世界銀行 World Development Report 2021「Data for Better Lives」Concept Note【その2】

データ
Source: https://blogs.worldbank.org/opendata/we-would-hear-you-launching-online-consultations-world-development-report-2021-data-better
要約

世界銀行が毎年出しているWorld Development Reportの2021年版はData for Developmentがテーマです。タイトルは、「Data for Better Lives」。そのコンセプチュアル・フレームワーク(議論の土台みたいなもの)を紹介します。

ども、前回に続いて世銀のWDR2021「Data for Better Lives」コンプセプトノートについてです。前回はコンセプチュアル・フレームワークを紹介して力尽きてしまったのですが、今回は、気になる情報&いずれどこかで使いたいフレーズなどをまとめて見ました。矢印以下は私の勝手なコメントです。

  • デジタル革命は今の時代で最も重要な人生を変える出来事かもしれない。しかし、1日1.90ドル以下で生活している極貧の7億人以上の人々にとって、それは何を意味するのでしょうか?(P1)←民間企業ではなく援助機関としては、やはり一番困っている人のためにデータを活用するにはどうするか?を考えて欲しいですね。
  • このレポートの焦点は、データが貧しい国の貧しい人々にどのように利益をもたらすかにある。中心となるメッセージは、データの価値の多くがいまだ未開拓であると言う点だ。(P1)←「いまだ未開拓」というフレーズで盛り上げてきますね。でも、データで何が出来るか?を考えるよりも、●●するためにデータが活用出来るか?というデマンド・ドリブンで考える必要あり。なんとなく「データで何が出来るか?」というサプライ・ドライブになりそうな懸念も。
  • 国家のデータ活用を成功させるための重要な要素は、訓練された職員、データ収集を担う機関の予算的自律性、適切な制度・枠組み、関係機関と接続されたデータベース、国際的なパートナーシップといったものである(P3)←ICTだけじゃダメで、それを使う人、組織、制度、環境など広範囲の要素が重要という点は納得(=Onion-ringモデルの主張と同じ)。
  • GSMAによると、33億人(世界人口の44%)がモバイルブロードバンドネットワークでカバーされている地域に住んでいるが、モバイルインターネットを利用していない(P7)
  • 先進国の研究によると、生産性の向上は、デジタル技術、組織資本、経営スキル、研究開発、無形投資、人的資本、ICT関連スキル、資源の効率的な再配分を促進する規制環境、といった要素の相補性によって促進される(P20)←これも上記と同じような話だなぁ。
  • 異なるタイプのデータを組み合わせることで、よりタイムリーかつ正確な統計を作成することが出来、エビデンスに基づいた政策を推進することができる(P23)
  • 衛星画像、携帯電話、インターネット記録などのデータが利用可能になってきたことで、貧困や付加価値総額などの経済指標を「ナウキャスト」する可能性が出てきており、これらの代替ソースのデータと過去の調査データを組み合わせて、よりタイムリーな推計を行うことができるようになってきている(P24)
  • 例えば、米国医療企業は、米国医療費パネル調査と企業独自のデータを組み合わせてビジネスの意思決定やロビー活動に活用しています。米国企業は一般的に、米国コミュニティ調査と顧客嗜好に関する情報を組み合わせて、地域ごとに店舗の在庫をカスタマイズしています。民間部門のオープンデータの年間利用価値は数兆ドルと推定されています(P25)←公的機関が保有するデータをオープンデータ化する理由がよく理解できました。
  • 例えば、アフリカの農業では、衛星やリモートセンシングデータが作物インデックス保険業のビジネスモデルの中核をなしている。ガーナでは、アグリテック企業が政府の気象・行政データと企業独自のデータを組み合わせて、農家にアドバイスを提供している(P25)
  • 2016年の国別オープンデータ利用事業者とオープンデータの利用可能性の関係(P26)←なかなか興味深いデータでした。SourceになっているOpen Data Barometerのサイトを見ると、「政府が透明性、イノベーション、ソーシャル・インパクトの促進のためにどれくらいオープンデータ化を進めているか?&オープンデータを活用しているか?」というランキングで日本は世界8位ということでした(2016年)。ちなみに1位:英国、2位:カナダ、3位:フランス、4位:米国。
Source: https://opendatabarometer.org/4thedition/.
  • インターネットのトラフィックは、1992年には1日あたり約100GBだったものが、2017年には毎秒45,000GBと劇的な成長を遂げており、2017年から2022年の間に3倍以上になると予測されています。これは、地球上の一人一人が月に50GBを消費することに相当します(P26)←この手の数字を使った見せ方がうまいなぁ。
  • 近代的なデータ・インフラの発展は、デジタル・デバイドが大きく拡大していることからも明らかなように、国の中だけでなく国をまたいでも公平性の問題を提起しています。例えば、2019年初頭、フィンランドの平均的なモバイルユーザーは月に17GBのデータを消費しており、ペルーの平均的なユーザーの約7倍に達しています(P26)
  • 例えば南アフリカでは、人口の99.5%がモバイルブロードバンドの電波が届く範囲内に住んでいるにもかかわらず、デバイスやサービスのコスト、デジタルリテラシーやローカルコンテンツの利用可能性の制限など、さまざまな需要側の障壁があるため、インターネットにアクセスできるのは60%にとどまっています(P28)
  • モバイルの普及率がほぼ全世界に広がっていることから、ユニバーサルアクセスを実現するための取り組みは、サービスの利用を妨げる需要側の障壁(ブロードバンドサービスのコストと速度、端末の手頃な価格、デジタルリテラシー、関連するローカルコンテンツの利用可能性など)に対処することにシフトすべきである(P29)
  • 最後に、イネーブラーとセーフガードの効果的な実施と執行は、適切な機関の法的な確立によって支えられる必要があり、そのガバナンスについては第8章で詳述する。これらへの法的対応の例としては、コンピュータ緊急対応チームやデータ保護当局のような機関の創設が挙げられる(P30)←日本でも菅総理がデジタル庁を設立すると言っていますね。
  • 現在、デジタル経済は世界のGDPの10%を占めると推定されている(P32)
  • 2019年にPathways to Prosperity Commissionが実施した調査によると、開発途上国の政策立案者達が「グローバルな取り組みが最も必要」と強調する分野は、(i)課税、(ii)サイバー犯罪とサイバーセキュリティ、(iii)プライバシーとデータ保護、(iv)市場競争、(v)知的財産権(IP)、(vi)データ共有と相互運用性、である(P36)←いずれも一カ国でどうにかなる課題じゃないですね。ICTで課題はますますボーダーレスに。

以上、気になる情報&いずれどこかで使いたいフレーズなどでした。本当はもう少し事例もピックアップしたかったのですが、長くなりすぎるのでやめておきました。毎度のことですが、論文とかに使う方は自分でオリジナルの文書を見てくださいね。

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コメント

  1. […] さて、「その1」、「その2」と続けたこのシリーズはこれでおしまいです。来年1月にWDR2021「Data for Better Lives」が出るのを楽しみに待ちましょう。 […]

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