根拠はないが)主張する議論
  • statement: a definite or clear expression of something in speech or writing
    何かに関して明確に「これだ」と定義すること
  • idea: a thought or suggestion as to a possible course of action
    あり得る選択肢として提案すること

感想

いやぁ、自分で言うのもなんですが、とても勉強になり、色々とスッキリしました。いつも「連続しなきゃいいや」くらいの感覚でassertとclaimとinsistを使い分けていたのですが、ニュアンスの違いを知ることができたのは大きいですね。今後も、時々眺めたいと思います。

他にも英語ネタだとこちらもあります。よろしかったらご覧ください。

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