ITは若者に希望を持たせる

ITとカースト インド・成長の秘密と苦悩」(伊藤洋一 著)という本を読んだ。
たまたま古本屋で見つけて、なんとなく購入した本だけど、なかなか面白かった。きちんとしたリサーチというよりも、インドについて著者の思うところを読みやすくまとめた感じの本。

特にインドでIT産業が発展した理由を、インドのカースト制度と関連づけて説明しているのは興味深かった。
身分や職業が生まれながらにして固定してまうカースト制度。そして、上級カーストの人々は自分の地位を代々守ろうとするために、上級カーストに有利な仕組・制度が出来上がっている。さらに、「来世のために現世の苦難には耐える」というヒンドゥー教のために、下克上が起こり難いのがインド。そのインドで、ITが下級カーストの貧困層に希望の光を与えている。なぜなら、新しい産業であるIT業界では、カーストに関係なく、出来るやつ・実力のある者が仕事を取って、金持ちになれるから。

著者が取材で中高生くらいの学生たちにインタビューをした様子が記載されているが、貧しい層の学生達はみんなが、「ITエンジニアになりたい!」と思っている。「ITエンジニアになって、金持ちになり、家族や故郷を良くしたい」と考えている。勉強した良い大学に入り、ITエンジニアになって外国で働き、故郷に錦をかざるというサクセスストーリーが実際に起きているからだ。

この本を読んでみて、これまでは、下層カーストの貧困層の若者は希望を持つことが難しい状況だったが、IT産業の出現によって、希望を持てるようになったという点が、実はインドIT産業発展の一番のメリットなんじゃないかと思った。若者のモチベーションUpというのが、国の未来にとってすごい大きな要素だと感じる。
エチオピアで高校教師をしていたとき、生徒に将来の夢を聞いたことが何度かあるが、「外国に行きたい」というのがダントツ1位の回答だった。残念なのは、職業として何かになるというのではなく、何でも良いからとりあえず「外国に行く」というのがゴールになっている点。それだけ、希望の持てる産業がエチオピアにはないってことなのかもしれない。インドのように、「ITエンジニア→金持ち」という具体的な好事例がないのだろう、エチオピアには。そして、「外国に行きたい」が夢では、具体的に勉強を頑張るモチベーションはあまり上がらず、外国人と結婚するとか、DV(米グリーンカードが当たる宝くじみたいの)とか、「なんでも良いから外国へ」ということになってしまうのだろう。

若者に希望を与えているインドのIT産業。ICTの持つ特性は、既存の社会の仕組みを変革するパワーを持っている。ICTは遠隔教育や遠隔医療、モバイルによる農民の所得向上といった、ツールとしてのICT活用だけでなく、インドのように途上国発展の妨げとなっている社会の仕組みそのものを変えるトリガーにもなるのだろう。

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