[Week 1-2] IT and Global Development 講座メモ

アカデミック
この記事はいったいなに??

ミシガン大学で受講中の「Information Technology and Global Development」にて、毎週課題図書が8本あり、うち4本について簡単なコメント(Reading Response)をつけるという宿題があります。備忘録と興味ある方への参考になるかと思い、ここに読後メモを共有しています。私のただの感想なので、誤解等ある可能性がありますのであしからず。

1-1: Development Studies Surface Scratching

Jeffery Sachs. The End of Poverty.

Jeffrey Sachs, The End of Poverty: Economic Possibilities for Our Time (Penguin Books: New York, 2006), pp 226-287

開発援助をポジティブに捉える著者の主張。開発途上国の人たちは、自分自身で問題意識も持っていて、意欲もあり、対応策もわかっている。例えば、農家の人たちに肥料の重要性を聞いても正しい理解と答えが返ってくる。マラリア対策の蚊帳についても同様である。しかし、問題はそれを買うお金がないことである。なので、国際社会ができることは、グローバルネットワークを構成し、資金を集め、それを必要な人たちに投資することである。

国際開発を勉強すると、よく開発援助賛成論者としてジェフリー・サックス、開発援助反対論者としてウィリアム・イースタリーが挙げられるので、興味ある人は両者の書籍を読んでみると良い。

Rostow, W.W. -“Marx was a city boy or, why Communism may fail”

Rostow, W.W. -“Marx was a city boy or, why Communism may fail” Harper’s Magazine, Feb 1955, Pg 25-30

経済発展段階説を組み立てたロストウによる共産主義批判。マルクスは工業において労働者たちが働き続けることによって持続可能な社会が訪れるという仮説を持って進めてきたが、それを農業に適応しようとしたことは失敗であった。大きな違いは、小作農たちはただ与えられた農地を耕すだけでは満足しないという点である。小作農たちも自分たちの土地を持ち、改良し、効率的に農作物を育てるという欲を持っていると著者は主張する。つまり、人々は成長したいという願望を持っていて、それをないがしろにする共産主義は成り立たないと主張している。

1-2: Technology and Society: Thinking about Technology

Burrell, J., Fourcade, M. (2021) The Society of Algorithms.

Burrell, J., Fourcade, M. (2021) The Society of Algorithms. Annual Review of Sociolology 47:23.1–23.25

これまで多くの記事で、人間の仕事がAIによって置き変わっていくという主張がなされてきた。この論文では、人間 vs AIという対立にフォーカスするのではなく、人間の中にも新しい階層として、Coding Eliteと呼ばれるアルゴリズムや社会システムを作っていく権威階層と、Cybertariansと呼ばれるCoding Eliteが作ったアルゴリズムを正しく動かせるための作業を行う労働者階級を産むことになると主張している。

テクノロジーは人間の豊かさを全体的には底上げしていると信じたいが、結局こういった労働格差、haveとhave-notのdigita divideなどは縮まるどころか拡大しているのが現状だと考えられる。より人間が便利になるために技術開発しているにもかかわらず、それが格差を生んでいることに矛盾を感じる。

LaFrance, A. (2020) Facebook Is a Doomsday Machine.

LaFrance, A. (2020) Facebook Is a Doomsday Machine. The Atlantic

この記事では、Facebookがどのように人々の意思決定や情報収集に影響を与えているかについて論じたものである。著者は、その危険性をDoomsday Machineに例えている。その危険性とは、アルゴリズムが非公開で自律的であること、そしてFacebook側でいかようにも情報をコントロールできることなどが挙げられている。つまり、Facebookは、誤情報を排除するという大義名分のもと、Facebookの意図した方向に世論を誘導することができてしまうことへの懸念が示されている。

気になる疑問は、Facebook Zeroのような活動の真の動機が、internet for allといったsocial goodを目的にしているのか、情報の支配なのかという点である。もし彼らが善意を持ってプロジェクトを進めた結果、Myanmarのクーデーターや少数民族弾圧ような悲劇が起きているのであれば、Facebook自信が社会インパクトをコントロールできないということを示唆しており、危険性は非常に高いといえよう。 

2-1: Development: Development and Dependence

Sen, A. (1999). Development as Freedom.

