こんにちはKanot(狩野)です。先日、ICT4D Labでビブリオバトルという、メンバーがそれぞれおススメの本を紹介し、投票しあうというイベントを開催したのですが、そこでなんと優勝することができました。パチパチ。ということで、ビブリオバトル用に読み直した本について、ブログでも複数記事に分けて紹介してみようと思います。この記事はそのイントロ編になります。
僕が紹介した本は、エリン・メイヤー氏の「異文化理解力 The Culture Map」です。メイヤー氏はフランスにあるビジネススクールINSEADの教授で、異文化コミュニケーションの専門家です。
この本は、我々がグローバルに仕事をしていくにあたって直面する様々な文化の違いを事例として紹介し、それをどう乗り越えていくのかをまとめた本になっています。メイヤー氏は「異文化理解力」を次世代リーダーの条件と定義していて、私も現代のビジネスパーソンにとって「異文化理解力」は、まさに「必須の教養」だと思います。
出版は2015年ですが、全く色あせない名著です。
さて、おそらく皆さん、まだ本の内容がイメージつかないかと思いますので、例を一つ挙げます。
あなたの部下であるX国出身のAさんの仕事ぶりがいまいちなので注意したい。そんな時、あなたはどうしますか?
- 改善すべき点を直接ビシッと伝える
- 仕事で良い点を数点伝えてから、改善すべき点を伝える
- 改善すべき点をぼかして伝える
- ランチに誘って1対1で伝える
この答えは・・・・
X国の文化によって最適なアプローチが異なる可能性が高いそうです。じゃあどういった国の人だとどれが最適なのでしょうか?その指南書になるのが本書です。一方、特定の国の文化をステレオタイプに当てはめることは危険であり、その点はメイヤー氏も指摘しています。あくまで「X国の人はこう考えることがある」くらいにとどめ、大事なのは相手の発想を理解し、敬意を払うことだと私は思います。
なお、この本では過去の学術研究やメイヤー氏が実際にコンサルティングを通じて聞いた話などを元に構成されており、ただの体験談ではありません。
本書は全部で8つの章で構成されており、それぞれの章は以下のような文化の違いをカバーしています。
- コミュニケーション
ローコンテキスト文化(なんでも言葉にする必要がある)とハイコンテキスト文化(言葉にしなくても察することができる)の違いが元に起きる問題と解決方法。日本は「空気を読む」など典型的なハイコンテキスト文化。 - 評価(ネガティブフィードバック)
国によってはネガティブなフィードバックを直接伝えるのがいい場合と、間接的に伝えるのがいい場合がある。例えばアメリカでは、まず3つ褒めてから、改善点を伝えるが、このやり方ではオランダなどでは意図が伝わらない。 - 説得
相手を説得する場合に、原理優先するか応用優先するか。例えば、ドイツなど(原理優先)では順を追って背景を説明した後に結論を述べるのが吉。アメリカなど(応用優先)ではまず結論を伝えた後に背景を説明する。 - リード
リーダーシップという点において、平等主義なのか階層主義なのか。例えば、欧米に多い平等主義な国では上下関係は少なく、上司でもファーストネームで呼び合う。アジアに多い階層主義の国では、上司の指示は絶対であり、ファミリーネームで呼び合う。 - 決断
物事を決める際に合意思考なのか、トップダウン式なのか。日本は典型的な合意思考の国であり、稟議などはその典型。一方のアメリカはトップダウンで、なぜその決断になったかをトップがわざわざ説明する必要性は少ない。 - 信頼
信頼をタスクベースに置くのか関係ベースに置くのか。アメリカなどは契約書が絶対の力を持つなどタスクベースでビジネスが進む。ブラジルなどは、人間関係の構築なしにはビジネスは進まず、ランチやディナーも重要な時間。 - 見解の相違
対立型なのか対立回避型なのか。日本は対立回避型で激論を交わすのは好きではない。一方、アラブのいくつかの国では、喧嘩をしているかのような議論の後に、一緒に何事もなかったかのようにランチを食べていたりする。 - スケジューリング
数分遅れるときに連絡を入れる必要があるかなど、時間間隔の差。直線的な時間感覚を持つ国と、柔軟な時間間隔を持つ国に大きくは分かれる。
ちなみに、冒頭の質問に対する答えは、「コミュニケーション」の章で出てきます。各章に入ると長くなりますので、この記事はこの辺で一旦閉じたいと思います。各章をもっと深く書いた記事も、気が向いたら・・・書きますね。
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