第8章:プロジェクトの教訓と考察

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本書では、バングラデシュ人を現地で育て、IT産業育成を支援し、IT人材が日本で(特に地方創生に向けて)活躍するまでの14年間のストーリーを取り上げてきた。もしかすると本書を読まれた方の中には、特に違和感なく、このストーリーを受け入れられた方もいるかもしれない。しかし、このストーリーはシンプルそうに見えて、今後の国際協力のあり方や、日本やバングラデシュのIT産業の国際化に向けた教訓がいくつも含まれている。ここではそのような教訓をできる限り形式知化してみることを試みたい。

特にここでは、(1)双方向的な国際協力の形、(2)インセンティブ・デザイン、(3)ビジネスと国際協力の関係性、(4)人材流出から頭脳循環へ、(5)IT国家資格の導入と活用、 (6)日本が歩み寄るべきこと・伝えられること、という6つの点ついて先行研究や私がこれまで実施した調査の結果なども参考にしながら、私なりの解釈を書いてみようと思う。なお、ここから先は、取材内容を元にした私の個人的な見解および考察が中心になることを事前にお伝えしておく。

双方向的な国際協力の形

本書のストーリー、特にB-JETにおけるバングラデシュIT人材の日本就職という動きは、日本が人材育成・国家資格導入の支援をしたという一方向の支援ではなかった。日本の社会問題である少子高齢化に伴うIT人材不足と、バングラデシュでの魅力ある就業機会の創出およびIT産業の育成という両国の社会課題を同時に解決しうるものであったという点が特徴的であった。

というのも、日本は現在深刻なIT人材難に直面しており、2030年には最大で79万人のIT人材が足りなくなると言われている。特に地方部においてはその傾向が顕著であり、宮崎市などでは優秀な人材が東京や福岡に出てしまうことが多く、IT人材の需要に対して供給が追いついていない状況であった。

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IT人材受給に関する試算結果 出所:みずほ情報送検株式会社(2019)

その一方、バングラデシュでは日本と全く異なる若年層中心の人口ピラミッドになっており、若い人たちにとっての国内での魅力的な仕事が、まだ多くないという状況であった。

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人口ピラミッド 出所:CIA The World Factbook

そこで生まれたのがB-JETであり、宮崎-バングラデシュ・モデルである。この構図は、日本がエンジニアを育成・受け入れてあげるという形ではなく、バングラデシュ人エンジニアたちが日本のIT人材難解消に向けて貢献してくれているという構図でもある。言い換えれば、日本がバングラデシュを支援しているのと同時に、実はバングラデシュからも日本を支援してもらうという、相互補完的な関係になっている。

こういった「支援する側、される側といった一方向ではない」国際連携の形は、新興国の活力を用いて日本の開発課題に貢献することにも繋がるものであり、新しい形の国際協力として、各国に拠点を持つJICAの新たな役割の一つにもなりうるのではないかと考える。

一方、このような外国人の人材活用という話を聞いて、「これは昨今問題になっている技能実習制度と同じではないか?」と思う読者もおられるかもしれない。実際に宮崎市においては、このプロジェクトと技能実習制度を比較されることもあったといい、「安い労働力を取り入れたいだけではないか」という声が届くこともあった。そのため、宮崎市ではバングラデシュ人の優秀さや、宮崎に来てくれることによる貢献度といったポジティブなメッセージを出し続けた。そして実際に、バングラデシュ人エンジニアの平均月収は、宮崎市の日本人より高く設定されることも多く、今後の宮崎市のIT産業の発展に欠かせない人材として期待されている。

また、技能実習制度の問題として挙げられるような法令違反(低賃金での搾取など)は、B-JETのようなケースでは起きにくいと考えている。その主な理由としては、日本人でも足りていない高度技能を持つ人材を雇用しているという点と、雇用する側とされる側のフェアな関係性が挙げられる。特に現在はIT人材が世界的に不足しているため、来日したITエンジニアは、企業から選ばれていると同時に選ぶ立場でもある。

つまり、受け入れ企業からすると、魅力的な職場環境や賃金を提供しなければ、せっかく雇っても転職されてしまうリスクがあり(B-JET修了生でも実際に転職したケースも発生している)、企業側も常に外国人高度人材に選んでもらうための努力を続ける必要がある。そしてこのことは、企業だけでなく日本としても言えることであり、ITエンジニアに対して欧米企業がオファーする金額と比べると低いことが多い中で、今後も「選ばれる日本」となり続けるための枠組みを構築することは、お互いが育っていく環境を構築するにあたって重要であると考えられる。

インセンティブ・デザイン

次に、事業モデルに関する教訓を考えてみたい。宮崎-バングラデシュ・モデルの関係者であった宮崎市・宮崎大学・IT企業・JICAがうまく連携できた最大の要因として取材でも挙げられていたのは、それぞれの関係者が一定のリスクと一定のインセンティブを共に有するデザインになっていたことであった。

具体的には・・・・

続きをご覧になりたい方は、ぜひ書籍でご覧ください。(印税は著者には入らず、JICA事業に使われます。)

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ビジネスと国際協力の関係性

人材流出から頭脳循環へ

IT国家資格の導入と活用

日本が歩み寄るべきこと、伝えられること


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