Amartya Sen, Development as Freedom (Anchor Books: New York, 1999), Introduction

「開発とは人間が享受できる本当の意味での自由が拡大していく過程において確認することができる。」著者は、これまでの自由が特定の開発の定義によって評価されてきたと主張する。例えば、GNPや収入は、いくつかある開発指標の一つの指標に過ぎず、それだけで自由を評価することはできない。例えば、ナミビアはスリランカよりGNPは高いが、平均寿命はスリランカの方が長い。また、自由の指標は相互に関連している。例えば、経済的に不自由である場合、社会的な自由なども制限される場合が多い。著者は開発にとっての自由を定義する要素として、政治的自由、経済的施設、社会的機会、透明性の保証、そして安全を挙げている。

つい経済開発の中心には、経済的な指標(GNPなど)に注目しがちであるが、それとも関連しうる他の指標にも正しく注目することで、本当の開発を理解することができるというのは説得力があると感じる。

Pon, B. (2016). Winners & Losers in the Global App Economy.

Pon, B. (2016) Winners & Losers in the Global App Economy. Caribou Digital Publishing.

現在のグローバルApp経済は急速に広がりを見せている。こういったインターネットという世界共通のプラットフォームによるApp経済のグローバル化は世界各国、そして世界各国のエンジニアにとって、より機会を広げるプラットフォームになったのだろうか?このレポートによると、残念ながら大きな格差がグローバルApp経済にも存在している。それは既存の経済格差と同様に、少数の先進国が大半のマーケットを独占し、大半の開発者も先進国に滞在している。そして、シリコンサバンナのように期待されている新しいマーケットのインパクトは依然として非常に小さい。発展途上国はグローバル経済に輸出していくことのハードルが高く、国内産業を小さいため苦労している。

所感としては、こういった一見平等に見えるインターネットであるが、デジタルデバイドが存在すること、ルールメイキングを先進国主導で行われることなどから、既得権益者が利益を得続け、格差が縮まる方向に進まないのは残念なことである。

2-2: Development: Resource and Curses

Hochschild and Bleasdale, M. (2010). Blood and Treasure.

Hochschild, and Bleasdale, M. “Blood and Treasure: Why one of the world’s richest countries is also one of its poorest” Mother Jones March/April 2010 Pg 53-65

DRC(コンゴ民主共和国)が世界で最も豊富な資源を有する国なのに、なぜ世界で最も貧しいのか、という疑問についての歴史を紐解きながら論じた論文。著者はそれを「資源の呪い」と呼んでいるが、資源に伴う政府上層部の腐敗や内戦などに加え、歴史も大きな影響を与え続けている。金の採掘は植民地時代に欧州からきた人たちが現地人を奴隷のように強制労働させることによって行われていた。その結果、利益の大半はヨーロッパに流れていた。独立後も地元に資源の利益は流れず、海外や腐敗した政府・政府などにお金が流れている。

本論文を読んでの疑問は、こういった流れは、同様の歴史を持つ近隣諸国でも同様なのだろうか?例えばボツワナなどはGNI per capitaも高く、教育・医療は無料と聞く。もし異なるならそれはなぜなのだろうか?

The Fund for Peace. (2021). Fragile State Index

The Fund For Peace (2021) Fragile State Index

まず、このFragile States Index (FSI)のHeat Mapを見た第一印象は、FSI、Human Development Index、そしてGNI per capitaのランキングには非常に強い類似性があると感じた。いずれの指標においても欧米は上位にランクインし、サブサハラアフリカは下位にランクインしている。このことは、国としてサステイナブルであることと経済成長していること、そして人材が育っていることに相関があることを示していると推測される。これらは、政治的自由・経済的設備、社会機会・透明性・安全性というFreedomの柱が相互補完的な関係にあるというSenの主張と通じるものがあると考えられる。

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