プライド向上がICT4Dの魅力

先日、ソニーがガーナで実施した太陽光発電を利用したパブリックビューイングについての発表を見に行った。ソニーがソーラーパネル、バッテリー、プロジェクター、スクリーンなどを担いで、ガーナの田舎町でサッカー中継を行うという試み。ソニーのサイトから詳細を見ることが出来る。ソニーはワールドカップでもJICAと共同でパブリックビューイングを設けてエイズ予防に貢献する活動などもしている。

この発表を見に行って面白かったのは、その機材。ペラッペラッなソーラーパネルは、初めて見たので驚いた。軽いし、くるくると丸めて運べるし、一昔前の「パネル」とは全然違う。また、バッテリーやプロジェクターがスーツケースみたいなボックスに格納されている装置にはもっと驚いた。発表のその場でソニーの方が、「動くかな・・・」といいながら、ドンドンってボックスを叩いたら、電源が入った。ドンドン叩いてスイッチが入るとは、世界のソニーのエンジニアもTVの調子が悪いときにバンバンとTVを叩くような昭和初期の親父と同じか・・・と思ったら大間違い。なんと埃の進入を極力防ぐために、外部に電源スイッチをつけておらず、ドンドンと叩く振動でスイッチが入るインターフェイスなのだ。さすが世界のソニー。親父と同じじゃなかった・・・。

以前このブログでも取り上げた京セラみたいに、今後、ソニーもBOPビジネスを見据えて、途上国の電化にも貢献していくことを考えているようだ(地方の医療機関にある薬品保存用冷蔵庫へ電気供給するような)。ちなみに、NGOなどでも、ソーラーパワーの利用に取り組んでいる例は結構昔からある。しかしながら、過去の取り組みで上手くいっている例は以外に少ないという話を聞いた。バッテリーの寿命が来た後、現地で新しいものが調達出来なかったり、機器が故障したときに修理出来なかったりという課題が。先進国発の製品じゃなくて、やはり現地で維持管理が出来る製品じゃないと成功は難しいということだろう。

ソニーのチームがガーナの田舎で機材のセッティングをしたり、子供達がスクリーン前に群がってサッカーを観戦している風景のビデオを見て、ふとエチオピアのことを思い出してジーンときてしまった。スクリーンを前に、人々(特に子供達)の興味津々&ワクワクしている目を見ると、協力隊員としてエチオピアでPCの操作を教えていたときの生徒達を思い出した。テクノロジーを感じさせる機器は、それだけで途上国の人々を興奮させる。ICTと途上国開発の話になると、ICTよりも食料、教育、医療保健といったBHN(ベーシック・ヒューマン・ニーズ)の方が優先されるべきで、「学校にPCを導入する資金があるなら、先に井戸を掘るべきだ」的な意見がある。自分もその考え方を理解するし、もっともだと感じるけれど、ICT4D分野を自分の専門にしたいと感じたのは、ICTが途上国の人々の目を輝かせるからだ。必要なものと欲しいものは違う。「欲しいもの」を提供することでハッピーになってもらえる点に自分はICT4Dの可能性を感じる。(勿論、ICTによってもたらされる情報もBHNと同様に必要なものだという真っ当なICT4D擁護論も支持しますが。)

丁度最近、インドについての本「インドIT革命の驚異」(榊原英資 著)を読んだ。そこで、インタビューされたインド人が強調していたのが、ITの効果は経済発展という形で現れているけれど、それ以上にインド人のプライド向上に役立っているという点。そういえば、以前、インドの田舎を訪問した際も、テレセンターが出来たことで、住民が自信を感じるようになったという話を聞いた。このような心理的な効果(エンパワーメント)がある点が、ICTを活用した途上国開発の魅力だと思う。

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コメント

  1. Maki より:

    いや本当にこういう意味でのICT4Dの貢献は大きいと思う。中身より形が先であってもよいような気もする。

    プライドというか自信をつけるということが、開発の観点の評価項目にあればよいのだけどね。ブータンの幸福指数みたいなものでどうにかならないか・・。

    • tomonarit より:

      そうだよね。数値で測りにくいけれど、こういうことも大切。自分達、そして自分達の国が「イケてる」って思えることって、その国の発展にもの凄くプラスの影響を与えるはずだし。
      自分は、エチオピアでの教え子達(高校生)が、「将来の夢は、この国を抜け出して外国へ行くこと」と口を揃えて言っていたのきいたとき、エチオピアの発展はまだまだ遠いなぁと直感的に感じたよ。。。

  2. […] 個人的に、こういう感覚って途上国開発にも必要かもと感じた。以前もこのブログに書いたけれど、水や食料といったBHN(Basic Human Needs)とICTのどっちが大事か?という問いには、「どっちも大事」というのが自分の考え方である。途上国の人々が「必要なもの」=「欲しいもの」ではないという思いから、ある意味、「欲しいもの」としてのICTを通じた援助があっても良いと考えている(勿論、情報が必要なものという意味もあることは付け加えておきます)。 […]

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