Kiva Japanの説明会に行ってみた

このブログでもちょこっと紹介したことのあるKiva。このKivaの活動を日本でも広めていこうというのがKiva. Japanの活動。
Kiva本家のサイトは日本語ではないため、Kiva. Japanはそれを日本語に訳したサイトを作成して、英語が苦手な日本人にも門戸を広げようとしている。

この説明会で始めて知ったが、大和証券がマイクロファイナンス機関への融資を使った金融商品を取り扱い始めたという。驚いた。

また、驚いたこととしては、説明会に来ていた方々の多くが開発業界以外からだった点(あくまで感じた限りですが)。一定数はIT業界の方だったし、質問も「投資」としてKivaを見た場合のものが多かった気がした。マイクロファイナンスやBOPに続いて、「ICT4D」って概念も来年あたり来るなぁ。

開発業界からの方が少ないと感じた理由の一つは、マイクロクレジットの仕組みについて、「あるかなぁ」と思った質問がなかった。それは、マイクロクレジットは無担保で融資するけど、返済の仕組みは結構シビアだという点。

多分色々な方法があると思うが、自分が知っているマイクロクレジットの仕組みはこんな感じ。お金を出す機関(MFIと総称される)は、融資するときに借り手にグループ(4~5人)を作るように指示する。そして、そのグループのメンバーが順番に融資を受けるようにする。グループのメンバーは、他のメンバーが借金を踏み倒した場合、その借金を肩代わりする決まりになっている。ここがポイント。つまり、借り手である貧困層にある人々は、返済能力のない者とグループを組もうとは思わない。なので自然と、貧困層のなかでも、ある程度返済能力のある者同士がグループを組むことになる。(→返済不履行の可能性が減る)

また、グループのメンバーが融資を受けるのは順番で、前のメンバーがきちんと返済しない限り自分の番が来ない。つまり、仲間内でシビアなモニタリングの目が光り、さらに、融資を受けたメンバーは「返済しなきゃ!返済できなかったら仲間から恨まれる・・・。」とプレッシャーを感じて、頑張れるというわけだ。(→返済不履行の可能性が減る)この仕組みは、モノ(土地や家畜など)を担保にしない代わりに、「人間関係」を担保にしているとも言われる。

しかしながら、批判もある。そもそもある程度返済能力があるもの同士がグループを組むわけなので、本当に困っている者はグループに入れない可能性が高い。そしてそれは、貧困層の中での格差を生むのでは?といった点だ。また、返済に困ったときに、仲間からのあまのプレッシャーに耐え切れず自殺した借り手がいるという話を、グラミン銀行について書いたある論文で読んだことがある。

ここで言いたいのは、マイクロクレジットが悪いってんじゃなく、マイクロクレジットにも良い点・悪い点の両方があるということ。そして、マイクロクレジットの結果がどう転ぶかは、現場のMFIに大きく左右されるという点。(Kivaも貸し手を増やすよりも、現場の方へ注力する方針であるらしい)

説明会では上記のようなマイクロクレジットの負の点は、特に質問であがらなかったので、開発業界からの参加者は少数派だったのかと感じた。Kivaの仕組みは凄くすばらしい。大和証券のような会社が上記のような金融商品を取り扱い出したのも、貧困層への融資という考え方が一般的に注目を浴び始めたことが関係しているだろうし、そういった意味でもKivaの効果ってのは凄いプラスだと思う。でも、上記で述べたような側面があるという点は、ちょっと知っておいたほうが良いかと思う(貸し手と借り手をつなぐ役目であるKivaの課題ってよりも、マイクロクレジット自体の課題だけどね・・・)。あと、やっぱり色んな取り組み(ビスネス、チャリティー、ODA、etc)のコンビネーションが貧困削減には重要だと思うッス。

しかし、Kiva Japanの活動は凄い頑張っていて好感がもてた。自分もなんかやんないとね。。。

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コメント

  1. Kivaで途上国に融資…

    途上国へのP2Pなマイクロファイナンスを 実現しつつあるKivaという団体の説明会に、 友人たちと一緒に行ってきました。 ・ Kiva Japan ・ 日経ITproの記事 マイクロファイナンスについては、 以下の記事を見ると理解できると思います。 ちなみに、賛否両論あります。 ・ …..

