USAIDのICT Digital Strategy

イノベーション・新技術
https://www.ictworks.org/より

ども、Tomonaritです。在宅ワークで家の椅子に座る時間が長く、お尻&腰が痛くなってきました・・・。

さて、ICTWorksにUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)のデジタル戦略最新版(2020〜2024年)が紹介されていました。コロナの影響で、遠隔医療や遠隔教育のニーズが高まっているこのタイミングでDigital Strategyを改訂するとはうまいなUSAID(偶然かな?)。どんな感じなのかなぁ?とチラ見したので感じた点を書いて見ます。

1. Vision

まず、以下図の通りPDMのような構成になっています。

USAID Digital Strategy 2020-2024 p28から一部抜粋

Visionは、相手国の開発をデジタルを活用して支援いくという一般的なことが書かれています。個人情報保護や表現の自由、民主主義促進という観点についても触れているのは良いですが、それを敢えて「アメリカ的価値観」としてアピールしているのが若干鼻につく感じが(笑)。また、本題とはちょっとずれますが、支援対象国のことをDeveloping countriesやCounterpart countriesじゃなく、”Partner countries”という表現している点や、「開発」とか「発展」を、Developmentじゃなく”Journeys to Self-Reliance”という表現している点が良いなぁと感じました。

2. Goal, Strategic Objective

Goalは、「Measurable development and humanitarian-assistance outcomes and increase self-reliance」に寄与する「Sustain, secure, and inclusive digital ecosystem」の実現、といった感じで、2つの要素(その下に書かれているStrategic Objective(SO)1とSO2)を1つにまとめた感じになっています。

3. Intermediate Result

Goalの実現に向けて2つの目標(Strategic Objective: SO)を達成させることになっており、各SOの下にSOを達成させるための複数の取り組みの成果(Intermediate Results: IR)が記載されています。各取り組みの内容と個人的な印象を以下書いてみます。

  • IR 1: Secure and appropriate use of digital technology across USAID’s programming improves measurable development and humanitarian-assistance outcomes
  • IR 2: USAID’s partner use effective approaches to engage with the digital ecosystem responsibly

SO1に紐づく上記2つは、デジタル技術を活用して行こうという一番の柱と、そのためにパートナーと協力にやってこうということかと思います。

  • IR 3: Communities in partner countries adopt, and have the capacity to securely use, and contribute to, digital ecosystems for improved services, economic opportunities, and civic engagement
  • IR 4: Improved commitment and capacity in partner countries foster digital ecosystems that align with established global best practices
  • IR5: Digital economies led by the private sector are competitive, innovative, responsible, and inclusive

SO2に紐づく上記3つは、ユーザのキャパビルや誰もとり残さない配慮、デジタル技術導入においては世界標準・規格を考慮すること、民間主導のDigital ecosystemとすること、と言った点が挙げられています。

4. Sub-Intermediate Result (Sub-IR)

そして、上記5つのIRを実現するための個別の活動成果(Sub-IR)が以下のようになっています。

USAID Digital Strategy 2020-2024 p28から一部抜粋

5. 感想

個別の取り組みを1つ1つ見ることはしませんが、全体通じて感じたポイントは以下3点です。

Principles for Digital Development

このStrategyの中で何度か参照されている「Principle for Digital Development」というものあります。この説明は以下の通りですが、一言でいうとDigital Developmentを進めていく上でのガイドライン(Design with the user, Understand the existing ecosystem, Design for scale, など9つの分野に分けてガイドラインをまとめている)。

The Principles for Digital Development are nine living guidelines that are designed to help integrate best practices into technology-enabled programs and are intended to be updated and refined over time. They include guidance for every phase of the project life cycle, and they are part of an ongoing effort among development practitioners to share knowledge and support continuous learning.

https://digitalprinciples.org/about/

世界銀行やWHOといった国際機関、GIZやSIDAなどバイの援助機関、オックスファムやWorld VisionなどのNGO、IBMなど民間企業といった多くの団体(200以上)がこのガイドラインを是認しています。このようなルール作りというかプラットフォーム作りというか、こういうのは流石アメリカと思います。

USAID職員のデジタル技術に関するスキル向上

Sub-IR 1.4として「Agency staff demonstrate awareness of, and competence and capabilities in, digital development」があります。で、どんなことをするのかと読んで見ると、”Executive Fellowship Program in Digital Development”という人材育成プログラムを実施するとありました。これは、USAID職員をThe Center for Digital Development (CDD) of the U.S. Global Development Labという研究機関に出向させ、その後、民間企業(IT企業やシンクタンク)に出向させることで、USAIDのDigital Developmentを牽引する人材を中期的に育成するというもの。他にもCDDからアドバイザーを迎えると言ったことも。やはりデジタルを理解する人材を内部に抱えることは重要だと思います。

