AIやロボットに仕事を奪われるのは大人

イノベーション・新技術
Source: 株式会社エナジード(https://www.enageed.jp/)の動画の1シーン

ども、Tomonaritです。ICT4D関連での講演や授業をすることはちょいちょいあるのですが、2月15日(土)に中央区城東小学校というところで、父兄向けに「中央区家庭教育学習会:~2020年のプログラミング教育小学校必修化に向けて~」というセミナーでお話させて頂く機会をもらいました。

父兄向けの講演という、始めの機会で何をどう話すか迷いつつも以下のようなことを話させて頂きました。

  • 途上国、新興国でのICT普及状況(思いのほか、進んでるでしょ?)
  • ICT4Dの取組(教育分野、IT人材育成+α → 日本が特別進んでる訳じゃないよ)
  • ICT利活用の課題→ICTはツール。広い視野が大切だよね
  • プログラミングもツールだよね

特に、ICTはツール、プログラミングもツールという点では、最近見た台湾のデジタル大臣(唐鳳氏(38歳) )の発言を紹介しました。この唐鳳氏は、19歳で米シリコンバレーでも起業し、米アップルなど世界のIT企業の顧問も歴任したという天才プログラマー。そして、世界初のトランスジェンダー大臣というユニークな方。日本の小学校でのプログラミング教育必修化について意見を求められた際の、この方の発言がとても良いので以下紹介します(Livedoor news 台湾の「38歳」デジタル大臣から見た日本の弱点から引用)。

プログラミング教育は、問題を解決するための手段にすぎません。デジタルスキルとプログラミング教育はまったく別のものだということです。プログラミング教育に反対はしませんが、第2外国語の学習と同じで、学んだとしても結果的に使えなくては意味がありません。

 私は、プログラミング教育よりも「素養」(教養)を涵養するような教育を重視すべきだと考えています。台湾ではこれまで「競争力」を重視するかのような教育が行われてきましたが、現在では「素養」を重視するように教育方針が変わりました。自発的で、ともに助け合い、共通の利益を求めるという3つの要素を重視する教育への転換です。日本の教育政策の方向性は正しいと思いますが、台湾ほどのエネルギーは発していないかもしれません。

Livedoor news 台湾の「38歳」デジタル大臣から見た日本の弱点

第二外国語と同じ、という例示がとてもわかり易く的を得ていると思いました。また、デジタルデバイド(例えば若者と高齢者間のギャップ)について聞かれた際には、以下のようにも言っています。

デジタル技術はもっと謙虚であるべきです。人間に寄り添い、多くの人間が技術の恩恵を受けられるようにすべきです。1位になれ、トップを目指せ、という技術競争を追求してそれについていけない人を生み出すのではなく、どのような技術がどれだけの人を取り込めるかを考えることが重要です。
ですから、高齢者はIT社会で何一つ変わる必要はありません。ITのほうこそ、人間に近くなるように調整されるべきなのですから。

Livedoor news 台湾の「38歳」デジタル大臣から見た日本の弱点

天才プログラマーと聞くとTechnocentric(技術中心主義)な考え方なのかと思いきや、そうではなく人間を中心に据えた考え方(Human centric)な発言で少し驚きました。それ以外でも、とても良い発言をされているので、引用元のインタビューは一読オススメです。

さて、実はここからが本題です。中央区家庭教育学習会:~2020年のプログラミング教育小学校必修化に向けて~」というセミナーでは、私ともう一人、五十嵐則道さんという方の講演「AIに負けない0から1を生み出す力と21世紀スキルとは」がありました。この五十嵐さんの話した内容がもう面白すぎて、このセミナー無料で聞いちゃって良いのかな?と思うくらいでした。この御方、元株式会社エナジード執行役員という肩書。五十嵐さんがプレゼンで紹介された以下の動画をまずは見てみて下さい。

どう感じたでしょうか?偶然にも、先に自分が話した途上国でのICT4Dの取組(ケニアのM-pesaやM-Post、ルワンダのドローン等)とも少しリンクするような内容でした。

Smart young people show up.
Having lived in a difficult situation, then have been thinking to survive.
They keep creating new things.
Then, they start creating our future.

上記のSmart young peopleはまるで途上国、新興国からやってくるようにも思えました。以下、五十嵐さんの講義から心に残った点を紹介します(ってか、自分用のメモに近いですが)。

  • インターネット出現前と後で世の中のスピードが早くなったと言われるが、実際どれくらい価値の変化のスピードは変化したのか? 
    → 400倍
  • これらの子供に求められるスキルとは?
    → 「思考力」、「判断力」、「表現力」
  • もっとわかりやすい感じの、 これらの子供に求められるスキルとは?
    → 「(問題に)気づく力」、「発揮する力」、「実現する力」
  • そんなスキルをもった子供に育てるためには?
    → 子供が何か問題に面した際に「でもしょうがない…」と思わないように以下のような語りかけをしてみよう!
     「気づく力」:「もっと〇〇(なら良いのにね)?」
     「発揮する力」:「どうすれば(良いのかな)?」
     「実現する力」:「こうすれば(良いんじゃない)?」

小学生の娘を持つ親としても、素直に「こりゃ、ためになるなぁ~」とメモってしまう内容でした。他にも、言われたことをきちんと実施出来る人材は多いが、主体的に何かをやりたいと言って実行出来る人材が企業には圧倒的に非常に不足している、という話もありました。 言われたことを効率よくやる、というのはAIやロボットに取って代わられる仕事ということですね。すでにトヨタ等の大企業が新卒採用の方法を変えた(どの部門に入りたいか?を聞いてその部門に配属する部門別採用方法)ようです(そう言えば、こんな記事「大企業も気づいていた!平成の新卒採用はやっぱりおかしい」も最近みました)。

思えば自分が大学生の頃から(もう25年前だな)、世間では「やりたいことをやる」のが大事とは言われ続けているものの、実際は「言うは易く行うは難し」で、そこまで「やりたいこと」がないので「まぁ、言われたことをちゃんとやっておくか」というタイプの人が増えたのかな、と思います。まあ、私もその一人ですが(笑)。

そして、五十嵐さんが紹介された動画の一つに日本のSociety 5.0について経産省が数年前に作成したものがありました。

上記の動画なんですが、お年寄りと若者が出てくるのですが、大人がほぼ出てこないんですよね。「未来が楽しみでしょ?」って言われてゾッとしました(笑)と五十嵐さんは言っていました。

今の子供がAIやロボットに仕事を奪われる…と心配するよりも、言われたことをちゃんとやることしか出来ない大人がAIやロボットに仕事を奪われるってことか…。経産省もなかなかエスプリの効いたメッセージを入れ込んでたんだなぁ。

とか言いながら自分もヤバいな…、日々勉強しなきゃと思い直したのでした(関連してこんな記事“オッサンの経験知”が通用しない時代が到来もオススメです)。

ニュースレターはじめました。テクノロジーと国際開発(ICT4D)に関する新規ブログ記事・海外ニュース・イベント情報などを月1〜2回発信しています。以下フォームからご参加ください。詳細はこちら

フォローする
イノベーション・新技術セミナー・イベント教育・人間開発
ICT for Development .JP

コメント

  1. […] こんなニュースも興味深かったです。 AIやロボットに仕事を奪われるのは大人https://ict4d.jp/2020/02/23/ai-robot-otona/ども、Tomonaritです。ICT4D関連での講演や授業をすることはちょいちょいあるのですが、2月15日(土)に中央区城東小学校というところで、父兄向けに「中央区家庭教育学習会:~2020年のプログラミング教育小学校必修化に向けて~」とい […]

タイトルとURLをコピーしました