こんにちは、狩野です。最近では開発途上国、その中でも特にLDCs (Least Developed Countries) においてもICTの活用が注目されており、数多くのインターネットやスマートフォンを通じたサービスが検討・提供されています。
では、最近のそれらの国のICTデバイス普及状況や通信状況はどの程度になっているのでしょうか?それに応えるようなレポートが国連機関のITUから発行されましたので、そちらを簡単に紹介してみようと思います。
レポートの原著はこちらです。
Facts and Figures: Focus on Least Developed Countries

まず、本レポートの構成は以下のようになっています。
- ブロードバンド契約状況
- モバイルネットワークのカバー率
- 価格感(Affordability)
- モバイルフォンの保有率と契約率
- 国際的な帯域の利用状況
- LDCs間での格差
細かいデータやグラフはレポートを見てもらうとして、以下では私が気になった部分のみ紹介していこうと思います。
LDCsではまだ36%の人しかオンラインになっていない
世界平均では66%がインターネットに接続されていると言われていますが、LDCsではいまだ36%と半数以上はオフラインな状況です。この人数は7億2千万人に登ります。そして、多くの国ではCOVID-19のパンデミックがインターネット利用者を急増させるきっかけとなった(2020年から2021年で倍増)と言う統計結果が出ているのですが、LDCsでは大きな変化は見られなかったようです。
インターネットの男女格差は変わっていない
2022年時点でLDCsの43%の男性はオンラインとなっている(2019年は28%であった)。一方、LDCsの女性のインターネット利用は30%に留まり、2019年から男女格差は縮まってはいない。
都市エリアでもインターネットのカバレージは低く、地方はさらに遅い
LDCsでは1/5の都市部在住者が現時点でもまだ3G通信しかできていない。地方部に行くと、13%の人口は携帯電話が届いておらず、次の13%は2G通信のみ、つまり26%は3G通信にすら届いていない。
高価なインターネットアクセス
UN Broadband Commissionは月のブロードバンド料金はGNP per capitaの2%以内であるべきとしている。(注:日本で言うとGNP per capitaが$43,000程度なので、その2%で$860。つまり月10万円程度という計算。)この目標値を満たしているLDCsはバングラデシュとブータンの2カ国しかなかった。
携帯電話の保有率の高さとブロードバンド率の低さ
2022年、58%のLDCsの人々は携帯電話を持っている。これは世界平均の73%に(他の指標に比べると)近い。一方、モバイルブロードバンドについては世界平均とLDCsでは大きく差がついている。また、男女格差もあり、LDCsの男性は68%が携帯電話を保有しているのに対し、女性は48%に留まる。
LDCs内での広がる格差
LDCsの中でも通信環境の差が大きい。ITUは大きく4つのグループに分けられると述べています。
- グループ1:ブータン、カンボジア、ジブチ、ラオス、レソト、モーリタニア、ミャンマー、サントメプリンシペ、セネガル、ツバル
これらの国の通信状況は世界平均に近い。男女格差も同様である。しかし、価格については月額がGNP per capitaの2%という国連の目標には達していない。 - グループ2:バングラデシュ、ネパール
インターネット利用、携帯電話保持、携帯電話登録率は低く、男女格差も大きい。一方、インターネット利用料金については、国連目標に近づいている。 - グループ3:アフガニスタン、アンゴラ、ベナン、ブルキナファソ、コモロ、エチオピア、ガンビア、ギニア、擬似アビサウ、ハイチ、キリバス、リベリア、マラウイ、マリ、モザンビーク、ルワンダ、ソロモン諸島、スーダン、タンザニア、東ティモール、トーゴ、ウガンダ、イエメン、ザンビア
LDCsの多くを占めるこのグループではインターネット利用などが低い上に、インターネット利用料についてもまだまだ改善が必要な状況である。 - グループ4:ブルンジ、中央アフリカ、チャド、DRC、エリトリア、マダガスカル、ニジェール、シエラレオネ、ソマリア、南スーダン
ICT指標はLDCsの中でも最も低いレベルである。携帯電話の保有率は50%以下であり、月額インターネット利用料金がGNP per capitaの10%を超える状況である。
今回はレポートを読んだ際に、気づいた点のみに備忘録として触れていますが、レポートの方にはグラフや表などの詳しい情報もありますので、細かいデータを知りたい方は、ぜひ原典にあたってみてください。
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