日本ってほんとにIT人材不足なの?

ビジネス

こんにちは、Kanot(狩野)です。最近ニュースなどでよく「人材不足」という言葉をよく見かけます。特にIT業界などでは、よく引用されるそのデータとしては、経済産業省が2030年時点で最大79万人のエンジニアが不足すると予測しています。

そんな中、最近私は研究の一環で、外国人IT人材と日本を繋ぐビジネスをやっている複数の方たちにインタビューをさせてもらう機会があったのですが、多くの方が「外国人材に求める日本語力が高すぎるのが大きな課題」と言っていました。

一方、日本人の採用についても、低い給与水準でエンジニアを公募していて「なかなかいい人が見つからない」と言って嘆いている事例も多く見かけます。

この辺りの話を聞いてるうちに、「日本って本当にIT人材不足なの?」「求職者に魅力的な条件を提示した上で人材不足って言ってるの?」と思うようになってきました。

というのも、給与は上げない、求める日本語力も下げない、これで人探しをした結果いい人材が見つからない。これで「人材不足」というのは違うんじゃないかと・・・。実際にIT業界に限らず、人材不足という言葉をよく見かけますが「こんな給与水準でいい人来るわけないじゃん・・」という求人は本当に多いと感じます。

僕がアメリカに住んでいたコロナ後期は、ファーストフードのアルバイトの時給がどんどん上がっていきました。なぜなら、アルバイトを探していて人が取れなかったら、時給を上げて人を探す。それでも見つからなかったら時給を上げる。というパターンが繰り返されていたからでした。(それを繰り返してるうちに、バスの運転手の時給が$40とかで求人が出ていたのを見た時は、さすがにちょっと行き過ぎだとは思いましたが・・)

もちろんこのパターンだと、人件費が増えて、物価が上がり・・というインフレで苦しんでいる事実はあるのですが、とにかく人を雇ってビジネスを拡大したいという前向きさは感じることができます。一方、日本でよく見かける以下のパターンは「人材不足」というよりは、企業がもう少し環境を整える努力ができるのではないかと思わざるを得ません。

人材を公募 ー> 条件に合う人がいない ー> 条件は変えたくない ー> 採用は諦めて今の人員で頑張ろう ー> ブラック企業もしくは低成長企業へまっしぐら

この発想だと、増えてきた仕事を限られた人数でさばくため、一人当たりの負担が増えてブラック化しがちですし、人員が限られるため売り上げも増えていかないので低成長に向かったりしがちだと思います。一方、以下のようなパターンはどうでしょうか。

条件に合う人がいない ー> じゃあ条件を変えよう(給与を上げる、求める日本語レベルを下げる) ー> 人も増えてビジネスが拡大し売り上げが上がる ー> 他の社員の給与も上がる

何かしらこういったスパイラルになっていくのが健全だと思うのですが、昨今の「人材不足」は人が取れない時点で思考停止してしまっている企業が多い気がしてなりません。そのために、政府が一生懸命「賃上げ」圧力をかけたり、最低賃金を引き上げていかないと変わらないマインドセットの企業が多いのでしょう。

私はビジネスセクターにはいないので、これらは机上の空論だと言われるかもしれません。給与を上げたら会社が潰れてしまうという声も聞こえそうです。

でも、すごく当たり前すぎるくらい当たり前のことを言っていて、いい給料を払えばいい人材が集まるし、応募が来ないなら何かしら魅力が足りていないのだから給与なりを上げるしかないだろうと思っています。企業として成長を望むのであれば。この状況が続いてしまうと、日本のみならず世界の優秀な頭脳は来てくれなくなってしまい、国として結局首を絞めることになってしまうと懸念しています。

そして、どうしてもこの文化を変えられないのであれば、政府がどうにかして円高にもっていくしかないと思います。これも単純計算ですが、毎年10%ずつ円高になれば、昇給なしでもドル建ててだと毎年10%ずつ昇給しているのと同じことになります。最近は給与が上がらないことに加えて円安なので、国際的に見てどんどん貧しくなっているように感じます。

メディアも、一見財政的には厳しいと思われていた中小企業が、積極的に人材に投資・昇給をしていった結果、優秀な人材が確保できて、それでビジネスも拡大し、給与も上がって・・・みたいな事例をたくさん取り上げて欲しいなと思います。そういう成功事例が出てこれば、追随する企業も多く出てくると思いますので・・・。

机上の空論だと思われるのは重々承知ですが、なんだかなぁ・・という思いが拭えず、記事にしてみました。


公開後の追記:コメントで大規模SIerなどでのブリッジエンジニアのあり方や海外企業とのやりとりなどについての現状を教えてくれた人がいて、それを聞きながら、あくまでこの記事で私が触れていたのは「中小企業などが直接IT人材を雇う場合の話」であったなと認識しました。IT業界全体に一般化できるとするには片手落ちですね。
大企業のグローバル人材受け入れの話もいつか書いてみたいと思います。

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