ブックレビュー「世界の民族」超入門

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こんにちは、Kanot(狩野)です。最近読んだ本で、グローバルな仕事をする方の教養としてぜひ手に取ってほしいと思った本がありましたので紹介します。

その本は、山中俊之氏のビジネスエリートの必須教養「世界の民族」超入門です(2023年2月発売)。山中氏は私も客員教授を務める神戸情報大学院大学の教授でもあり、外交員・コンサル・大学教授というマルチなキャリアを歩まれている方です。

その山中氏が、ご自身の多様な経験と幅広い知識から、民族という切り口で今の世界を一望したものが本書になります。

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私がこの本を読んで感じた主なメッセージは、世界で起きている様々な問題は民族の問題に帰結することが多く、「世界のコンテキスト」を読み取れる人材になるために、世界の民族について様々な角度から教養として理解しよう、といったものです。そして内容もそのような形で各地域についての紹介や、人種差別や難民・移民問題といったトピックを切り口に解説されています。

ちなみに、本書のキーワードは「民族」ですが、民族学者のように各分類ごとに科学的に論じているわけではありません。そのような分類ではなく、「現在の世界の姿がこうなっているのは、こういう民族的な背景があるから」といった形で、今の世界の姿とその基礎になる民族だったり歴史についてのストーリーが書かれています。

主観的な要素として著者の体験談も多く紹介されており、そこもリアリティを高める要素になっています。一方、ただの体験談書籍ではなく、私も滞在した国の記載内容について助言を求められるなど、色々な方に裏もとった上で主観要素も適度に交えつつも客観的にまとめられていると感じます。

また、カバーしている範囲も非常に広く、例えば、とある章ではイギリスのブレクジット(EU脱退)と民族の関係性や、南アジアの宗教対立による分離などについて過去の経緯や民族性から紹介されています。一方、別の章では日本の民族問題としてアイヌや在日コリアン、そしてそこからBlack Lives Matterなどのアメリカの黒人差別問題との関係や移民政策の差などが一つの流れの中で紹介されているなど、多様な視点からストーリーが紡がれています。

個人的にオススメの読者層は、どこかしらの国に実際に訪問・滞在したことがあり、「なんでこの国はこんな仕組みになっているのだろう?」「なぜ民族の差がこんなに深刻な問題に・・」といった問題意識を持ったことがある人です。

おそらくその方達は、自分が問題意識を持った国・民族についてある程度勉強しているはずで、その奥深さを感じたことがある人だと思います。その経験の根本にあるものを本書で再確認・補強できるということに加えて、他の地域についての知識・理解を広げることで、まさに「教養」として世界の今を一望する書籍として活用できるのではと思います。

私も、これまであまり勉強してこなかった地域などについても歴史背景を知ることができ、知識の幅が広がったと思います。今後、新しい地域に出張に行く際などは、その地域の章を読み直してから行きたいなと思っています。

また、私はこの本の一番魅力的な点は、歴史と現在を民族を通して繋いでいる点だと思います。それが一般の世界史関連書籍との最大の差異です。

というのも、実は大人になってから何度も世界史の本を読もうとして挫折してきました。自分はグローバルな物事が好きなのに、どうして世界史にハマれないんだろう・・と情けない思いをしてきたのですが、その理由の一つが本書を読んでわかった気がします。それは、過去と現在を結ぶ線の有無です。

世界史の本は、過去の事実を知るという点では非常に体系的なのですが、現在とは切り離されて記載されているので、あまりリアリティを感じませんでした。一方、本書は今の世界の価値観や考え方の基礎となるものを地域・民族という切り口でまとめています。そこにはもちろん世界史の要素も多く含まれているのですが、私としては世界史の教科書では味わえないリアリティを持って読むことができました。

私の文章力の拙さかから、具体的な書籍レビューというよりは、同じようなことを何度も書いてしまったような気がしますが、読み物として自分が知らなかった世界のコンテキストを教養として広げる書籍として、ご興味持った方はぜひお手に取ってみてください。

そして、いま私の頭では、本書とエリンメイヤー「異文化理解」を教科書とした、異文化コミュニケーション・多民族理解をトピックとした授業を作ったら面白いんじゃないかなと妄想が始まっています。

では、また。

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