国際開発ジャーナルの記事で、「USAIDがクラウドソーシング」というものがあった。なんだろ?と思って読んでみると、USAIDが都市開発プログラムなどで、白地図上に一般のボランティアから、色々と情報を書き込んでもらって、情報満載の地図を作成し、それを都市開発計画に活用していく方法をとるという内容だった。当面は、フィリピンやモザンビークのプロジェクトで使われるらしい。
なるほどーと思い調べてみたら、“USAID Welcomes the Crowd to Use Geo-Mapping Tools for Open Source Development”という記事がUSAIDのサイトにあった。オープンソースソフトウェア(OpenStreetMap)を用いて、クラウドソーシングを活用して地図上に色々と情報を追加する取組は、2012年に開始されている。
UshahidiやSahanaの例からも想像が出来るように、現地の人達の視点で入力される情報は貴重であるし、携帯電話やインターネットの普及でこういうアイデアが「絵に描いた餅」じゃなくなったんだと思う。以前よりも多くの情報量を簡単に収集できるという点、そして、現地の人々を巻き込んでいけるという点で、優れた試みだと思う。
そういえば、世銀とGoogleの連携も過去にあった。(「世界銀行と米Google、「Map Maker」による途上国の地図作製で提携を発表」)
一方で、ふと一昔前の電子政府(Eガバメント)が流行ったときの電子掲示版とか、ミクシィにあやかった地域活性化用SNSのブームに似た違和感も感じる。電子掲示板を作ったけど全然盛り上がらないとか、地域活性化SNSを構築したけど閑古鳥が鳴いている…といった市町村は少なくない。また、電子掲示板とか今ならツイッターなどで、一市民が意見を述べることが、どれだけ国の政策決定に影響しているのか?は謎である。
途上国の電子政府という観点からいうと、意見を述べるプラットフォームは整備されて、誰もが意見を述べられるようになったけど、政策決定権者はその意見を参考にはしないということはある。また、一部の人達(場合によってはサクラということも)の意見のみが全面に出される可能性もある。
途上国の都市開発という勝者と敗者(強者と弱者)が顕著に存在する領域で、こういった地図がどういう使われかたをされていくのか、興味深い。
コメント
USAIDらしく、現存する仕組みの素直な流用、変にカスタマイズしない活用、がキーなんでしょうね。できるだけ多くの一般利用者(情報提供者)を取り込むには、利用に際して学習が必要になってしまう独自の操作性や、(お役所が求めがちな)やたらと多い入力項目は邪魔になるだけなのかも。
「使わせる」から「使ってもらう」ための工夫は、ITシステム作成側の個人的努力や、当局による制度の押し売りではなく、マーケティング的なアプローチ(一般に受け入れられる仕組みづくり、イノベータとアーリーアダプターの確保)に収れんするのかな、と。
Webサービス系ベンチャー企業では、開発者や創業者より、マーケッターの方が給与が高いケースが多いのもさもありなん。
地図と都市問題の組み合わせでは、英国から広まったFixMyStreetが有名ですね。道路の陥没など地域社会の課題を市民が携帯で報告して、行政や市民同士で解決を行う仕組みです。単純に行政v.s.市民でないところば素晴らしい。
お二人とも、さすが博識コメント、ありがとうございます!官がやると面白味がなくなってしまうなら、民の作った仕組みをそのまま利用しようという姿勢は学ぶ点がありますね。
M-PESAのようなモバイルバンキングもUshahidiのようなアプリも、官じゃなくて民(民間企業・市民活動)主導ですもんね。
官 vs 民でなく、官 x 民 ってな連携が大切ですね。