オンライン教育は留学の代わりになるのか?

アカデミック

こんにちは。Kanotです。4月12日の投稿で国際学会CHI 2018でポスター発表すると書きましたが、せっかくなので、その内容を簡単に紹介させてください。

発表タイトルは「Can HCI Replicate the Intangible Gains of International Exposure? A Case Study in Rwanda.」で、日本語にするなら、「HCI(Human Computer Interaction)は国際経験によって得られる無形資産を再現できるのか?ルワンダのケーススタディから」です。もっと具体的に書くと、昨今MOOCs(オンラインで先進国の大学の授業を受けられるサービス。EdXCourseraが有名。)が増えてきていますが、その教育で留学するのと同等の学びは得られるのだろうか?という問いかけです。

手法としてはシンプルで、(1) ルワンダから他国に留学予定の人に「留学で何を得たい?」と聞いたものと、(2) ルワンダに戻った留学経験者に「留学で何を得た?」と聞いた答えを比較したものです。結果としては、(1)のグループの全員が「技術、知識、人脈」といった直接的な成果を挙げた一方、(2)のグループの大半が「品質の大切さ、納期の大切さ、先進国の工夫」と行った「実体験に基づく考え方の変化」を挙げました。

このことから、留学の最大の成果は、「技術、知識」ではなく「実体験に基づく考え方の変化」であると考えられ、現在のMOOCsは「技術、知識」にフォーカスしたものがほとんどである以上、留学の代わりにはならないだろう、と結論づけました。

確かに私の実感としても、留学で得たことの大半は、いくら日本で本読んで授業受けても得られなかったであろうと感じます。

このショートペーパーの次のステップとしては、その「考え方の変化」にあたるものを(テクノロジーを用いた)トレーニングなどで代替することがどこまで可能なのか、どうやったらできる可能性があるのか、などを探って行く予定です。それによって、途上国から(主に経済的理由で)出れない人たちにテクノロジーの恩恵を使って少しでも留学体験に近い成長をするチャンスを与えられないかなぁと考えているところです。

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コメント

  1. TOSHI より:

    多分オンラインでは「プルーストエフェクト」は生じないから、全く異種の経験になるのでしょうね。行った土地の名前の響きや空気の匂い、日差しの感触や握手した時の手の握る力の入れ具合、そういった非言語的経験が「意味」を持っているのだと私は思います。

  2. Kanot Kanot より:

    プルーストエフェクトという言葉があるんですね。なるほど、そういう経験はMOOCSどころか、VRなどでも再現が難しいですね。

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