こんにちは、Kanot(狩野)です。実は最近、僕の所属する金沢工業大学のSDGs推進センターとタカラトミーが共同で「Beyond SDGs 人生ゲーム」を開発し、教育機関に無償配布することになりました。
SDGs教育といった趣旨にご賛同いただき、配布を希望する教育機関の方はこちらのリンクをご覧ください。(一般発売はしないようです。これを読んで興味を持っていただいた教育機関外のみなさま、すみませんm(_ _)m )
さて、こんなブログをやっているので、皆さんご存知だと思いますが、僕はテクノロジーが好きな人間です。教育関連のツールも研究対象に入れていますが、主にEdTechにこだわってやってきました。
ところが、この人生ゲームは完全にアナログなものです。この矛盾についてなのですが、実は最近はアナログな良さも見直していて、これはこれでポテンシャルのある学習ツールだなと感じている今日この頃です。
例えば、金沢工業大学のSDGs推進センターではゲーミフィケーション(ゲームを通じた教育)教材として、以下のようなカードゲームが開発され、オンラインで無料でダウンロードしたり購入したりできるようになっています。
ということで、ここからは、私がなぜ最近アナログの教材を見直しつつあるのかについて書いていきたいと思います。(大学の公式見解などでは全くない、僕の私見ですので、あしからず。)
理由その1:パッと見で楽しそう
まずはとても直感的なものですが、人生ゲームにしろ、上記リンクにあるようなカードゲームにしろ、見た瞬間「あぁ、なんか楽しそう」「なんか懐かしい」「やってみたい」と思えませんか?
このハードルの低さや、見ただけでなんかワクワクする感覚などは、アナログなゲーミフィケーション教材の良さなんだろうなと感じています。
理由その2:コミュニケーションが生まれる
次の理由は、知識を得るという観点ではなく、コミュニケーションを活性化するのに効果的という点です。オンラインで繋がれるアプリとは異なり、カードゲームやボードゲームは、周囲の生徒たちと2〜5人くらいでやる必要があります。
そうすると、クラスの中で自然と会話が生まれる(というか会話しないとゲームが進められない)ことに加えて、正解・不正解がないために、あまり恥ずかしがらずに発言できるといった効果もあると感じています。
実際に小中学校でこれらの教材を使用したケースについて聞いた際には、こういったカードゲームなどになると、普段あまりしゃべらない生徒がすごく積極的に発言するようになって驚くことがある、などの効果について触れていました。
人生ゲームの体験会を開催した時も、お互い知らない大人たちがワイワイやっているのを見て、このコミュニケーション発生パワーは凄まじいなとも感じました。
理由その3:開発にITスキルが要らない
次はユーザという視点ではなく、作る側という視点でのメリットです。
ここまでで取り上げたゲーミフィケーション教材の大半は、学生のアイディアがベースに製品化されてきたものです。こういったゲーム教材を開発しようとした際に、最近だとやはりスマホアプリなどを作りたがる学生が多いのではと思います。
アプリ教材を作るというのはもちろん大事なのですが、そうすると開発のざっと40〜60%くらいは、設計やコーディングといった技術的な開発に力を注ぐ必要があり、どうしてもゲームの内容自体に費やせる時間は限られてしまいます。
一方、カードゲームの場合だと、学生が「アイディアを出す → それをPPTやWordなどでカードの素案を作ってみる → 印刷してみる → 遊んでみる → 修正する」というように、アイディア出しからプロトタイプを作って試してみるというプロセスを、ITスキル抜きで非常に簡単に進めることができます。
さらに、技術的な要素がほとんどないため(デザイン的な要素はあります)、開発に費やす時間の大半をゲームの設計自体に充てることができます。
理由その4:電気・デバイス・インターネットがいらない
最後は、日本ではなく開発途上国という文脈でのメリットです。
開発途上国における教育改善を目指した仕掛けをしていくにあたって、大きくネックになってくるものは、電気・デバイス・インターネットです。この3つが揃わないことには最新のEdTechの恩恵を受けることは難しいです。
しかし、この人生ゲームやカードゲームであれば、電気がなてくも学習に使えます。(逆に、現物がないと使えないわけですが・・。)これは、電気やネットが不安定な地域、デバイスが行き届いていない地域などで安定した教育を行うのには非常にアドバンテージになると思います。
・・・と色々とアナログの良さに光を当ててみました。なんとも変にデジタルにこだわって自分がやってきた気がするな・・・、実はアナログなものにもまだまだ良さが残されているんだな・・、と原点回帰したような今日この頃でした。
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