こんにちは、Kanotです。出張で泊まっていた高田馬場駅で、懐かしくほろ苦い記憶の看板を見つけました。これを見て当時の記憶がフラッシュバックしたので、大学時代に借金を背負った失敗談をここに書きます。(注:ICT4Dとは全く関係ない記事ですのであしからず。)
今考えても本当に愚かなツッコミどころ満載の大学生の失敗談ですが、似たような被害者を出さないためにも書き記しておきます。
要約編と、記憶の棚卸しも兼ねた詳細編、の二段階構成にしてますので、お好きな方をお読みください。
要約編
大学1〜2年生の頃、バンド練習帰りの渋谷で、一つ年上の綺麗なお姉さんから「CD制作のサークルがあり、一緒にやりませんか?」と声をかけられ、そのままズブズブと自己啓発セミナーにハマりました。
洗脳から覚めるまでに背負った借金約30万円はこの学生ローン会社(名前は隠してます)で借りました。連帯保証人はその声をかけてきた女性でした。
手法は新興宗教やマルチと似てて、まずはセミナーで洗脳し、次に知人を連れて行く(布教する)フェーズがあり、僕は知人紹介の直前で目が覚めたので、周りに迷惑をかけなかったのだけが救いでした。
貧乏一人暮らしには30万は大金で、返すのに3年くらいかかったのですが、人は簡単に洗脳されることや、洗脳された時の高揚感や感覚も実体験できたという意味で、高い授業料だったけど、すごく勉強になった体験です。酒も薬もなしにあれだけハイになりボロボロ泣き、自分は変わったと感じたのは後にも先にもあのセミナーだけでした。
色んな人の連帯保証人になってたであろう僕を連れて行った女性は無事に抜けれたのだろうか、などしみじみと青春の苦味を感じる東京の朝でした。
とりあえず読んでくれた人へのアドバイスは、興味本位では新興宗教やマルチには近づかないことに尽きます。心理学を駆使すれば、人は簡単に洗脳されます。そして一度洗脳されると本人はそれに気づけません。そして抜けさせないように「信頼」「友情」をもとに揺さぶってくるので、一度入ってしまうと、抜けるのは大変です。
詳細編
自己啓発セミナーでの洗脳
2000年前後で大学1〜2年生だった頃、バンド練習帰りの渋谷で、一つ年上の綺麗なお姉さんから「CD制作のサークルがあり、一緒にやりませんか?」と声をかけられました。女性に声をかけられたことなどない私は、まんまと引っ掛かり、そのまま道玄坂のフレッシュネスバーガーで話を聞き、サークル主催の無料セミナーがあると言われて勧誘され、そこからズブズブと自己啓発セミナーにハマりました。
2時間程度の無料の導入セミナーの後、初級セミナーの勧誘がありました。初級セミナーは日帰りで、7万円の参加費が必要でした。一人暮らしの貧乏学生にとっては高額すぎて無理だと断ったのですが、周りの学生たちがあまりに「すごくいい」と勧めるので、渋々参加することに。ただ、当時の自分にはお金は全くなく、その女性に連れられたのが学生ローンのオフィスでした。彼女が連帯保証人となり、7万円を借り、日帰りの初級セミナーに参加しました。
このセミナーの内容は覚えてないのですが、社員の人がすごくいいこと言うなと思ったことと、目をキラキラした魅力的な学生たち(今思うと洗脳済みの信者)が運営を支えていたことは覚えています。
初級セミナーの終了後、「もっと感動できる」「自分を変えられる」と二泊三日の中級コース(22万円くらい)を勧められます。高額なので当然断ったのですが、周りの目がキラキラした先輩方に憧れる感覚も芽生えていて、またもや学生ローンで追加の借金をしました。連帯保証人は前回同様、紹介してくれた女性でした。(この時点でこの女性は赤の他人である私の借金30万円の連帯保証人になっています。)
二泊三日の中級セミナーには30人くらい参加してたのですが、5人くらいのチームに分けられ、それぞれニックネームをつけて、三日間寝食を共にします。セミナーではチームメンバーをお互いニックネームで呼び合っていたので、今でも彼らの本名は知りません。みんなどうしてるのかなぁ・・。
セミナーでは色々なアクティビティがありました。過去の振り返りやいいとこ探しのような緩いところから始まり、徐々に激しめの活動になっていきます。中盤からは、仲間を本気で罵る、仲間を本気で褒める、仲間を本気で応援する、といった感情の抑揚を刺激する活動をしていきます。
活動の大半は忘れてしまいましたが、覚えているものの一つは雑巾絞りです。まず、自分で濡れた雑巾を、水が出なくなるまで絞ります。その後、仲間が全力で「いけー」「お前ならできるー!」と本気で応援(多分皆さんの想像する200%以上の本気応援)してくれる中で絞ると、まだまだ水が出るんです。それで「仲間の力ってすごい」と感動したのを覚えています。