  2. Non より:

    こんにちは。はじめてコメントさせて頂きます。私も最近マンチェスター大(MSc Development Finance)留学から戻り、つい先日からJICAで働き始めました。(Makiさんとは先日対面させて頂きました)。今後とも宜しくお願いします。

    本題なのですが、私も確かに援助業界ではマイクロファイナンスの負の側面というのはあまりフォーカスされていないことを日々疑問に感じておりました。マイクロファイナンスは貧困削減ツールであるけれども、極論を言えば結局は金貸しです。援助関係者は「お金を出してあげたからこれで大丈夫、めでたしめでたし」ではなく、貧困層にとって本当に効果のあるものかを仕組み作りから検討する必要があると思います。でなければ、今までの援助と何も変わらなくなってしまうので。。

    貧困層がビジネスを始めるためにお金が必要ならば、そのビジネスは本当に持続可能なものなのであるか、またそれによる弊害を見極める必要があると思います。それはその土地や文化によって大きく異なるものだと思います。

    例えば、ある途上国ではカゴなど民芸品を作り販売するビジネスがあったそうで、マイクロクレジットにより資金付けしたけれども、そもそも観光客があまり来ない地域だったため、まったく売れず商売にならなかったとか。そして他にも負の側面としては、バングラでは女性がマイクロファイナンスにより自立をする一方で、夫婦関係がうまくいかなくなり(夫が稼ぐ妻を心良く思わないため)、離婚率が増加しているとか。。。

    もちろん負の面をを上げればきりはありませんが、それを踏まえて効果ある取組を国際協力業界全体で進めていければいいな、と日々感じています。マイクロファイナンスだけでなくCSR,BOP、PPPなど新たなツールがたくさんありますよね。これらをうまく活用できれば世の中が大きく変わると私は信じています。

    すみません、長くなりました。では。

  3. tomonarit より:

    Nonさん、始めまして。コメントありがとうございます!

    そうですね。貧困層が始めるビジネスが何でもかんでも成功するわけではないので、その辺をもっとしっかりフォローしないと借金だけ出来ちゃうという悲しい結末に・・・。

    こうなって来ると、MFIとして活動する現地NGO等の能力が重要で、景気の良いときの銀行のように、見込みのないビジネスにも融資してしまうことがないように、誰かがきちんとチェックする必要があると思います。そして、その役目は、援助機関なんじゃないかと感じてます。直接チェックは出来なくても、チェックする仕組みを作ったり、MFI向けの研修を実施するとか(もしくは、貸し手に向けての啓蒙とか)。

    ちなみにKivaは、融資が欲しい人(借り手)よりも、サイトを通じて融資したいという人(貸し手)が多くて、今はどうやって潜在的な借り手を開拓するかってことに、貸し手拡大よりも力を入れて行きたいと考えているようです。
    このブログに書いた説明会では、Kivaは現地MFIの管理能力や借り手の状況把握に努めているという話でしたが、実際、これは相当大変な仕事だと思います。だからこそ、この点で援助機関が協力する必要があるじゃないか、と。

    Nonさんの言うように、国際協力って色んなツールがあって、さらに流行すたりもあって、複雑ですよね。ツールが目的になるような流行に流されない視点を持ち続けたいと思う今日この頃です。
    では、これからも宜しくお願いしますね!
    Tomonari

  4. […] 自分も見てみたら、知っている事例もあれば知らない事例もあり、とても面白かった。Kiva説明会でもIT系の人材がICT4Dに進出して来ていると感じたけど、そうなんだろうな。 […]

  5. […] FacebookにDonate Now(今すぐ寄付)ボタン機能がついた。結構いろんなニュースで取り上げられていますが、Techcrunchの記事「Facebook、NGO向けに「今すぐ寄付」ボタンを導入。支払い情報収集効果も」が詳しい説明がついててよかったです。クラウドファンディングの雄であるKivaやUNICEF、OXFAMなどを含む19のNGOがまずはこの機能を使えるとのこと。今後、他のNGOにもサービス展開をしていくという。 […]

  6. […] 一昔前は、P2Pレンディングとかソーシャル・ファイナンスといった用語でKivaに代表される個人がマイクロファイナンスへ出資出来るWebサイトが呼ばれていたけど、その後、ケニアのM-PESAをはじめモバイルバンキングとか最近はもっと広い範囲でICTを金融に活用する仕組みが普及してきたってことで、FinTechなんて用語が出て来たんだろうと思います。 […]

  7. […] とは組まないので、本当の弱者は救えないという意味)、という批判も聞きました(かつてこんなブログポストも)。また、そもそも論として、開発プロジェクトはその便益を受けれる人 […]

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