ども、Tomonaritです。以前、ちらりと紹介したように、世界銀行が毎年出しているWorld Development Reportの2021年版はData for Developmentがテーマです。タイトルは、「Data for Better Lives」(なんでもかんでも”for Development”とするのではなくて、”for Better Lives”と言うあたりにセンスを感じます)。
今年の5月頃にこのレポートのコンセプトノートが公開されていました。遅ればせながら斜め読みしたので自分自身の備忘録を兼ねて気になる点を以下、書いています。毎度のことながら、あくまで私個人の理解に基づくものなので、論文とかに使う人はちゃんとオリジナルを確認してくださいね!
構成
こんな構成で、Chapter1〜4がPart1、Chapter5〜8がPart2となっています。GSMAによると、世界人口の44%(33億人)がモバイル・ブロードバンド・ネットワークにカバーされている地域に住んでいても実際にインターネットを使用していないそうです。Part1はポジティブにデータ活用の可能性について議論し、Part2は、そのための課題(どうして33億人はインターネットを利用していないのか?みたいな点を含め)についての議論となっています。最終的に「データ活用が重要って言うけど、貧困層にとってそれがどう重要なのか?」と言う点に焦点を当てているところに共感出来ます。
- このレポート全体の考え方を示すコンセプチュアル・フレームワークの説明
- 公的機関によって収集&取り扱われるデータについて
- 民間によって収集&取り扱われるデータについて
- 公的データと民間データの統合とそれによるシナジー効果
- インフラ+人材の課題
- データ取得・活用にかかる法制度整備の課題
- データ取得・活用にかかる政策の課題
- どのように貧困層へデータ活用による裨益効果を届けるか?
以下、軸になるコンセプチュアル・フレームワークをピックアップしています。
コンセプチュアル・フレームワーク
まず「国際開発においてデータ活用が重要」と言われても、「まぁ確かにね。でも幅広いなぁ〜」と言う感じかと思います。WDRではその「幅広いなぁ〜」と言うところを、2つの領域に分けて以下のように分けています。Part1が「貧困層支援にどのようにデータを活用出来るか?」と言う話で、Part2がじゃ、そのための「データを有効活用できる環境とは?」と言う話。
そして、データが開発に活用されるとこんな良いことがあると言うポジティブ面(Part1の部分)を以下のように説明しています。
個人的には下から見ていく方がイメージがわくのですが、まずは企業はデータを活用するとことでサービスの質を高めたり、今までリーチ出来てなかった市場にもアプローチすることが出来る(例:産業発展や困っている層へのサービス提供に繋がる)。真ん中は、政府がデータに基づいてより適切かつタイムリーな政策立案・予算配分・実施が可能になる(例:困っている人への的確なリソース配分が可能になる)。上は、個人やNGOなどが自らデータにアクセス出来ることで政策決定の理由など理解し、政策に対する納得感を得られる。
一方、データ活用を促進すると良いことばかりでなく悪いことも起きるリスクがある、と言うネガティブ面も平等に扱うとしており、以下のようにネガティブ面を示しています。
こちらも下から見ていくと、まずは企業によるデータ独占とか、サービスを享受出来る人出来ない人の格差拡大とか。真ん中は政府による監視強化のリスク。上は個人情報流出とかサイバーセキュリティの問題とか。
そして、ポジティブ面を実現させるためのイネイブラー(Enabler)とネガティブ面に対する対策(Safeguard)をそれぞれインラフ、法制度、政策などの面から提示しています。
以上、WDR2021のコンセプチュアル・フレームワークの紹介でした。このコンセプトノートには、もっと気になるポイントが記載されているのですが、そこは【その2】で取り上げたいと思います。
コメント
[…] ども、Tomonaritです。前回に続いて世銀のWDR2021「Data for Better Lives」コンプセプトノートについてです。前回はコンセプチュアル・フレームワークを紹介して力尽きてしまったのですが、今 […]
[…] さて、「その1」、「その2」と続けたこのシリーズはこれでおしまいです。来年1月にWDR2021「Data for Better Lives」が出るのを楽しみに待ちましょう。 […]