Mobile for Developmet

ICTlogyというICT4D関連のブログ(by Ismael Pena-Lopez氏)を読んでいたら、面白い記事を発見。

携帯電話が途上国開発のツールとして注目を集めていますが、Development Cooperation 2.0: II International Meeting on ICT for Development Cooperation という会議でも携帯電話に関する議論が。

Microsoft Research Indiaの日本人、Kentaro Toyama氏は、
「ICT4Dプロジェクトでも、まず一番の目的として「人間の開発」があるべきで、「テクノロジーの利用」は、あくまでも二番手の目的であるべき。それがどうしてか、M4D(Mobile for Development)の試みでは、まず「テクノロジー利用ありき」というふうに、優先順位が逆転してるのではないか?技術じゃなくて人間の開発が目的でしょ。それなのに、15年前にテレセンタープロジェクトがもてはやされたように、今は携帯電話神話がはびこっており、携帯電話を利用したM4Dプロジェクトに資金が費やされている。」といった発言をしています。

テレセンタープロジェクトはドナーが資金を費やして実施したのに、その多くが失敗に終わっています。その失敗の教訓は、「テクノロジーありき」では、開発プロジェクトは失敗するということだったのに、どうして携帯電話を利用したプロジェクトでも、同様の失敗を犯すのか?というのがToyama氏の投げかけ。さらに、Toyama氏は、テレビやラジオといったツールの方が、より普及しているしコストも安い。そういったツールにももっと注目しても良いだろうとも提案してます。要は、M4Dには「過大広告」がついているということ。

それに対して、世界銀行のOleg Petrov氏は、
「昨今のM4Dの盛上がりは、「過大広告」ではなくて「大きな期待」なんです。携帯電話も数あるツールのひとつで、テレビやラジオと同じだけど、新しいから今はどうやったらその新ツールを上手く使えるのかを調査する試みが必要なのです。だから、教育や保健といった様々な分野でM4Dプロジェクトが実施されているのですよ。」というような返答。

また、W3CのStephane Boyera氏は、

「人間に注目した開発ありきで考えるのが開発業界の人々の性であるように、テクノロジー業界の人は「テクノロジー利用ありき」と考えるが自然とも言える。要は、これまでは開発に興味のなかったテクノロジー業界の人たちが、開発分野にも進出してきたこということで、M4Dへの期待は「過大広告」ではない。テクノロジー業界の人たちは、人間を無視しているのではなく、テクノロジーを通じて人間に注目しているのだ。」といった発言。

一方、NokiaリサーチセンターIndiaのJan Blom氏は、
「インドのタクシー運転手が、携帯電話を使用してGPSで地図情報を得られるようになったけど、地図の見方を知らない運転手には何の役にも立たない。」といった話を披露。

Technologyありきじゃ駄目、まずはHumanに注目しないと本当のニーズを知ることや、本当に役に立つIT利用を実現することは極めて困難と良く良く言われていますが、開発業界人間ばかりでは、「どういうTechnologyが選択肢として使用可能なのか」がわからず、もしかしたら不適切なTechnologyを選択してしまうかもしれないというリスクもある。結局、どちらの視点も必要で、そのバランスを取ることが重要になってくるのかと思う。

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コメント

  1. […] 15年前のエチオピア遠隔教育、10〜5年前のOLPC(ルワンダ等)、そして、ケニアのタブレット、と、今も昔も所変われど同じ課題で同じようにつまづいているのか…、と過去から学んでいない(勿論、過去の教訓は考慮しているはずだけど、不十分)ICT4D分野に「なぜなのか?」かと改めて感じました。「ICTはソリューションじゃなくてそれを使う人や環境の整備がないと役に立たない」という議論は20年前から今でもずーっと続いているというのに。以前、もうこの議論は時代遅れじゃないか?と思っていたのですが、「歴史は繰り返す」ということで、訴え続ける必要がある議論なのかも、と改めて思いました。 […]

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