そして最後のイベントでは、確か遭難しそうな船かなんかの設定で、チームのみんなで生き残るために協力しあい、無事に生還したときにはボロボロ涙を流してお互いを讃えあった記憶があります(この頃には感情のストッパーがかなり外れていました)。そして最後の最後に、自分を紹介してくれた人が花束もって出迎えて、また感動で涙、みたいなストーリーになっていました。
こういった、仲間との絆の素晴らしさや、紹介者への感謝や、そこから得られるパワーなどを体験し、感情が本当に揺さぶられる三日間でした。僕の人生の中でもあれだけハイになり、ボロボロ泣いて、自分は変わったと感じたのは、あの時だけです。
後から振り返って気づくのですが、人の感情を揺さぶり続けるのは洗脳の常套手段であり、仲間との絆を深めるのはその後の離脱を防ぐためだと言うことがわかります。
これを読んでる方は信じられないかもしれませんが、当時の僕は大真面目にセミナーに参加し、こうしてすっかり出来上がった(洗脳された)わけです。今でも覚えてるのは、セミナー後は「誰とでも仲良くなれる」と言うすごくハイな感覚になっていて、家の近くの松屋で夕飯を食べた時に、隣の知らない人に「こんばんは」と笑顔で話しかけたことです。多分、ものすごく怪しい人と思われたと思いますが、そんなの全く気にならない精神状態になっていました。
新興宗教やマルチの人がいくら断られても全くめげず、すごくいい笑顔やキラキラした目で声をかけてくるのは、洗脳された結果、本当に素晴らしいことを広めてると思い込んでるから、あんな表情になるのだと今はわかります。
困難な脱退
さて、そんなすっかり洗脳された私に待っていた次のステップは、「この素晴らしい体験を友人にも伝えよう」という活動と、CD制作のための上級コース(確か50万円くらい)でした。
つまり、渋谷で僕に声をかけてきた女性の立場に僕がなるというステップです。
ただ、2泊3日の中級セミナーを終えてしばらく家でゆっくりしていたタイミングで、本能的に「本当に友達を連れてっていいのだろうか・・」と我に返るタイミングがありました。そこで少しずつ洗脳が覚め、「友達を紹介するのはまずい」「次の50万のセミナーに行ったらまずい」と脱退の意思を固めます。
ここで洗脳から覚めていなかったら、大学の友人を紹介しようとして、間違いなく多くの友人を失っていたと思います。もしくは借金を50万円追加して、洗脳中のTOSHIのような歌を録音してCDリリースしていたかも(そしてそれを友人に売ろうとしていたかも)しれません。本当に恐ろしいです。
しかし、ここからが大変でした。まずセミナーのチームメイトたちからの激しい引き留めです。セミナー期間で彼らとは非常に強い絆ができていたこともあり、かつ彼らも洗脳されていることもあり、本気で僕のことを思って引き留めしてくれるんです。毎日何回も電話がかかってきて「大丈夫か?これからも一緒に頑張ろう」と本気で心配してくれるので、彼らとの連絡を断つことは、彼らとの絆を裏切っているようでとても後ろめたい気持ちだったのを覚えています。
こうやって仲間、友情、信頼を作ることで抜けさせなくすると言う手口なんだなと、後から考えると気づけます。義理堅い人ほど、人間関係を大切にしてるほど抜けさせにくくなると言う非常に悪質な手口だと感じます。「これは洗脳だぞ」とメンバーに伝えたい思いもありましたが、言っても通じないだろうなという思いと、身の危険もあるかもしれないと思い、ここは連絡を断って自分を守ることを優先するべきだと判断しました。
そうやって1ヶ月くらい連絡を取らないようにしていたら、ようやく連絡が来なくなりました。
残った借金と紹介屋
これでめでたしめでたしと思いきや、愚かな私は、また別のトラブルに足を突っ込みます(笑)。
今回のセミナーからは足を洗うことに成功したものの、残ったのは30万円近い借金です。金利は正確には覚えてないのですが、年利18%とかあったのではと思います。
貧乏学生の一人暮らし、そこに年利18%の30万円の借金ということで絶望していた時に、家に届いたチラシが目に留まります。
「ローン金利、払い過ぎていませんか?もっと安いところ紹介します」的な内容でした。
いま考えると、明らかに「ローンおまとめ詐欺」「紹介屋」と言われる詐欺なのですが、全く知識のなかった私は「これだ!」と思い、電話してしまいます。(今思うと、どんだけバカだったんだろうと自分でも思います。)
電話をすると「それは大変。すぐにでも手続きした方がいい」と言われて新宿に来るよう言われます。そして新宿でスタッフの方(コワモテのおじさん)に会い、借り換え申込書に住所や電話番号を書きました。(後から考えると、この時に実家を書く必要がなかったのが救いでした)。
