携帯電話利用料金について

2010年7月の「ITUジャーナル」に【開発途上国における携帯電話サービス市場の開拓 -BOPビジネスへの挑戦―】(宇高衛)という記事が掲載されており、グラミンホォンをはじめ、各国での携帯ビジネスの取り組み例が紹介されていた。その中から興味深いデータがあったので紹介したい。下記の表は、途上国での携帯電話通信会社のARPU(Average Revenue Per User: 1契約当たりの平均収入)を表している。日本、フランスといった先進国のARPUが格段に高い。まぁ、当たり前だろう。また、途上国とは言え発展してきているマレーシアのARPUも1,516円と高くなってきている。

また、インドやバングラデシュの1ユーザ当たりの収入が結構安いと感じた。ここまで安くなっていれば、携帯普及率がハイスピードで拡大していくのも納得できる。そうは言っても、実際に途上国の人達が携帯を使うときには、「高いなぁ」と感じているのか、「手頃価格だ」と感じているのか?とふと思ったので、各国の一人当たりGNIと比較して下記の表を作ってみた。


単純に一人当たりGNIを12ヶ月で割った額を月収と考えた場合、携帯利用費用が月収に占める金額をパーセンテージで出してみた。そうすると、ARPUの金額はインドやバングラデシュが激安であるものの、月収に占める割合としては、先進国と比較しかなり高くなっている。例えば、バングラデシュは日本の3倍以上、フランスの5倍以上である。こういった視点からみると、通話料金の値下げ競争が起きているものの、やはり途上国の携帯利用費用は高く、もっと安くなっても良いのだろう。

【開発途上国における携帯電話サービス市場の開拓 -BOPビジネスへの挑戦―】のなかで、宇高氏は、携帯会社の契約単位あたりの売上げ減少に言及した上で、“市場が飽和した後、どうやって事業を牽引してゆくかという先進国で各(携帯電話)事業者が直面しているのと同じ課題が生じることが予見される”(宇高(2010)p50)とBOP市場でしのぎを削る携帯電話事業者が将来的に直面する問題を指摘している。なるほど、確かに値下げ合戦でどんどんユーザが増えていくうちは良いけれど、日本のように市場が飽和したときにどうするか?は、課題である。通話だけでなく、データ通信サービスなどで儲けていく方法がないと厳しくなりそうだ。そのときには、「BOP市場への挑戦」から次なる新フェーズに移行するのだろう(きっと誰かが“M4D2.0”とでも呼ぶような)。

Reference:
宇高 衛(2010):“開発途上国における携帯電話サービス市場の開拓 -BOPビジネスへの挑戦―”, ITUジャーナル, vol.40, no.4, pp.47―51.

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コメント

  1. Maki より:

    面白いね。月収との比率にすると日本の携帯料金は決して高くないということか。意外。

    確かにこれから伸びていくインドや中国等のBOP市場でもいずれは携帯の普及率が伸びて日本のように飽和するのだよね。インドではまさに3Gが展開し始めた所だけれども、同じ3Gサービスでも(SMSでの海外送金の用途などのように)きっと日本人とは使い方が違うんだろうね。

    • tomonarit より:

      先進国のように娯楽とかゲームとかで携帯が使われるようになるのか、それとも、途上国ならではのDevelopment的な用途でデータ通信が利用されるのか。どっちだろうね。
      一方で、40億人というBOP市場が携帯については、そこまで大きくないのでは?という疑問も感じてます。例えば、村で全員が携帯を持つ必要はなくて、ご近所の仲間内で1台あれば、天気予報や作物の市場価格といった情報は、人伝えで広がるから、何人かに1台という割合でしか市場にならないのかも。この辺は、テレセンターを作っても、多くの人が金を払ってテレセンターでインターネットを利用せずに、利用した人から情報をもらうことで、結局、テレセンターは収益が上がらなくなってしまう。ってことに似てる。さらに、着信音を変えたワンギリで、通話料をかけずにコミュニケーションを取る方法なんかも、携帯電話会社泣かせなGrassroots Innovationなのかも。

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