以前、このブログでも紹介したが、ケニアではローカルWebコンテンツの充実を図るために、ローカルコンテンツを作製する企業や個人に合計4,000,000USDの資金支援を行っている。資金供与先は公募で行われており、以下の4つのカテゴリがある。
- ガバメントサービス系Webサイト部門(企業)
- ガバメントサービス系Webサイト部門(個人)
- プライベートサービス系Webサイト部門(企業)
- プライベートサービス系Webサイト部門(個人)
先日、ガバメントサービス系Webサイト部門(企業)について、このカテゴリに応募された166のプロポーサルから資金供与先(7つ)が決定したとのアナウンスがあった。その7つのローカルコンテンツの内容が、gmeltdownというWebサイトで簡単に紹介されていたので、以下抜粋(もっと詳しい内容は、Kenya ICT BoardのWebサイトへ)。
- Octopus Solutions Limited – HIV and AIDS in the workplace e-Learing Course – To assist implementation of the HIV and AIDS work place policy among civil servants
- Infotrack Strategic Solutions Ltd – Teacher’s Portal – Linking Kenyan teachers with their employer (The Teachers Service Commission)
- iBid Labs – Kenya Online Museum – Multimedia documentation of Kenya’s rich history
- Foundation Support Services (FSS) Ltd – IVR Tax Filing Solution – A multilingual platform for Kenyans to file tax returns based on Interactive Voice Response (IVR) technology
- BTI Millman Company Ltd – eMazingira Software Application – Crowd sourcing application for documenting and collecting information on environmental degradation and abuse using the Ushahidi platform
- RiverCross Technologies Ltd – EDUWEB– To create a comprehensive list and interactive map of all education institutions in Kenya
- JBA Advertising Co Ltd – Lost and Found Project – To assist Kenyans to find their lost official documents such as national ID cards
これだけのアイデアがケニア国内から出てくるということにまず驚いた。ケニアのことはあまり知らないけれど、M-PESAやM-Keshoといったモバイルバンキングサービスが普及していることなどからケニアのICT普及具合は他のアフリカ諸国よりも抜きん出ているのだろう。実際、ICT Workというサイトでも、アフリカではケニアが最もICT政策に力を入れている国として挙げられていた。
ケニアのローカルコンテンツ拡大・活性化が図られていくことが期待できる一方で、本当に期待通りの成果が見られるのかという点に興味が沸く。というのも、「人々情報が提供されること=情報により裨益すること」ではないからだ。情報の価値を測る指標として“CARTA”というチェックリストがある(Heeks, 2006)。
- How Complete:どれくらい情報が完全なものか
- How Accurate:どれくい情報が正確
- How Relevant:どれくらい関連性があるか
- How Timely:どれくらいタイムリーか
- How Appropriately presented:どれくらい適切に示されているか
例えば、地図上に全教育機関をマッピングするという「EDUWEB」。途上国では正確な地図がないケースがあるが、ケニアはどうなのだろうか?また、正確な地図があるとしても、その地図を普通の人々が読めるのか?(→読めるような示し方が出来るのか)といった懸念がある。また、HIVについてのeLearningサイトにしても、そもそもケニアで必要とされているHIVについて学ぶべき内容というのが確立されているのか?(←途上国の教育機関では実務と関連性が薄い理論重視の教育をしている傾向があるが、どうなのか?)という疑問やeLearningの対象者のITスキルに問題がないのかや、そもそもこの目的を果たすのに、本当にeLearningがベストな方法なのか?(→Webサイトは出来たが誰も利用しないといった失敗可能性)という心配もある。
批判的な見方をすると色々と上記のような懸念点があるけれど、それでも、このケニアの試みは凄いと思う。これがどれくらいの成果を挙げるのか非常に楽しみである。
(Reference)
Heeks, R.B. (2006) Implementing and Managing eGovernment: An International Text, Sage Publications, London
コメント
[…] そういえば、以前このブログでもケニア政府がローカルコンテンツ作成支援をしているという記事を書いたが、そんな政府の支援もこういったアプリの誕生の背景にはあるのかもしれない。また、低価格のスマホが普及したのもケニアは早かったのだろう。さらに、これまた以前に紹介したネタですが、ケニアに住むウガンダ人が開発したiCheki(スワヒリ語でI seeという意味)という、タクシーの場所がわかる機能を持つ携帯アプリが、2010年にヨーロッパでの携帯アプリコンテストで賞をとったこともある。ケニア、やるなぁ。 […]