ども、Tomonaritです。正月にふと成田悠輔氏にハマりRE:HAKCKとかの動画を見てました。で、その最初のきっかけになったのが以下のプレゼンです。聞いていてとても面白い。EBPM(Evidence Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)についてなんですが、25分間、興味をもったまま聞き続けられる。
さて、どうしてこのブログでこの動画を紹介したのか?
というと、この話で出てくる公的組織(政府)と民間企業の対比が非常に端的で的を得ており、「おー、今度、これらの例をDesign-Reality Gapsの例として授業で使おう!」と思ったからです。
Design-Reality Gapsって?
一旦、成田氏の動画の話はおいておいて、そもそも「Design-Reality Gapsってなんぞや?」というと、ICT4Dプロジェクトが失敗におわる要因の一つは、「プロジェクト立案時・立案者が認識しているもの(=デザイン)と現実(リアリティ)にギャップがあるから」というRichard Heeks教授の主張を一言で表したものです。詳しくは、「デジタル技術と国際開発」を読んで欲しいですが英語だとこちらの文献が良いかも。そして以下のカテゴリーでそれぞれ「こんなギャップありますよね?」ということを説明しています。
Hard-Soft Gaps
合理的な考え方とか意思決定(Hard-thinking)と非合理的なそれ(Soft-thinking)のギャップ。こういわれてもピンとこないと思いますが、例えば、「なけなしのお金はタバコを買うより子供の養育費に充てるべき」ってのは「Hard-thinking」ですが、現実的には、「タバコすいて〜」ってタバコやらお酒やらにお金を使ってしまう親はいるとおもいます。これが「Soft-thinking」。このギャップです。このブログで2013年に投稿したウガンダのm-healthプロジェクトの例が面白いので時間あったら見てみて下さい。
Organization-Personal Gaps
組織の利益とか考え方と個人のそれのギャップ。このブログで紹介しているバングラデシュの公共バス用ICカード導入プロジェクトの話のなかで、「ああ、これが組織と個人のギャップか〜」という分かりやすい例が出てきます。
North-South Gaps (Country Gaps)
先進国と途上国のギャップ。先進国のソリューションをそのまま途上国にもってきてもハマらないよね…というもの。インフラもITリテラシーも全然違うんだから、そりゃそうですよね。
Public-Private Gaps
公的組織(政府)と民間企業における考え方や仕事の仕方、評価方法などのギャップ。これがまさに上記の成田氏の動画を見て、「ああ!コレコレ!」と思ったものです。
Public-Private Gapsの例
上記動画の15分20秒あたりから、民間企業のWebビジネスと公共政策領域の比較の話が始まります。そして、比較の軸を「速度」と「規模」とセットしています。このあたりの説明の仕方がうまいなぁ。
中国やアメリカのWebビジネスは、何十億というユーザーのデータをリアルタイムでとって、それに基づき迅速な判断・アクションがとれる。一方、公共政策領域は人口の多い国でも数億人のデータをせいぜい月単位とか年単位とかで構造化されたデータとして取れるのみで、それに基づいた政策を立案・意思決定したとしても、実施するまでのタイムラグが大きすぎて、実行しようとしたときには時代が変わってしまっている・・・的な説明をされています。
そして、次に20分25秒あたりから、「やる気と興味とインセンティブの壁」という話が出てきます。Webビジネスは成果指標が明確(ユーザー数が増えるとか売上が伸びるとか)であり、その成果指標達成に役立つエビデンスがあるなら誰でもそれにしゃぶりつきたい。他方、公共政策分野は重要な問題になればなるほど成果指標が曖昧、且つ、それを達成できたら給料アップとか昇格ってわけでもないので、行政官や政治家にとってそれがどれだけ重要な意味を持つのか?と考えると、そんなにエビデンスに食いつくモチベーションがない・・・的な説明がなされています。
私はこれまで、Public-Private Gapsの例示として、意思決定速度、評価指標の違い、保守的か革新的か、ということをピックアップしていましたが、上記の成田氏のプレゼンの話はとても具体的でわかりやすく、「今度からこの話をパクろう」と思いました(笑)
特にICT4Dの話題ではないですが、「Webビジネスがやっていることを、そのまま公共政策分野に持ってこようとしても無理っすよ!」と言っているようなこの動画は、Design-Reality Gapsの「Public-Private Gpas」を理解するのにほんとに適していると思います。そして、兎に角面白いのでオススメです!
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