以前から気になっていたバングラデシュ国内のICTサービスに「インフォレディ(Infolady)」というものがあるのだが、ドイツのDeutsche Welleという組織が決めているGlobal Media AwardにこのInfoladyが選ばれたとのことで、当ブログでも紹介したい。
このサービスは、バングラデシュの若い女性を、情報へのアクセスが弱い農村部の住民へ情報屋として提供するというものであり、InfoとLadyは合わさってInfoladyというものである。
こう書くと、ありきたりのサービスのようだが、とてもユニークな点が含まれている。
1. イスラム教国で女性が自転車に乗って村を回るというインパクト
バングラデシュはイスラム教国であり、都市部では女性も会社勤めすることに違和感はなくなってきてるものの、田舎部ではいまだに女性の社会進出へのハードルは低くないのが現状である。その女性が自転車に乗るということ自体がこれまでなかったことであり、自転車で巡回するInfoladyは「働くかっこいい女性」というイメージを作り上げることに成功している。
2. 女性しか聞けないことがある
敬虔なイスラム教徒の中には妻を男性の目には全く触れさせない人などもおり、男性にも女性にも同じサービスを提供できるのは女性だけであり、女性差別を逆手にとったサービスを展開している。
3. パソコンとネットがあれば、よろず相談所になれる
携帯電話のカバレッジこそ9割を越えているバングラデシュであるが、あくまで通話とSMSのツールであり、インターネットは農村部ではほとんど普及していない。つまり、そのような場所でノートPCとネットと検索エンジンを活用すれば、「どんな質問にも答えられるスーパーウーマン」になれるわけである。当初は体重や体脂肪を測定し健康アドバイスをするだけのサービスだったのが、いまではよろず相談所になっており、住民の心をつかんでいる。
4. 提供サービスの柔軟性が非常に高い
ベーシックなサービス内容はあるものの、どのような付加サービスを行うかはInfolady自身に権限があり、柔軟に増減させることが可能になっている。例えば教育コンテンツを携帯している人もいれば、体脂肪計を携帯する人がいるなど。
ビジネスモデルとしては、Infoladyが農村部を巡回し、情報をもらうことに対価を払うシステムであり、体重計って2円、質問をネットで調べてあげて3円、といった具合で少額を積み重ねるまさにBOPビジネスである。実際に成果ベースであるInfoladyの平均収入はダッカの会社員の平均より高い。
こういった社会的ハンデを逆利用することでビジネスとしてしまうこと、外国企業には思いつかない発想である。ぜひ事業を発展させていって欲しいと思う。
リンク: 現地紙 Daily Star記事
http://www.thedailystar.net/beta2/news/Infolady-wins-bobs-award/
コメント
[…] 一昔前、バングラデッシュで携帯電話を貸し出すためのグラミン・レディ(テレフォン・レディ)という取組が始まったけど、固定回線がないような村で携帯電話を貸すことが中心だった。そこから、一歩進んだのがCKWのような取組だろう。依然、このブログでもKnotが紹介したバングラのInfoladyも似ている。グラミン・レディは2006年位に始まったが、携帯端末が行き渡った現在は活動をやめている。携帯貸し屋さんから情報屋さんへの変化。次は何屋さんが出てくるだろうか。 […]
[…] 言わずと知れた携帯電話事業。グラミンフォンはテレノール、グラミン・テレコム、丸紅、ゴノフォンが出資して誕生した。この本を読むまで、ノルウェーのテレノール(←最近はミャンマーの通信事業者に参入するって話題で良く耳にします)や日本の丸紅が出資していたということを知らなかった。しかも株式の61%をテレノールが保有しており、グラミン・テレコムは38%だったとは。 グラミンフォンの取組は「ビレッジ・フォン・プログラム」や「ビレッジ・フォン・レディ」、このブログでも以前紹介されている「インフォ・レディ」など良く知られているので説明は不要かと。面白いのは、「ビレッジ・フォン・レディ」の発送は、牛を携帯に置き換えたという点。マイクロファイナンスで資金を借りて牛を購入し、牛乳を売って返済するというモデルの牛が携帯になったということ。ICTを使ったサービスといっても「牛→携帯」の置き換えがアイデアになっている。他にもこういう視点で新しいICTサービスが出来そうな気がする。 その他にも、「コミュニティ・インフォメーション・センター」というテレセンター的な事業もやってる。(グラミン・テレコムとグラミン・コミュニティも共同で「グラミン・インフォメーション・キオスク」ってのをやっている) […]