ども、Tomonaritです。African Develpment Bank (AfDB)がアフリカにおける第4次産業革命(4th Industrial Revolution: 4IR)の可能性についての報告書「Potential of the forth industrial revolution in Africa」を2019年10月に出していました。韓国のKOICA(韓国における日本のJICAのような援助機関)が支援して実施した調査です。この中からいくつか気になる点を抜粋してみます。まぁ、個人的なメモのような感じですが。
1.概要
この報告書では、まず取り扱う分野とテクノロジーを以下のように絞り込んでいます。
【 分野】
農業、電力、産業(工業)、地域統合(英語ではRegional IntegrationとなっているのですがSmart Cityを含めたもの)、福祉(英語ではWellbeing)
【 4IRを代表するテクノロジー 】
IoT、Big Data、Addictive Manufacturing(3Dプリンタでの付加製造)、AI、ドローン、ブロックチェーン
そして、「分野 ✕ テクノロジー」という整理で、どの分野でどのテクノロジーがどんな風に活用できるのか?ということが論じられています。特徴としては、活用だけでなく「Potential」ということで、各分野・テクノロジーにどれくらいの投資が集まっているのか?ということが記載されてい点。アフリカのイノベーション・ブーム、スタートアップ・ブームを反映した内容なのだと思います。また、アフリカが4IRの恩恵を受けるためには、今後5年間の間にどんな取組が必要なのか?という点については、政府(National Governments)、仲介機関(Intermediary Organizations)、援助機関(Donors)の役割を提言しています。以下がそんな報告書の全体像を示している図。
あと、ケーススタディとして取り上げた調査対象国は、カメルーン、モロッコ、ナイジェリア、南アフリカ、ウガンダ、インド、韓国(インドと韓国は比較対象として)。これらの国については、別ファイルのケーススタディ・レポートがリリースされています。
2.Executive Summaryからの抜粋
Executive Summaryから、以下、いくつか気になる点を抜粋します(毎度のことながら、日本語訳は完全じゃないので、関心のある方はオリジナルの報告書をチェックするようにして下さい)。
- 4IRの影響についての定義みたいなの。WEF(World Economic Forum)で言われていたんだなぁ。「This Forth Industrial Revolution with its agile growth is characterized by a fusion of technologies that blurs the lines between the physical, digital and biological spheres and that disrupts the industries of all countries」(P13)
- 2015年時点の調査(by WEF)では、2018年までに3500のテック系スタートアップがアフリカに誕生し1 billion USD(10億ドル)の投資が集まると予測されていた。実際は、2019年時点で6500のテック系スタートアップが誕生し、2.27 billion USD (22.7億ドル)の投資が集まっている。このうち約10%の712社は4IR分野のソリューションを取り扱っており、合計の投資額は210 million USDにおよぶ。(P16)
- アフリカから4IRテクノロジーは生まれないが、他国で開発されたテクノロジーを利活用することは出来る(Adopter rather than Producer)。(P16)
- 2019年までに100 million USD以上がアフリカのIoT関連スタートアップに投資されている。(P16)
- 2019年までに9.5 million USD相当の投資がアフリカのBig Data関連スタートアップに投資されている。(P16)
- 2019年までに47 million USDの投資がアフリカのAddictive Manufacturing(3Dプリンタでの製造)分野に投資されている。アフリカの Addictive Manufacturing 市場は2016年時点では300 million USDだったが2022年には1.3 billion USDとなる見込み。(P16)
- アフリカにおける4IRテクノロジーとしては、IoTとAddictive ManufacturingがツートップでAI、ドローン、ブロックチェーンについては、まだそこまでではないが、AI分野で17.5 million USD、ドローン(ソフトウェア)分野で7.9 million USD、ブロックチェーン分野で14.9 million USD、という投資額(いずれも2019年時点)になっている。(P16)
- アフリカが4IRの恩恵を受けるためには以下の課題(Challenge)がある(P16~17)
- Human capital initial training and retraining: 人材育成(技術だけでなく、ビジネススキルも)
- Governance, policy and regulations: 啓発活動、デジタルデバイド対策、情報セキュリティなどなど
- ICT markets:インターネットインフラ整備、インフォーマルセクターどうする?など
- Entrepreneurial and innovation support systems: 大学などでのR&D不足、テックハブやインキュベータ不足など
- Access and diversity of financing: 特にSMEの資金調達が困難など
- アフリカが進む道(3つのシナリオ)(P17)
- ダメダメの道:4IRの恩恵を受けられずに終わる…
- ベターな道:リープフロッグで4IRの恩恵を受ける。リープフロッグと言っても、ICTインフラ整備という第三次産業革命(IT革命)のステージは経る必要がある。この道を目指すのが現実的だが、それでも実現のためのハードルは低くはない
- アンビシャスな道:4IRのProducerとなる!しかしかなりアンビシャスでそこに至るまでにはかなり大きなHuman Capital Gapを埋める必要あり
以上がExecutive Summaryからの抜粋でした。報告書では「ベターな道」を目指すための提言がまとめられています。
3.その他、気になった点
Executive Summary以外からその他、気になった点を以下抜粋します。
- アフリカ大陸は世界人口の16%を占める一方で、GDPは世界の4%しかしめていない(P26)
- 世界のbillion-dollar companyのうちアフリカの会社は1%以下(P26)
- Readiness diagnostic model framework(4IRへの準備状況を測るための指標(フレームワーク))(P53)
- Structure of productionとDrivers of productionという上記のフレームワークを4分類に分けたときに、アフリカの多くの国は左下(nascent:新生)に位置する。南アフリカ、チュニジア、モーリシャス、エジプト、モロッコのみが右上(leading)に位置する。(P54)
4.最後に
正直、「アフリカで第4次産業革命!?製造業そんなないでしょ…?」という印象もあったのですが、 4IRと言っても製造業だけではなく、農業、教育、保健、といった分野・市場のポテンシャルや、各テクノロジー活用にかかるアフリカのSWOT分析なども、 まだまだ面白い情報が掲載されている報告書でした。もう少し読み進めてみようと思いますが、取り敢えずこの辺で。
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