そしてそのまま歌舞伎町付近の大手のサラ金のATMに連れて行かれ、「この会社と話がついてるから、30万円を借りて欲しい。その30万円を渡してもらえれば、今日中に低金利ローンに切り替える手続きができる」と言われて何も疑わずATMへ。
そして借り入れ手続きをしようとしたところ、ATMの上に「詐欺に注意!このような事例は詐欺です!」と張り紙があり、まさに今回と同じ手口が書いてあるではないですか。
「ヤバい、これは詐欺だ」とようやく気づき、逃げようとします。しかし、ATMの外ではコワモテおじさんが待っています。
コワモテおじさんが目を離したスキを見つけて、猛ダッシュで歌舞伎町から新宿駅に向かいます。「待てコラ」とチェイスが始まり、刑事ドラマのような展開に。
なんとか振り切って新宿駅の人混みに混じり、携帯電話を切って、帰宅。
フーッ、危なかった、と一息つくと、家の電話がチカチカ光っています。
何件も留守番電話が入っており「すぐに連絡よこせ」「逃げられると思ってるのか」「連絡しないと家に行くぞ」と恐怖のメッセージが並んでいました。
本気でビビった私は、そこから一週間、知人の家に泊まらせてもらい、なんとか逃げ切ることができました。
その間に実際に家に来たのかはわかりませんが(多分来てないとは思います)、とりあえず実家の連絡先を書いていたら、あちらに連絡が行ってもっと大ごとになってただろうなと思います。ただ、その後も、家にいる時はいつ電話が来るだろうか、コワモテおじさんが来るだろうかと数ヶ月はビビってました。
もしそのまま30万円をサラ金から借りていたら、そのまま紹介屋に渡してトンズラされ、借金が60万円に膨らむことになったはずなので、間一髪逃げ切れて幸運でした。
まとめと反省
今回の事例を考えると、なぜ両親・警察・友人に相談しなかったのだろうと思います。ただ、両親との関係性は良好だったのですが、相談は全くできなかったですね。やはり親には知られたくなかったという思いが先に来ていました。この辺りがオレオレ詐欺や特殊詐欺にも繋がる心理状態ですね。(特殊詐欺などは実家の情報を手に入れて「親に言うぞ」と脅してくると聞いています。)
今回は自己啓発セミナーでしたが、手法は新興宗教やマルチと似てて、まずはセミナーで洗脳し、次に知人を連れて行く(布教する)フェーズがあり、僕はその直前で目が覚めたので、周りに迷惑をかけなかったのだけが救いです。
貧乏一人暮らしには30万は大金で、返すのに3年くらいかかりましたが、人は簡単に洗脳されることや、洗脳された時の高揚感や感覚も実体験できたという意味で、高い授業料だったけど、すごく勉強になりました。酒も薬もなしにあれだけハイになりボロボロ泣き、自分は変わったと感じたのは後にも先にもあのセミナーだけでした。
この黒歴史は親しい人にしか話していなかったのですが、先ほど実際に借りた学生ローンの看板を見て、色々とフラッシュバックし、勢いで一気に書き上げました。
多くの人の連帯保証人になってたであろう女性は無事に抜けれたのだろうか、チームメイトはどうなったのだろう、とかしみじみと青春の苦味を感じる東京の朝でした。
僕を紹介してくれた女性は複数の連帯保証人になっていたので、おそらく借入人が飛んで借金を肩代わりさせられるケースもあったのではと思いますし、それを返せず夜の街などに堕ちていった可能性もあるかもしれません。
セミナー主催企業は、学生に借金を背負わせてセミナーでむしりとり、学生が借金を返さなくても苦しむのは連帯保証人の信者学生であり、主催企業がノーリスクで極めて悪質なビジネスをしていたことには本当に怒りを覚えます。おそらく知人のセミナー勧誘が成功してもランクアップなどで褒賞し、金銭的には還元していなかったのではと推測され、マルチよりさらに悪質だと思います。
この記事を読んでくれた方へのアドバイスがあるとすれば、興味本位では新興宗教やマルチには近づかないことです。心理学を駆使すれば、人は簡単に洗脳されます。そして洗脳されると本人はそれに気づけません。「信頼」「友情」をもとに揺さぶってくるから抜けるのは大変です。
相手もいろいろ隠して勧誘してくるので、完全に防ぐのは難しいのですが、大事なのは知識です。お子さんがいる方などは、高校生くらいになったらナニワ金融道と闇金ウシジマくんを読ませると、様々な詐欺の事例も多くあり、かなり学習教材として効果的だと思います。
以上です。長文をお読みいただき、ありがとうございました。
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