エコシステム

このStrategyでもそうですが、Digital ecosystemという言葉が頻繁に聞くようになったと感じます、最近。たまたま国際開発ジャーナル2020年4月号を読んでいたら、インドでインパクト投資をするアービシュカー・グループの記事がありました。

これまでの投資ビジネスは新薬開発とかITの開発リスクをとってきた。だが、アジアが抱える問題は既存のテクノロジーを使って商品やサービスをいかに届けるかというデリバリーの問題だ。例えば、インドの食糧自給率は高いが食べるものに困っている人が大勢いる。この問題を解決する上で必要なのは、食料を必要とする人に届けるための障壁を一つ一つ解決していくことだ。技術やモノではなく、必要なのはお金と知恵とサステナブルでスケーラブルなビジネスモデルだ。

国際開発ジャーナル2020年4月号「求められるハイリターン」p38より

最後の「技術やモノではなく、必要なのはお金と知恵とサステナブルでスケーラブルなビジネスモデルだ」という点が示すように、単純に「テクノロジーがソリューションとして、ポンっ!とハマる」課題はあまり多くなく、エコシステム形成による(SDGsにも繋がる)持続可能な形のソリューションが求められているということですね。そしてそれゆえにパートナーとの連携が必要。USAIDのDigital Strategyでもこの点が反映されていると感じました。

以上、USAIDのDigital Strategyのご紹介でした。あくまで斜め読みの個人的見解なので、関心のある方は是非、ご自身で読み込んで見て下さい。「ここ解釈間違ってるよ!」とかコメント大歓迎です!

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コメント

  1. 山本 より:

    全然タイムリーじゃないんですが、とてもとても面白かったのでコメントさせて下さい。

    Tomonaritさんの言われる”単純に「テクノロジーがソリューションとして、ポンっ!とハマる」課題はあまり多くなく、エコシステム形成による(SDGsにも繋がる)持続可能な形のソリューションが求められている”という所激しく共感します。僕の見た案件ではテクノロジー活用を前提とした”Sustaibable business environment”とか”sustainable business model”という表現も究極的には同じような事を目指しているのかと思います。

    一方で採用でビジネス感覚をあまり問われない事も多い職種で、公務員的な人が多い開発機関・団体(かつ自国で政策立案・実施のソリッドな知見がある人も結構少ない?)でコスト対効果に見合ったやり方でエコシステムを作るのって難しいんだろうなとも思ったりしています。研修などは勿論大事ですが、エコシステム構築に本当に何が必要か?とかは現地の現状把握に加えて実際のビジネス経験とかがものをいう事もあるでしょうし、かなりレベルの高いサービスが求められますね。。。

    その点、単発で技術を持って行ったりパイロット事業実施ってまだ仕組みが比較的わかりやすくて、技術の部分はその道の専門家やコンサルタントに参画してもらって、企画・実施側はlearning-by-doingでも何とか実施は出来てたのかなと思いました。

    エコシステム作りはかなり大掛かりなトピックに聞こえます。テクノロジーを活用して、意義があり尚且つ自分に出来る事(実際はこれが一番のバリアになってる気がします)は何かと自問自答の日々です。。。

    • tomonarit より:

      山本さん
      コメントどうもありがとうございます! 私も山本さんの意見に同意です。ビジネスをしていない公的機関が中心・意思決定者になって、ビジネスとしてサステナブルなエコシステム作りを支援する、というのはなかなか難しいですよね。そもそも日本にもそういう経験が豊富にある訳ではないと思いますし。ピンポイントでテクノロジーを使うならば、その分野の専門家の力をピンポイントで借りるということで対応可能ですが(教育プロジェクトでモバイルラーニングを導入するとか、防災のプロジェクトでGISを活用するとか)、エコシステムとなるとちょっと違いますもんね。
      教師経験がなくても教育プロジェクトに貢献できるし、医者じゃなくても保健プロジェクトに貢献できるように、ベンチャーキャピタルでも起業家でもない自分が、どうやってエコシステム作りに貢献できるのか?という点は、私も日々悩んでいるところです。お互い自問自答しつつ頑張りましょう。

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