ついつい言い切り方になってしまう英語表現のせいで、あなたも知らないうちに差別主義者だと思われているかもしれません。
こんにちは、Kanot(狩野)です。私の滞在するアメリカでは、ジョージフロイド事件以降、人種差別に非常にセンシティブになっており、言葉の使い方ひとつ間違えるだけで大問題に発展しかねない状況になっています。
そんな中、私が国際学会で「ルワンダ国のICT政策」についてのインタビューをまとめた研究結果を、英語でプレゼンする機会があったのですが、そのリハーサルで指導教官から助言があった点について、読者の皆様にも参考になる点があるかと思い、ちょっとアカデミック・イングリッシュ寄りの話になりますが、シェアしたいと思います。
特にノンネイティブとして人前で英語で話をする機会のある方、いらぬ誤解を避けるためにご参考になれば嬉しいです。
Overgeneralization(過剰な一般化)に気をつけろ
Overgeneralizationとは、一部の意見なりコメントを、あたかも一般的な情報のように扱う(誇張してしまう)ことです。Over (過剰) にGeneralization (一般化) をしてしまうという意味です。
例えば、私のインタビュー結果で、多くの回答者が「ルワンダには失敗を恐れる起業家が多い」といったことを答えていました。これを私が「ルワンダ人は失敗を恐れる起業家が多い」と言い切ってしまうことが、Overgeneralizationになります。インタビューの回答者(人口のごくごくわずか)がそう答えたのを、あたかもルワンダ人全体の話のように一般化しているからです。
バングラデシュ人ってXXXだよね。アフリカの人ってXXXだよね。といった表現は典型的なOvergeneralizationになりかねない表現であり、racist(人種差別主義者)、essentialist(例外を認めない人たち)、stereotyping(型にはめたがる人)と思われてしまう可能性があると思います。(ついつい使っちゃってる気がするなぁ・・・)
英語の例だと”Rwandans are like this” or “Rwandans are like that,”といった表現はOvergeneralizationになる可能性があり、たとえポジティブな内容であっても、避けた方がいいそうです。
ノンネイティブによる英語の難しさ
「そんな表現しないよー」と思ったそこのあなた、これが英語での発表や質疑応答になると、急に難易度が上がります。当たり前ですが、ノンネイティブの人は、つい直接的な表現になりがちです。例えば、天気が良いことを伝えたい時に、日本語だったら「今日はぽかぽかしてなんとも気持ちのいい日ですね」と言えるものが、英語だと「It is fine today.」と、とてもシンプルな表現になってしまうことがあると思います。
つまり、「Overgeneralizationしちゃいかん」と頭では分かっていても、口からは「We found that Rwandan entrepreneurs were afraid to fail (ルワンダ人は失敗を恐れる起業家が多い)」と思わず言ってしまいかねません。
こう言った発言を「ノンネイティブだからしょうがないね」と分かってくれる人もいるでしょうが、こういった言い切りは、聞く人によっては、racist(人種差別主義者)、essentialist(例外を認めない人たち)、stereotyping(型にはめたがる人)と思われてしまう可能性があるとのことです。
特に文化や国に対するOvergeneralizationは、宗教、人種などとも結びついてくるので気をつける必要があります。日本人の感覚に比べて、この辺りは外国はセンシティブなので、要注意です。
誤解を生まない言い方
では、どのような言い方にすれば誤解を避けられるのでしょうか。例えば、先ほどの、多くの回答者が「ルワンダには失敗を恐れる起業家が多い」と答えた、という例であれば、「インタビュー参加者の大半が、ルワンダには失敗を恐れる起業家が多い、と言っていた」という言い方であれば、インタビュー結果の事実を伝えてるに過ぎないので、特に問題ではないわけです。
つまり、こういう違いになります。
- NG: ルワンダ人は失敗を恐れる起業家が多い(Overgeneralization)
- OK: インタビュー参加者の大半が「ルワンダには失敗を恐れる起業家が多い」と言っていた(事実の伝達)
- OK: これまでのところ、ルワンダ人起業家に優勢な考え方として、失敗を恐れる傾向があるようである。(言いきりにしないように解釈を伝えている)
これらを英語だとどのように言えばいいのでしょうか。誤解を避けるためのTipsとして、以下の2つを記載しておきます。
事実を伝えること
シンプルな方法としては、事実を伝えることです。例えば、以下のような表現であれば、事実を伝えているだけなので、問題にはなりません。
"Our participants claim that Rwandan IT workers are like this...” (参加者がルワンダのIT人材はXXだと主張していた)
言い切りをせずに解釈を伝える
調査や研究などでは、事実に基づき、解釈を伝える必要がある場合もあると思います。その場合は、「for now(いまのところは)」「dominant(優勢だった)」「appear(と思われる)」などの一般化を避ける言葉を使うことで、Overgeneralizationを避けることができます。例えば、以下のような言い方です。
"For now, the dominant start-up culture in Rwanda appears to be like that...” (今のところ、ルワンダのスタートアップ文化として優勢なのは、XXXのようである。)
上記のような言い方であれば、「for now」で時間を限定し、「dominant」で客観的データを示し、「appears」で言い切りをしない。こういったことにより、言いきりにならず、誤解は生みにくいと考えられます。他にも、seem、might、may be、inferなども使える単語ですね。
理想と現実
と、このような助言を受けて臨んだ学会発表、さきほど終わったのですが、プレゼン・Q&Aで失言しないように神経使い過ぎて、いまは頭痛がしています・・・。自分で書いといてあれですが、あまり神経質になるのも問題ですね。
ただ、こういう言い方、これまで結構してきた気がするなぁ、とも思うので、まだまだ訓練が必要だなと思ってます。
文章は推敲できるのでいいですが、口語は瞬発力も問われるので、難しいですねー。
その他英語ネタだと、こちらもあります。よろしかったらご覧ください。
コメント
面白い話題ですね。まずはインタビューの質問の作り方にも気をつける必要がありますね。「恐れる」というのは意味としてネガティブな表現ですので、例えば「失敗に対してセンシティブである」と言い換えれば、ネガティブさは消えます。さらに単に恐れるというだけでなくその理由を加えてやったほうがいいと思います。例えば「起業が不発に終わった際の社会的なセーフティネットが整備されていないため、失敗に対してセンシティブになる」と書けば、同じ事実であっても、意味が全然変わってきます。「失敗を恐れる傾向にある」というのが一番よくない点はその原因を対象「人物」の性格とかキャラクター的な部分に委ねてしまっているところではないでしょうか?そうした上で「ルワンダ人」というグループに拡大投影して(この拡大投影する「理由」もかなり根拠が薄弱・・)断じているのだから、これはもう「ひどい」ということになってしまいます。実際、ヘイトスピーチというのは大抵このような「構造」で作り出されているので、このようなディスコースは避けるべきだと思います。
[…] レイシスト(人種差別主義者)と誤解されないための英語表現ついつい言い切り方になってしまう英語表現のせいで、あなたも知らないうちに差別主義者だと思われているかもしれませ […]
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コメントありがとうございます。おっしゃるとおり、言葉のチョイスも重要ですね。そして、その理由が制度なのか、経済的制約なのか、それこそ国民性なのか、ここの深掘りも重要という点も同意です。