科学技術に対する途上国の期待感

自分の大学院時代の恩師Heeks氏のブログ「ICTs for Development」にこんな投稿が。
途上国と先進国の科学技術(Science & Technology)に対する期待感の違いについての調査を紹介している。

Heeks氏のまとめによれば、途上国の方が科学技術の重要性を重視していると言える。例えば、若者が望む職を比較すると、途上国の方が科学技術分野の職を欲する率が高い。こういった科学技術を重要視する姿勢は、ICT4Dについて考えてみると、途上国ほどICTプロジェクトにおいてTechno-centric(科学技術中心)なアプローチを誘引すると言える。

しかしながら、「ITシステムの導入=Solution」といった短絡的な思考に陥りやすいTechno-centric(科学技術中心)なアプローチが、途上国独特の文化、社会環境、組織内の政治、多様性といったものを軽視して、ICT4Dプロジェクトを失敗に導いてしまうという傾向は、Heeks氏が良く指摘しているポイントである。

最後に、Heeks氏は「何故、途上国ほど科学技術に期待感を持っているのか?」という疑問を投げかけている。これまでICT導入・活用によって大成功したプロジェクトが沢山あるからなのか? それとも、単にICTに関する経験不足から来る楽観的期待なのか?思うところがある方は、ぜひとも意見を書いてみて下さい。コメント待ってまーす。

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コメント

  1. Cres より:

    さて、ちょっと個人的に意見があるのでコメントに挑戦

    先進国と途上国での期待感の違いという事ですが指摘自体は大いに同意します。
    その背景なのですが、単純に経験値に基づくものと考えます。

    多くの先進国では、ICT分野において
    Techno-centric(科学技術中心)なアプローチが招く
    成功も失敗も多く経験し蓄積しています。
    その事例に基づいて、現在は冷静な判断基準があるのだと思います。

    その昔、日本でもITバブルなる現象がありましたが
    あれも結局、当時の日本で経験値が少ないからおきた
    過剰期待の現われだと考える事は可能ですし。

    そして、「何故、途上国ほど科学技術に期待感を持っているのか?」
    という疑問に対してですが
    経験値の蓄積量の差と、
    外から見る 成功事例の大きさ(隣の芝生は青く見える)の
    両面が要素として大きい というのが私の考えです。

    政府レベルでそうであるとすると
    その政府の広報を信じている無辜の民は
    (マスメディアを通じて)
    必然ICTに対する過剰な期待を持ちやすいと思います。
    (internetを通じて自分で外部の情報を収集できる人間はまだまだ少ない)

    そうして複数のレバレッジポイントを経由すると
    過剰な期待が更なる過剰な期待を生んで
    最終的に、ナゾのICTバブルの幻想が生まれるのではないでしょうか?

    しかも、仮に疑問があったとしても
    現実としてICTに係る人材の所得は
    一般水準よりも遥かに高いわけでして
    積極的に否定する事は、途上国内では難しいでしょう。

    これに対する方策は
    結局先進国で培った、多くの事例を
    ケーススタディで伝えていくしかないでしょうし
    そのケーススタディの重要性を
    政府高官や教育機関へ訴えていくのが現実的な近道ではないでしょうか?

  2. tomonarit より:

    コメントありがとうございます。

    自分も経験値の差は非常に大きな要因と思います。
    その経験値の差がいろんな点で「ICTは凄い」というイメージを植えつけているのかと。

    ICTは先進国から入って来る近代テクノロジーの象徴のようなものなので、自然に(悪く言えば盲目的に)「凄いもの。良いもの。」と思ってしまうのではないかと感じます。

    また、途上国側では、そのイメージを利用する政府要人なんかもいて、「私が一大ICTプロジェクトを実施しました。」と言いたい思いが、途上国でも大規模なeガバメント計画が進められる背景にあるのでは?とも思います。

    日本でも途上国からの役人を対象に電子政府関係の研修をやっていますが、そこでどういったことを教えているのかに凄い興味がありますね。「ICT=Solution」といったことを教えているのか、それとも、「ICTに期待しすぎると痛い目にあうぞ」と忠告をしているのか。

    ITバブルを経験した日本が、ICT4Dプロジェクトに「ちょっと待った」をかけれる人材育成をしていることを願ってます。

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