途上国の携帯料金回収にまつわる悩み

バングラデシュ最大手の携帯キャリアであるグラミンフォンが、後払い客の未納金回収のために、料金回収業務を外部委託するとのこと。未納金はなんと575,000人、10億円にのぼるという。
なぜこんなことが起きてしまうのか。そこには途上国の事情がある。

疑問その1 クレジットカードや銀行引き落としにすればよいのでは?
まず、日本では当たり前の確実な後払い、これがなかなか難しい。というのも、クレジットカードはおろか、銀行口座を持っている人も多くない。銀行によっては引き落としという機能もあるが、まだまだ多くの人は現金での支払いを行っている状況である。

疑問その2 全て前払いにすればよいのでは?
アフリカなどではプリペイドが主流なように、バングラでも全て前払いにすればよいという議論については、もちろんバングラでも無条件に後払いを認めているわけではない。条件は携帯キャリアや契約携帯によって異なるが、一定の条件のもと、後払いを認めている。ヘビーユーザにとってはわざわざ買い足す必要のあるプリペイドは面倒であり、全てをプリペイドにするというのは困難と考えられる。

疑問その3 払わない客の携帯は止めればよいでは?
多くのユーザはクレジットカードも銀行口座も持っていない。そのユーザはどうやって支払いを行うのか?そう、窓口で払うことになる。当然全ての村に支払い箇所があるわけがなく、数ヶ月に一度町に上がる際に支払う、ということは十分にありうるため、日本のようにすぐに携帯を止めるという対策は取りにくい。実際に私も一度支払いを忘れたことがあったが、翌月の支払いに前月分が上乗せになっただけで止められることはなかった。

疑問その4 未払いユーザはすぐに追跡できるのでは?
ここバングラでは、戸籍や住民票といったシステムが整っておらず、逃げたり詐称したりということが比較的しやすくなっている。そのため、料金支払いをせずに田舎に帰ってしまったなどの場合に追跡するのが難しい。

以上が、私が思った疑問点を同僚に聞いた答えをまとめたものである。同じ携帯電話ビジネスでも実施する国によって(今回は日本とバングラの比較)苦労する点が大きく異なることは非常に興味深いことであり、BOPビジネスの難しさを改めて感じることになった。

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コメント

  1. Ozaki Yuji より:

    バングラデシュでも携帯電話会社同士の競争が厳しそうなので、日本国内のようにプロモーションで契約条件を緩くしたり、携帯電話会社から販売代理店に対して新規契約数に応じた奨励金を出しているのか。あるいは「グラミン」のブランドイメージから「低価格で広く普及」という重荷を背負っているが故に契約条件を緩くせざるを得ないのか?などと外野から心配したり想像したりしています。

    かなり昔(携帯電話普及以前)、日本国内で債権回収業の方からお話をお伺いする機会がありましたが、ポストペイド電話料金の支払い状況は、資金繰りが怪しい人を早期に見分ける目安のひとつになると仰ってました。
    電話は(電電公社時代から)料金滞納が即サービス停止というわけでもなく、電気や水と違って停止や再開が外見からわかりにくいという性質があり、資金ショートの影響が表面化しやすいとのこと。サービス停止にならない程度に電話料金滞納や延滞を繰り返す→資金繰りカツカツの兆候→回収急げ→そのうち破産か夜逃げ、だとか。どうやって料金未納・滞納に関するアラートを手に入れていたかは語っていただけませんでしたが。

    荒唐無稽ながら、携帯電話料金納付状況は、個人レベルの資金繰り状況の目安となるかもしれないですね。

  2. Kanot Kanot より:

    Ozakiさん
    なるほど。この情報をどこかが統合的に持てば、かなり有益な情報(ブラックリスト化)ができるかもですね。一方で、現在のバングラでそのような情報共有が各社で行われているかというと、怪しいとは思います。
    一方で、未回収金が多いという現状はあるものの、それ以上に4,600万人という膨大なユーザを抱えているので、多少の焦げ付きはあっても収益にはさほど影響していないと思います。
    携帯電話事業というものが、まさにBOPビジネスとして広まっているということですね。

  3. Ozaki Yuji より:

    バングラデシュの人口が1.5億人のところに、契約数4600万ですか…すごい市場シェア。
    ということは、プリペイドの利用状況やポストペイドの支払い状況を、個人の資金繰りを推測できるセンサーとして….何らかの地域的・社会的イベントの発生を推測する手段として….。

    銀行やクレジットカード会社は、個々の口座の入出金状況を常にモニタリングしています。それまでのパターンから外れた支払いがあったときに、確認の連絡が来ることからもわかります。
    銀行など一部の業界では、入出金状況の変化を何らかのライフイベント発生によるものと推定し、既に持っている顧客データや社会的・季節的イベントと突き合わせ、金融・保険商品の売り込みターゲットをセグメンテーションするのに使っているようです(Event Based Marketing)。
    確かに、結婚や出産を控えたり、慢性疾患が検知されたりすると、入出金パターンが変化しますもんね(入出金パターンを閲覧パターンに置き換えると、Amazonのリコメンドにつながりそう)。

    個人情報保護との絡みはあるんですが、この辺りで面白いことできないかな、というか、携帯電話会社はリアルタイムとはいなかいまでも、既に内部的に解析をやっているかもしれないですね。

  4. atuchan より:

    それだけの人々に後払いのクレジットを与えるのが、驚きです。
    かえって、プリペイドの人たちの方が、良いクレジットヒストリーを持てるような気がします。

    • Kanot Kanot より:

      確かに不思議ですよね。マイクロファイナンスで始まったグラミングループなので、社会貢献的な意図があったのかもしれないですね。
      競合他社の後払いのデータを見なきゃですが。。、

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